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二番煎じの転生者  作者: きゅうとす
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思わぬ再会

珍しい人と再会します

承章4 学術都市ディービアの陰謀②上


僕は転生者にして、飛空挺クレイモアを所持するババロンの空中庭園の主人、もうすぐ15歳になる八神直哉ナオヤ)です。


ブラックバーンの“なな“を連れて、荒野のような街道を進むこと2日、風の町フウトに昼前に到着した。


フウトの町中に入るといつも通りライナーが案内に立った。“なな“は町に入らなかった。

ライナーによるとフウトの町はこうだ。

『あらゆる場所で風車が回る変わった町。風車好きで有名な先代の冒険者が亡くなったあと、2人組の冒険者ショウとフィリップが異形魔物(ドーパン)の起こす事件を専門に扱い、活躍している町だそうだ。

町の近くには大規模な墓地があり、貴族ソノサキが町と墓地を管理している。

海も近いため漁業も盛んで学術都市ディービアの影響を色濃く受けている。漁船な高度な魔導機で操業されていて、近郊随一の水揚げの漁獲高がある。海物の変わった食べ物も多く、好きな者には堪らない隠れスポットとなっている。』


パンフレットのようにまとめられた報告に僕は彼の痕跡はないかと考えていた。


大通りの真ん中では無く、店と店の路地前近くで通行人の邪魔にならないようライナーと立ち話をしていたのだが、そんな僕たちに声を掛けてきた者がいた。


「ナオヤさ~ん!こっちこっちぃ~!!」


聞き覚えのある声にそちらを向くと、知った顔の人物がいた。


なんと、ブール・ラサメアの妻のノストリーア、その娘リリアと執事のセトラスだった。

3人が近寄ってくる。ライナーが遠慮して去ろうとするのを止めた。今後の為に紹介して置く事にしたのだ。


リリアが真っ先にライナーを見て「ナオヤさん、この人誰ですか?」と言った。

軽く笑いながら、ライナーを雇って仕事をして貰っている人物と紹介する。

ライナーに3人をラサメア辺境伯爵の妻と娘と執事だと教えた。

何となく、ライナーは知っていたようだ。


「それで、みんなはこのフウトに何をしに来たの?」

僕の右腕に腕を絡めてきたリリアが僕を見上げながら「観光だよ~、美味しいもの食べに来たの!」


その言葉にノストリーアが

「あら~、フウトに行けばナオヤさんに会えるかもぅって張り切って来たのは誰かしらねぇ~」とリリアに言う。

リリアは口を尖らせて「もう!! おかあさんったら、ばらさないでよ!!」と言った。


「じゃあ、みんなで少し早いけどお昼でも食べようか?」

「ライナー、どこか静かにみんなで食事の出来る所はないかな?」


すると、控えていた執事のセトラスが珍しく口を開いた。

「ナオヤさま、実は既に予約してあるお店がございます。どんき・ほう亭と言う“ハンバーグ“を食べさせてくれる店です。」

ライナーに知ってるかと問うとライナーは

「2年ほど前に出来て、最近になってやっと流行りだした“彼“の店です。」と教えてくれた。


「じゃあ、そこにみんなで行こう。」と僕が言うとライナーは用事を済ませるので遠慮して置きますとその場を去って行った。気を利かせてくれたらしい。


どんき・ほう亭はなかなか大きな店だった。

出された“ハンバーグ“は海鮮で使われたソースもイカ墨を使ったコクのあるもので、僕でさえ満足出来た。

当然ノストリーアもリリアも大絶賛だった。作った料理長に一言礼を言いたいと願うのは当然と言えた。


「では」と執事のセトラスが調理場に向かう。料理長に話をつけに行ったのだろう。なにしろラサメア辺境伯爵の家族からのお願いだから会わない訳が無い。


暫くして、料理長がやってきた。

「はじめまして、どんき・ほう亭の料理長ソラーノです。お褒め頂きありがとうございます。」

丁寧な挨拶をして来た男はかなりお腹が出ていた。

ゆさりと言う擬音で動いているかのようなソラーノはその細い目で満面の笑顔を作った。

「ありがとう、とても美味しかったわ」とノストリーア。

「うん、おかあさんの言うとおりおいしかった。」とリリア。


2人が褒めたところで僕は

「このソースが絶品ですね。ソラーノ料理長が開発されたのですか?」とソラーノが開発したのでは無いかのような含みのある質問をした。

するとソラーノは意外な事を言い出した。

「ええ、ハンバーグのアイデアは他の者が出したのですが全く上手く行かず、1から全て私が練り直したのですよ。」

僕が少し欠点を言う。

「繋ぎには何をお使いですか?魚肉が少し崩れ易いですね。」

ソラーノはよく分かっていなくて言う。

「掴む端から崩れるのでいろいろ試してはいるのですよ。小麦粉を入れすぎると固くなり過ぎますしですよ。」

「卵、養鶏の卵は試しましたか?」

ソラーノは驚いたように僕を見た。

「卵?それは試してみてませんよ。」

「では、これをお使い下さい。」とアイテムバックから取り出したように見せかけてインベントリーからイーナ村のイーベンが育てた卵を2個取り出して見せた。

「おお、ありがとうございます。直ぐに試してみますよ。」

卵を手にソラーノは喜び勇んで調理場に戻って行った。


その様子を見ていたノストリーアが「きっともっと美味しいハンバーグが出てくるわね。」と楽しそうに笑った。

「ナオヤさんのアイデアだもん、絶対上手くいくわ。」とリリアが太鼓判を押す。


すると暫くして調理場から「おお!」と言うどよめきがしてソラーノがお皿に載せたハンバーグを手に走ってきた。

僕を見て「?、ええと、あなたに頂いた卵を使ってみたところ崩れません!!」

名前が分からなかった為だろう、少し言い淀んだが興奮して結果を教えてくれた。


そこで卵はイーナ村のイーベンと言う元冒険者が経営している牧場の鶏の卵だと教えてあげた。

「ありがとうございます。これでもっと美味しいハンバーグが作れますよ。」

と大喜びであった。

新しいハンバーグを試食していたノストリーアもリリアも美味しい、美味しいと喜んでいる。


側で仕えている執事のセトラスが羨ましそうに見ていたので僕は紙とペンを取り出しレシピを書いて渡す。

驚いたセトラスだったが、にっこりと黙ってレシピを懐にしまった。


卵を扱うには冷蔵箱が必要だがイーベンと交渉すれば直ぐに分かるだろう。

また、二番煎じな事をしてしまった。


「ところで、そのハンバーグのアイデアを教えてくれた男ですが僕の知り合いかも知れません。彼とは何時知り合ったのです?」

ソラーノは上機嫌で教えてくれた。

「2年ほど前にディービアの食通の下級貴族バッカ様がお連れになって知り合ったのですよ。2度ほど来られただけでずっと音信不通ですよ。」

なるほど、彼は相変わらず投げっぱしならしい。

「ディービアですか。彼はそこで何を?」

詮索は良くないがと断りながらも教えてくれる。

「何でも魔物に言うことを聞かせる研究を共同でしているとか聞きましたですよ。」


お腹も膨れて、彼の情報も得られてなかなか良い昼食になった。名残惜しそうなリリアを置いて僕はライナーが確保しておいてくれた宿屋に向かった。貴族の泊まるような高級宿には泊まる積もりもなかった。


宿の部屋からセラに連絡を取る。忙しいのか反応が無かった。

取り敢えず風呂に入る積もりで外に出る。

ふと、視界の隅に何かの動きを感じて、身体強化Ⅱで屋根の上に飛び乗った。

見回して屋根の上を走り抜けていく影を見つけた。


気配を殺して後をつける。

宿屋の部屋に置かれた紙のライナーの追加情報によると『風の町フウト』ではこの頃おかしな噂が流れているらしい。

人を襲う特殊魔物(ドーパント)が町の中に現れると言う噂。

2人組の冒険者が風変わりな格好でうろついているという噂。


先ほどの影は2人組の冒険者の片割れか、人を襲う魔物か


影が立ち止まる。きょろきょろして何かを探しているようだ。

空き地を見つけるとそこに飛んでいく。


その様子を確認した僕は地上に降りて、ゆっくり歩き出した。

レーダーで確認したところ、空き地には2人と魔物が1匹いた。そこへ先ほどの人物が現れる。

どうやら魔物に襲われた人を2人組の冒険者の片割れが発見してもう1人に連絡したらしい。連絡手段は分からないが。


建物の陰から様子を窺いながら聴覚強化で声を拾う。

後からきた男がショウらしい。


「はあはあ、そいつが異形魔物(ドーパン)か?フィリップ。」

肩で息をするなら屋根の上を飛んでこなけりゃ良いのに。

「ああ、ショウ。どうやら狼の異形魔物(ドーパン)みたいだ。」油断無く弓を引いたフィリップが目の前の人型の魔物を睨む。足下には血を流しているらしい男の子がいる。

姿が獣の魔物は四つ脚で歩く。攻撃するときや恐慌に陥ったときだけ立ち上がる事があるだけだ。一方、人の姿に獣の一部を宿す者は亜人と呼ばれ人と会話する能力を持ち社会生活をするのだ。獣の姿をしているにも係わらず2本足で立ち人の言葉を理解する魔物とも亜人とも付かぬ異形だから異形魔物(ドーパン)と呼んでいるのだろう。


ショウとフィリップ2人が揃って何やら香ばしいポーズを決め、セリフを吐く。

『「さあ、お前の罪を数えろ!」』


今更だろう!

狼の異形魔物(ドーパン)は余裕なのか追いつめられているのか、身動きもしない。先ほどの決めセリフにぴくりとも突っ込まない。


相手がどうであれ2人は攻撃を開始した。

フィリップが弓で牽制する。と言うかモロに刺さってるよあれ!

隙を突いてショウが片手剣で左肩から袈裟懸けに切り下ろす!避けてないよあれ!

2人の攻撃をまともに受けてなお倒れない。

怯まない。

逃げない。


あれは戦う気があるのか?


と、突然狼の異形魔物(ドーパン)が変わったように激しく攻撃し始めた。

ショウの切り返しを身体を反らせて避け、反動で蹴り上げた足でフィリップの狙って射掛けた矢を弾く。

目の覚めるような体技を駆使して更に、ショウに迫る。

1回転し終わる前に、左手を着き、強引に身体を捻ると両足が遠心力で武器に変わる。

旋風脚である。

脚が掠め、ショウは転げるように避けた。

フィリップは狙いを変えて頭の近くに矢を射る。

射る。

射る。

1拍の内に3連射する驚異の連射術だ。

飛んでくる矢に気付いたのか、両手を使って狼の異形魔物(ドーパン)が飛び上がり、脚から着地する。

危うくショウは踏みつぶされそうになり、さらに転倒を繰り返して避けた。

さっきまで異形魔物(ドーパン)の居た場所に矢が重なるように突き刺さる。


いきなり、フィリップに背を向けていた狼ドーパンがフィリップ目掛けて疾走して来た。あっという間にフィリップに迫る。左手を引き、殴りかかる体制になる。

フィリップは見かけの線の細さとは裏腹に弓の背で狼ドーパンの右側頭部を叩こうとする。

狼ドーパンは殴りかかると見せ掛けて前転気味に両足でフィリップにキックを浴びせる。脇腹を蹴られたフィリップが独楽のように回転して転がった。


両足で着地した狼ドーパンが今度は反転して飛び上がり、逃げようとするフィリップの前に立った。


激しく肩で息をするフィリップは今にも倒れそうだ。


不意に狼ドーパンの背後からショウが足狙いで横に一閃する。分かっていたのか狼ドーパンは飛び上がって避ける。


肩で息をしていたフィリップが「突風」風魔法で狼ドーパンの足元を掬う。ショウの攻撃の僅かの間に詠唱を済ませていたらしい。

空中でバランスを崩した狼ドーパンは俯せになって、ショウの切り返しの横殴りの剣を避ける。


剣を避けられたショウは後ずさりして、少し離れて剣を構え直す。


狼ドーパンの反対側からフィリップも弓を折り畳んで姿を変えた杖で詠唱を始めて魔法を放つ準備をする。


四つ脚で低く唸り、威嚇する狼ドーパン。


射掛けられ切られた傷など無かったかのような狼ドーパンの動きだった。驚きの再生力だ。


ドーパンとの戦いは不思議な方向へ

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