勇者(メサイア)
メリダのナオヤ紹介に続き、いよいよナオヤ登場です。
転章1 世界探訪記 メリカ国②
勇者でありながら世界に戦いを挑む八神直哉です。謁見当日 昼直前
「やめておくれよ、そんな仰々しい言い方は。今のあたしはただのメリダさ。」
謁見の間の入り口付近の柱近くからメリダが姿を表す。薄紫のベールのようなマントを付けたメリダは王都の宿屋の女将のような姿に見えた。
ラサメアやジャロンより遠くに離れた場所でアンガス王に深く礼を取る。
「それで、あたしに訊きたいことは何かね?」
「そのナオヤと言う男の知っていること全てを話して欲しい、百薬斉殿」とドライメッシ・シンデール子爵が言う。
三角の目と横に伸びた角のような髭と出っ歯が特徴のマンガのような顔をした男だ。阿諛追従が服を着ていると揶揄される30代に入ったばかりの男である。
キンキン声で声まで嫌らしい。
「あたしが知っているのはナオヤはいい子だって事さ。孫のメイが川に落ちそうになっているところを助けてくれてるしね。」
素っ気ない言い方にシンデールの声にトゲが入る。
「どんな男かと訊いている!」
「年齢は14で、身長は165㎝くらい、金髪に黒髪混じりの短髪、大人し目の痩せぎみ、左目の下に黒子があるよ。
グレイのズボンに、白いシャツと白いコートを着ているよ。ああそうだね、それと黒に近い茶色の革靴とグレイの靴下を履いてるよ。
靴の大きさは知らないね。
あと、あたしがくれてやった短刀を持っているのと仕込みのナイフを何本かコートに刺しているね。」
「性格ほ真面目で誠実だね。素直に自分の非を認める勇気があるよ。いろいろ工夫する努力家だし、笑顔の絶えない男の子さ。」
「始まりの村にいた時は魔法は初級しかできなかったよ。でも全属性持ちで、いろいろ工夫して魔法を使っていたね。無属性魔法が得意だったよ。時折、どうやったのか分からない魔法も使っていたね。
どこも傷つけないで魔物を倒すもんだから道具屋のメイトウが驚いていたね。
そうそう、鑑定が使えるんだよナオヤは。人の秘密を暴くのは良くないからとあまり使ってはいないようだけどね。」
「これ以上何か訊きたいことはあるかい?」
「ああ、そうだ。ナオヤは隠している積もりだったけどあの子は“始まりの木“から来た転生者さ。」
どよめきが上がる。
「アデルでナオヤくんは何か活躍したかね?」とブダイがメリダに訊く。
「あんたから訊かれるとは思わなかったよ。」とメリダが驚く。
「ナオヤは冷蔵箱を作って見せたよ。5年前の剣の失敗作を改良してね。
プリンのレシピも置いていって、隣村のイーナの酪農家イーデンのお陰で牛乳が手に入るようになったから今じゃアデルの特産品さね。聞けばそれもナオヤが作った容器のお陰だそうだよ。
それから、ホーンラビットの角ハンコもそうさ。本屋のメデックは本よりも儲かってると言ってたね。
確か少しは王都にも流れていた筈だよ。」
「ほかには無いかね。無ければ引っ込んでるよ。」そういってメリダは最初に居た位置まで戻っていった。
「メリダの言葉で勇者ナオヤの人となりはあい分かったかと思う。もう直ぐ約束の時間になろうか?」
その時、時の鐘が鳴った。
ブダイとジャロンの前に魔法陣が現れ、ナオヤが転送されて来た。
ナオヤはひとりでは無かった。
ん?打ち合わせと違うのう。
ナオヤは白に金縁のズボン、シャツ、靴、フード付きのマントをして立っていた。
右隣の女性はナオヤより15㎝程高く、黒髪のポニーテール、東国の和装をして腰に数本の細剣を刺していた。
左隣の女性はナオヤより少し低く、赤髪でつり目の冒険者風で、ライトプレートを身につけ、腰には短剣を下げていた。
ナオヤが一歩前に出て、簡易礼をすると2人の女性も同じ礼をした。
立て膝の儀礼をしないことで貴族たちがざわつく。
「初めまして、アンガス王。僕が勇者ナオヤです。」
左隣の女性が一歩前に出る。
「初めましてアンガス王さま、遥か東の海を越えた大陸のミライ国の元王女ミューレイと申します。」
右隣の女性が一歩前に出る。
「初めましてアンガス王さま、同じく遥か東の海を越えたところにあるカクシカクの国の国剣、覆葵です。」
「2人とも僕の仲間です。故あって今回連れて参りました。」
じろじろと興味津々の視線を浴びても何事もないように自然体でナオヤは立っていたが、連れの2人は少し興奮しているかのように顔を赤らめていた。
気を取り直して言葉を掛ける。
「なる程、お前が勇者ナオヤか。「無礼な奴め!何故臣下の礼を取らん!!」」
アンガス王の言葉に被せて誰かが叫んだ!
怒鳴り声に誰もがそちらを向く。
打ち合わせに無いのう。ここは宰相のゼンが物柔らかく窘める筈じゃったのだがな。
ツヴァイ・メフィス侯爵だった。
彼は赫怒して、地団駄を踏んだ。王城を揺るがす程の振動と音は明らかに魔力が込められていた。
隣のシンデールでさえ呆れ顔で見ている。
「失礼ですが、あなたはどちらさまでしょう?」ナオヤが丁寧に言うとざわつきが収まってゆく。
ナオヤがどう上手く捌くのか見つめているのだ。
「儂を知らんのか?ツヴァイ・メフィス侯爵さまだ!!」
「失礼しました、侯爵さま。アンガス王でさえ初見ですのであなた様を知りえません。
先ほどの無礼とのお言葉ですが、侯爵さまの方が無礼ではありませんか?
アンガス王の言葉を途中で遮られましたよ。」
ナオヤの冷静な指摘にぐぬぬぬぬとしか返答を返せないでツヴァイ・メフィス侯爵は固まる。
そこで儂が声を掛ける。
「まあ、ツヴァイの行動は大目に見よう。次は無いがな!
して、勇者殿はどうしてツヴァイの言うように臣下の礼を取らなんだのかのう。」
おお、やっと儂の寛容さを示せたぞ。
飛び出したくてうずうずしているのを隣のシンデールに肩を押さえられているツヴァイ・メフィス侯爵を無視して話を続ける。
「はい、アンガス王。
僕はこの国に住んでいません。だから臣民では無いのです。
確かに知人や交友を持つ者は居ますがその者達とは違うのです。
この地に住まい、税を払い、この地の累系に従っていないのです。
僕はこの地では異邦人です。既にお聞き及びと思いますが、転生者なのです。」
「後ろに控えています2人もこの国の住人では無いから最低限の礼節を持って挨拶をしています。
ご理解を願います。」
「では、臣民にならぬか?例え勇者といえども国の後ろ盾が無いと困ることも多かろう。儂の力を利用すれば良いのじゃ。」
「残念ながらその必要はありません。誰も僕に強制出来る力は有りませんから。僕は強制を撥ね退ける力を持っています。
利用して良いと言いながら利用されるのが落ちですね。
ですから、どこの国にも所属する積もりは無いのです。」
「それよりも少しお腹が空きましたね。皆さんも如何ですか?」
そう言って勇者ナオヤは目の前に大きなテーブルに乗った料理を出した。どうやらアイテムバックとは違う方法で収納魔法を使ったらしい。
大きなどよめきと共に美味しそうな香りが漂う。
白いパンに食べ物が挟んであるらしい。大きなピッチャーに果物のジュースと沢山の紙で出来ているらしいコップが用意されていた。
「「宜しければ私たちが」」と言って葵とミューレイが小さな盆に飲み物と白いパンを配る。
執事とメイドたちが現れ、手伝う。
最初に口を付けたのはラサメア辺境伯爵や学術都市ディービアの都市長だった。
「旨い!!」
その声にあちらこちらが食べ始め、儂もゼンと一緒に食べてみた。
確かに「旨い」。白いパンは柔らかくしっとりしており、挟まれた野菜やベーコンはスパイスが効いていて、普段のサンドイッチとは比べ物にならない。
ジュースは飲んだことのない優しくて甘い果実の味がした。
王である儂ですらこのような物は食べたことがなかった。
「このように僕はアイテムバックを使わなくても無限に食べ物や物を収納出来るのです。
他に倒した魔物さえ収納出来ます。」
と言って身の前に魔物を出現させた。
それは見たことの無い巨大な熊のようだった。
「雷熊!!」と誰かが呟く。
宰相のゼンが説明する。
「雷熊ですな。この大きさなら、一流の冒険者5人掛かりで倒せる筈です。」
ゼンが近づき、あちらこちら調べて回る。
「どこにも傷が無い。一体どうやって倒したと言うのだね?勇者ナオヤ殿。」
ナオヤが雷熊をしまうと事も無げに言う。
「僕のオリジナル魔法ですよ。」
大きな笑い声が聞こえた。どうやら、ブダイの息子らしい。何が可笑しかったのか?寧ろ驚異と言うべきだろう。
傷を付けずに殺せることをこの少年はいとも容易く言ってのけたのだ。
誰もがサンドイッチを片手に息を飲んでいた。
実力をひけらかしてこなかったナオヤですが、更なる力に反発が起こります。
勿論、騒動の元はこの人・・・・
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読んで下さいましてありがとうございます。
大まかなストーリーだけでなく顛末まで詳しく書くのは難しいですね。
頑張って面白く書きますので皆様宜しく御願いします。
ブクマ、評価ありがとうございます。励みになります。
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