封印を護る鬼(もの)
封印のダンジョンに潜入です。
一体誰が裏切ったのか?
転章1 世界探訪記 カクシカクの国④
勇者でありながら世界に戦いを挑む八神直哉です。謁見まで後8日と少し。
気絶している葵の頬を叩き、起こす。
「ほら、葵。しっかりしろ。寝ている場合じゃないぞ!」
うう~んと目を覚ました葵は僕に抱き起こされているのに気付いて真っ赤になった。
ささっと座りながら離れた葵が周りを見渡すと、そこは飛空挺クレイモアの司令室だった。
「父さまは?」
「あれは魔物だ。魔物がお前の父覆邑に擬態していた。」
「でも、父さまそっくりだった・・・」
「あの魔物が覆邑を同化したらしい。あいつがそう言っていた。」
「父さまが燦覚さまを裏切ったのかしら?」
「葵!魔物の言うことなんか信じるな!お前の父はそんな人物なのか?
葵が信じてやらなくてどうする?」
娘に戻ってしまっている葵には少し厳しい言い方だったがしゃんとして貰わないと困るのだ。
「そのことは後だ。葵、封印の洞窟の場所は分かるか?封印が解かれる前に行かないと取り返しが付かなくなるかも知れない。」
まだ、ぐずぐずしている葵に先を急がせる。
「分かるでござる。」
決意を目に込めたいつもの葵に戻って来た。
で、僕が取った方法は僕と葵をクレイモアに転送させて、エド屋敷全体をクレイモアの熱線砲で焼却処分する方法だった。
だって、時間が無いんだから、つきあってられない。
突然、槍兵士達の包囲網が無くなった。全員が無言で退いて行く。
城居鉄乃進とアム達が見上げると動かなくなった亀甲船の上に鎧武者が3騎いた。
中央の武者は黒地に暗い赤と黄色のラインが無秩序に引かれた全身鎧に覆われている。城居と同じくらいの身長があった。
横には灰色に同じ様なラインが引かれた鎧を来た女武者が2騎立っていた。やや低くて、180センチほどの双子の美人だった。
「やはり、雑兵では話にならんな。
大英雄、城居鉄乃進殿とお見受けする。
我が名は斑鳩昴。お相手致す。」
「「斑鳩さまの拳」」
「瑠璃!」
「玻璃~」
「「お相手します!!」」
大見得を切られたら名乗らない訳にはいかない。
「かつては城居鉄乃進、今はドワド・ユゲト参る。」
「アムワン」「アムツー」「アムスリー」「アムフォー」律儀にアム達も名乗る。アム達の名乗りに驚き眉を瑠璃・玻璃は顰めた。
瑠璃・玻璃にはアム達4体が相手し、昴にはドワド・ ユゲトが相手する。
背中からすらりと長刀を抜き出し構える昴に流石のドワドと言えど無手では戦えない。腰から両刃両手剣を抜く。
縮地で昴の前に出るとその勢いのままに大上段から切りかかる。
半歩下がった昴がドワドの喉を狙って突く。
切り下ろしを反転させたドワドの剣が昴の長刀を弾く。弾きながらも更に押し込み、剣の鐔で昴の持ち手を叩く。
その勢いを避けて昴が横にくるくると逃げる。一回転する勢いのまま長刀を左から横に振り切る。
ドワドは前方の空中へ天走で逃げ、前転して向き直った。
ドワドの真似をして瑠璃・玻璃に接近、鎧の無い頭を狙ってアム達が2体づつ、殴る。
瑠璃・玻璃は首を傾けて避け、空中に浮いたアム達に変わった形の短刀で切りつけた。
キンと高めの金属音がしてアム達の胸の位置に筋が出来た。直ぐに消える。
瑠璃玻璃の両手には円環の刃先のある武器が握られていた。
「黒鉄が効かないなんて、硬い人形ね。」玻璃が言うと「潰せば良いのよ」と瑠璃が大槌を取り出す。
相対したアム達に玻璃が円環を何枚も投げる。円環はどうやっているのかアム達を取り囲むように周囲を回りだした。次第に早くなる。
小声で呪文を唱えながら手印を結ぶ。
逃げ場を狭められアム達が固まった所へ瑠璃の大槌が振り下ろされた。大槌が空中で留められる。アム達全員で受け止められているのだ。アム達の居る地面が窪む。
そのまま大槌は天高く放り投げられた。
アム達が指を指して熱線を放ち、回転する円環を撃ち落とす。
瑠璃・玻璃の武器が無くなった。アム達4本の指がそのまま瑠璃・玻璃の眉間に向けられる。
昴の突きが休む間もなくドワドを襲う。ドワドが捌く。両手剣の先端を突き出される長刀に合わせて弾き、長刀の軌道を変えさせているのだ。
ドワドの服や髪の毛が切れて飛ぶのはお構い無しだ。
じれた昴の手数が増える。
「千塵」
捌き切れなくなったドワドが「魔闘気!」と叫ぶと昴がガクンと体勢を崩した。
縮地で胴を払いながら切り崩す。
ドワドの剣は鎧を切り裂けず大きく凹ませて昴を吹き飛ばした。
そのまま昴は後ろへ転がり動かなくなった。
アム達に熱線で狙われて居ながらも「昴さま!!」と叫んで瑠璃・玻璃は駆け寄る。
そのときエド屋敷が大音響と共に吹き飛んだ。屋敷が炎上していた。
「やれやれ、ナオヤも派手にやる。」
肩を竦めるドワドの真似をしてアム達も肩をすくめた。
再び僕と葵はクレイモアにフジの裾の封印のダンジョンの入り口に転送して貰っていた。
このダンジョンは半時計まわりに大きく周回して中央の階下に降りる階段に至り、中央からは外に向かって回り階下に降りる階段に至りと螺旋に似た形のダンジョンだと葵は説明した。
その、入り口には誰も居らず静かだった。
葵の案内で中に入る。
3メートル四方くらいの大きさの入口は意外と湿っていなかった。
葵が早足で案内するが魔物は一匹も出てこなかった。
どんどん進み、地下5階に出た。地下5階は角形をしており正面に祭壇があった。いつもだとそこに主が居て、戦いになるのだと言う。
祭壇には更に下へ降りる階段があった。
その階段を降り始めたところでひそひそ声が聞こえた。
僕と葵にミラージュを掛け、姿を隠して声のする方へ近づく。
注連縄で繋がれた3本の大岩の中央に白装束の男が座らせられていた。薬で自由を奪っているのかぴくりともしない。ブツブツと何かを唱えている。
その後ろに赤い全身鎧を着た男と黒フードの男がいた。黒フードの男が赤い全身鎧に頷く。
赤い全身鎧の男が片手剣を腰から引き出す。
そして、白装束の男の後ろに立ち構えた。
何とか間に合ったようだ。ミラージュを掛けたまま僕が赤い全身鎧に体当たりを敢行した。
葵は黒フードの男に刀で切りかかった。
見えないながらも僕たちに気づいた2人が白装束の男から飛び離れた。
白装束の男を守るように立ち、ミラージュを解除する。
逃げるときに取れた黒フードの男の顔を見て葵が叫んだ。
「あなただったのか?暁炎殿」
暁炎はカクシカクの国の軍師である。大陸からの侵攻を食い止める軍事行動を指揮する最高責任者なのだ。
これまでも何度となく侵攻軍を撃退して来た強者の筈なのに、何が暁炎を裏切らせたのか?
目をむく黒フードの男が言う。
「覆葵、戻ったのか?
さては蓮華は生きていたか。 ふっふっふ
葵、父親とは再会出来たか?」
「くっ! あれは父さまでは無い!!」
下唇を噛み締め葵が答える。
「魔獣ゲンエンでは物足りなかったか、くっくっく。」
「暁炎殿こそエルランディアと組み、この国を滅ぼす積もりか?」
「い~や?こちらのシェネッツア様と世界を手に入れるのだ。」狂気の笑いをへばりつかせて暁炎が嘯く。
「封印が解ければ何が起きるかわからないんだぞ!」
葵の叫びはにやにや笑う暁炎には届かない。
「国主の血を浴びた八代の玉で鬼は操れる。鬼の力があれば敵などいない!」
鬼の力で世界征服をするつもりらしい。
どうやら封印が解けると鬼が出てくるらしい。
厄介過ぎるから封印は解かせない。
「邪魔者は排除しよう」
1歩前にでたシェネッツアが両手に片手剣を持つ。
僕は雷熊仗を持ち、構えた。
そのとき白装束の燦覚のブツブツが止まった。
封印のダンジョン全体が揺れる。揺れている。
「ははは、封印は解かれた!。後は燦覚を斬り殺して八代の玉を持てば良い。
お前たち、このままで良いのか。操演されていない鬼に立ち向かえる者などいないぞ!」
からかうように暁炎が笑う。
燦覚は力を使い果たしたのか前のめりに突っ伏していた。
油断なく構えながら葵に燦覚を連れて行くように言う。
「お前たちの言うことなど信じられるか!」
揺れる地面の中封印のダンジョンから脱出する。
暁炎とシェネッツアは高笑いを続けている。何か脱出の手管があるのかも知れない。
揺れる封印のダンジョンを苦労して外に出て、離れる。
戻りの道すがら封印のダンジョンを振り返ると黒い霧のような物が立ち上っていた。あれが鬼?なのだろうか。
黒い霧は次第に集まり10メートルくらいの巨人の形を作って行く。怒髪のように螺旋くれた角が生え、身体全体は青銅色のような光沢を放っていた。
額には8つの魔石がはめ込まれたリングが掛けられていた。
燦覚を下ろし、様子を見る。ぐったりしてはいるが命に別状は無いらしい。
僕は燦覚の手にしていた八代の玉を取ってみた。
玉は丸くされていたがそれぞれ属性の違う魔石だった。国主の血を掛けることで属性が少なくても鬼を操れるようにしているのかも知れない。
ぐおーっと鬼が哭く。
悲壮な声で鬼哭する。
鬼の力は分からないがエドに降りれば全てが灰燼に帰すだろう。
八代の玉を手に僕は思案した。
鬼との戦いはどうなるのてしょう?
激戦となるのでしょうか?
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読んでくださいましてありがとうございます。
いよいよカクシカクの国編はクライマックスです。
楽しんで頂けると幸いです。
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