勇者(メサイア)の決意
ナオヤの想い、そして指輪
勿論異論!
転章1 世界探訪記 メリカ国③
勇者でありながら世界に戦いを挑む八神直哉です。謁見当日 昼後
勇者ナオヤが人外である事は明白だった。
誰もナオヤと敵対したいとは思わないだろう。
「僕が仕えるとしたら女神ガライヤ様だけです。
女神様に勇者認定されたのですから当然ですよね。」
失望の溜め息と安心のどよめきが上がる。
「それに重大な使命があります。」
「それは何じゃね?」儂の質問にナオヤが苦悩の色を見せた。
「5年ほど前に僕の世界からこの世界に転生した者がいます。
名前を“天空寺 剣“と言います。
彼を転生させたのは神の座を追われ、女神ガライヤさまの座を狙う神です。」
「初めは彼の『やらかしたこと』の後始末だけでした。でも、次第に彼の起こしたことは取り返しが付かない程になってきています。
今ではあちらこちらで問題を起こしているのです。」
再び、貴族たちの間にどよめきと同意のざわめきが起きる。
儂が調べた限りでも数件あることが分かっておる。皆、恥と思い報告して来ないがな。
「もう、これ以上同郷の者が迷惑を掛けないようにするのが僕の使命だと思っているのです。」悲痛とも言える表情を見せるナオヤに同情を禁じ得ない者達がいるようだ。
面を上げて、貴族たちを見回し、ナオヤは重ねて言う「貴族の皆さま方の中に彼の被害に合われた方がいらっしゃれば、このナオヤがなんとか埋め合わせを致します。
ラサメア辺境伯爵さまでも、都市長ディビアスさまでも宜しいのでご相談ください。僕に連絡が必ず着きます。」
なかなかやりおるわい、2人を持ち上げるだけでなく特別な関係な事を匂わしおったわい。
重ねて勇者との繋がりを持てる機会を与えるなんて、相当切れるぞい。
少年と思っておったが、なかなかに老獪じゃのう。
「なるほど、勇者ナオヤ殿の望みはあい分かった。このアンガス、力になろう。
無論、臣下にと言うことではなくてな。」
この台詞は打ち合わせ通りじゃろ、うん?
大きく頷いてナオヤが答える。
「ありがとうございます、アンガス王さま。
ならばこの勇者ナオヤもその信頼に応えてこれをお渡し致します。」
ナオヤが懐から小さな箱を取り出す。そして、宰相ゼンを見る。
ゼンが分かったと言うようにナオヤに近づき、箱を受け取った。
「その中には僕の信頼の証しとしての指輪が入っております。
指輪から僕に連絡を取る事が出来、かつ填めている者への物理的魔法的毒物的な攻撃から守る力を秘めています。
所謂、神器です。」
今までにない大きなどよめきが起こる。
それは王を友と呼ぶ不遜さか、与えられる神器の偉大さに対する憧れなのか分からない。
あの指輪が勇者ナオヤとの繋がりの証しだ。
羨望と欲望に満ちた貴族たちの目にさらされてアンガス王は心の中でしてやったりと思った。
これこそが勇者ナオヤが導いた勇者メサイアとの最善の関係なのだ。
使われず、使わずの対等な関係。
しかし、人は過分な欲を抱く。そして、それを口にする愚か者がいた。
「アンガス王よ、儂は納得が行かん。
勇者を名乗るその少年に相応の力があるとは思えん。
それを証明してからで無くてはとても信用すべきでは無いと具申致しますぞ。」
異論を唱えたのはツヴァイ・メフィス侯爵だ。儂に睨まれても懲りもせず口を出す。
あたかも正論であるかのようなオブラートに自分の欲望を隠して得意そうに鼻を鳴らす。
またもや宰相ゼンの忠告めいた台詞を奪いおったわ。
宰相ゼンが苦笑いを隠しながらツヴァイ・メフィス侯爵に問いかける。
「ならば、どうすれば納得されるのか、ツヴァイ殿。」
分かりきった答えを出せるように宰相ゼンが言葉巧みに誘導する。
だから、その台詞は儂のじゃろ~。
なら。こう言ってやる。
「あい分かった!ツヴァイが納得出来る方法で勇者ナオヤ殿の実力を計るとしよう。」
「それでも、良いな勇者ナオヤ殿」
これもナオヤの想定内だから受けてくれるじゃろ。
「分かりました。アンガス王さまの仰るとおりに致しましょう。
それで貴族の皆様方の納得が得られるならばこのナオヤ実力をお見せしましょう。」
「して、どうすれば良いのじゃ?
近衛騎士団長との一騎打ちでもさせるかの?」
儂の分かりやすい引っ掛けにツヴァイが乗っかって返事をする。
「いえ、儂が連れている騎士団に相手をさせましょう。その実力はメフィス領内随一ですぞ。
勇者ナオヤ殿も嫌とは言えますまい。」
反対する者の押す実力者を倒して反逆の目を潰す。そこまで見通して計画を建てていたなどツヴァイも気づくまいて。
勇者ナオヤ殿が
頷く。
だが、ツヴァイ・メフィス侯爵に推されて出てきた者を見て驚愕したのは儂だけでは無かった。
ツヴァイ・メフィス侯爵の後ろから指示されて前に姿を表したのはかつてメリダのパーティー“疾駆者“の仲間で、今なお現役と言われている不死の騎士“バラダック“だった。
白銀に黒の飾り縁の全身鎧に身を包み、頭部鎧から白い髪を靡かせ、両腰に下げている槍は長さこそ無いが異様な形状をしていて度を越えた魔が魔がしさを放っている。
身長は2Mを越えているであろうその姿は異様な迫力を持っていた。
「バラダック!!お主生きておったのか?!」いつの間にか前に出てきて、驚愕の声をあげたのはメリダだった。
「てっきり、ズラーシアの森の戦いで戦死したと思っていたぞ!」
振り向きもせず無言で手でメリダを、制しバラダックはアンガス王に跪いて礼を取る。
「ツヴァイ・メフィス侯爵さまの命により我々が勇者ナオヤ殿の相手を仕る。」
その声は強者と戦える喜びが滲んで、嫌と言わせない強さがあった。
バラダックが進み出て来た時から臨戦態勢に入っていた葵とミューレイの肩に手をやり
「お受けいたします」
とナオヤは超然と言ってのけた。
伝説のバラダックの強さとは如何なる物なのでしょうか?
ナオヤが負ける?
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ブクマ・評価ありがとうございます。
皆さん方が読んでくださっているのをひしひし感じます。
期待に応えるべく無い知恵を絞って書き上げております。
これからも宜しくお付き合い頂けたら幸いです。
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