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クー・D

「――それにしても、あの犬っころ。人を呼び出しておいて遅いな」


斜木が言った。


「犬っころ?」


安峰さんが聞き返す。


「ああ。例のデーモンの話だ」

「猫でしょ? どう見ても」

「――は?」

「――いやいや、どう見ても犬だって」

「猫だよね?」

「僕も猫だと思うけど――」


僕たちが犬か猫かで言い争っていた時、床に六芒星の紋様が生じた。

中からケット・Dが現れる。


「よう、待たせたな」


肉球のある手を挙げながら、ケット・Dが改札を通って出てくる。


「ほら、どう見ても猫じゃん」


斜木と桐崎が顔を見合わせる。


「――猫もいたのか」

「――いたんだ」


どうやら、デーモンはもう1匹いるらしい。

話がかみ合わないわけだ。

また床に六芒星の紋様が生じて、そのもう1匹のデーモンが現れた。


「犬だ――」と安峰さんが言った。


犬のデーモンだ。

ただ、ケット・Dと違って二足歩行じゃない。

大型で毛の色は暗緑色。ちょっと怖い感じだ。

スマホは持ってはいるけれど、ストラップで首に下げていた。


僕はステータスを見てみた。


  ――――――――――――――――

  名前          クー・D

  ――――――――――――――――

  LV             0

  属性            中立

  ――――――――――――――――

  分類          デーモン

  性別            不明

  年齢            不明

  ――――――――――――――――

  電池          100%

  状態            正常

  ――――――――――――――――


クー・Dというデーモンだった。

名前以外はケット・Dと同じステータスである。


クー・Dが渋谷八高の2人を詰問するように言った。


「貴様ら。なぜ、ノードE09にいる? 吾輩はノードG15で待てと言ったはずだ」

「すまん」

「緊張で喉が渇いちゃってさ。ここまで自販機がなかったから」

「言い訳はいい。ワームがエンドポイントA3付近に出現した。吾輩の管轄だ。至急、対応に向かってくれ」

「――了解。勝負だ、八」

「オーケイ。2人ともまたね!」


2人が通路を走っていく。

コインロッカーのある突き当たりの手前を右に曲がったところで、僕たちからは姿が見えなくなった。


「――というわけだ。無駄足だったな、ケット・D」

「ケッ。まあ、いいさ。今回の出動はついでのつもりだった。吾輩の目的は他にある」

「どういうことだ?」

「まだ気付かないのか、クー・D。吾輩が発掘したこの若い才能に」


ケット・Dが肉球のある手のひらを広げて僕に向けた。

クー・Dがストラップに前足の爪をかけて、スマホを僕に向けた。


「なるほど。未知のアプリか」


僕に〈スタット〉を使用したらしい。

ちなみにタッチ操作は舌である。

よだれでデロデロになりそうだけど、防水だから大丈夫なのか?


「ああ。これからロックを解除してもらおうと思っているんだ。わくわくするぜ」

「水を差すようで悪いが、LV2で入手したならどうせたいしたアプリではないと思うぞ」

「攻撃アプリしか使えないやつばっかり登用してるからそう思うんだよ。攻撃アプリじゃなければ、低LVのアプリでもいいのはたくさんあるんだ。こっちの流伽は〈スリープ〉を持ってるけど、めちゃくちゃ便利だぞ」

「虫けらごときに寝技を使うとは。嘆かわしい。正々堂々と戦うべきだ」

「クー・D。貴様、そんなことを言うくせに、ワーム駆除の指揮には絶対に立たないじゃないか。いいのかよ、あんな2人に任せっきりで」

「吾輩が? 虫けらごときの相手をするのか? 虫唾が走る! だいたい配下に丸投げしておけば、吾輩が丸くなっている間に丸く収まるのに、どうして指揮に立つ必要がある」

「正直にワームに齧られたくないと言えよ。貴様は見かけは強そうなくせして実際には弱っちいからな」

「見かけが弱そうで実際に弱っちい貴様よりはマシだ」


どうやら、ケット・Dとクー・Dはあまり仲が良くないらしい。

2024/12/14:表現の修正

2025/01/18:表現の修正

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