ババロンの空中庭園と飛空挺クレイモア
説明回です。
承章4 学術都市ディービアの陰謀①
僕は転生者にして、飛空挺クレイモアを所持するババロンの空中庭園の主人、もうすぐ15歳になる八神直哉です。
なんだか大層な物持ちだよな。
飛空挺クレイモアを湖底からババロンの空中庭園に接収したのは良いけれど、転移陣の場所が限られていて簡単には行けないのがネックだよな。
中央施設のソリオに訊けば簡単に転移出来る方法を知っているかも知れないな。
それと飛空挺クレイモアの利用方法だなぁ。
せっかくあるのだから使いたい。
取りあえず、クレイモアが無事に移動したのを確認出来たから僕も後を追うとしよう。
町に落ち着きが戻ってきた頃、宿屋に居た僕の下にライナーからの連絡が来た。
どうやら彼はバフォメに向かわず、少し南下した場所に向かったようだった。
連絡を伝えた少年にチップを与えて、折り返しライナーに伝言した。
学術都市ディービアの手前、風の町フウトの情報を集めておくように。
つまり向かうのは風の町フウトである。
ま、その前にババロンの空中庭園の中央施設に行くけどね。
宿屋の女将さんに挨拶して僕はメネアの町を出た。
ゆっくり歩きながらレーダーを使う。反応なし。
じゃあ、急ぎますか。
僕は瞬足を使ってババロンの落石遺跡を目指し、駆けた。
駆けた勢いそのままに落石遺跡を駆け上る。
そして、岩場に身を隠す。無かったはずの気配が後を追っていたからだった。
後から走ってきた影が落石遺跡の入り口当たりで立ち止まり、キョロキョロする。
僕は風魔法を使い相手を転ばせた。素早く近づき、錆びたように見える短剣を首筋に当てる。
「何者ですか?」
立ち上がろうとする姿勢のままピタリと止まる。
ライトの魔法で明るくすると相手は女性だと判った。
「ゆっくりとこちらを向いて下さい。」
言われた通り相手はこちらを向く。
年の頃30手前のおばさんだった。体型はまるでビア樽のようだ。俯いているので顔は良く見えない。
メネアの町で良く見掛けた女性だった。これだけの体型なのに気配を消せる何て!
「誰に頼まれて僕を見張っていたのか知りませんがここまでにして下さい。」
相手が何も答えないので僕はガイアホールの魔法で足元に穴を掘り、落とす。
「!、きゃあ」
小さな悲鳴を上げて全身が5メートル位深い穴の中に落ちる。
これで暫く足止め出来るだろう。体の太さと穴の大きさが殆ど同じだから身動きも侭ならないだろうからね。仲間の気配も無いし。
「付いてこないで下さいね」
登るのは容易でないけど出来なく無い筈。
僕は遺跡の中に入り、扉をババロンの至宝で開けて素早く扉の内側に飛び込んだ。
まだ、おばさんは穴の中でもがいているようだ。
転移陣でババロンの空中庭園に転移する。
しばらく前から監視の目を感じるようになっていた。目立たないように気をつけて来たけど、やっぱり目立つのかな。
彼の認識阻害魔法が羨ましい。一貫して誰も彼の本名を言えない。この分だと目の前にいても彼と分からないかも知れないな。
螺旋階段を降りて中央のコントロール装置の椅子に座る。
『いらっしゃいませ、八神様』
映像とともにソリオが挨拶して来る。
「馴れないなぁそれ。ナオヤで良いよ。」
『それでは、ナオヤ様。ご用件は何でしょうか?』
壁の映像のソリオが丁寧に頭を下げた。
ソリオにクレイモアへの行き方を訊くと奥のドアからメンテナンス用自動機が何かを運んで来た。手渡されたのは紋様が書き込まれた指輪だった。
『この指輪は追跡装置です。ナオヤ様がどこにいても上空からクレイモアが見つけ出せます。そして、ナオヤ様が触れていてナオヤ様を中心に半径5メートル以内にいる者を同時にクレイモアへ強制転移させることが出来ます。
ナオヤ様がどんなに強固な牢にいても助け出す事が可能です。
また、その指輪の内側リングを回す事でクレイモアまたは、私ソリオと会話可能です。
必要な時にお呼び下さいませ。』
なるほどと、感心して指輪を左手の中指に嵌める。
ついでにセラにも渡したいのでもう一つ受け取っておく。
当然だがソリオはセラの事は承知している。
これで僕もセラも転移陣に頼らずに、何時でもクレイモアに行ける。
まあ、出来るだけ早くセラに渡してあげよう。
礼を言って僕は早速クレイモアに話しかけた。
「聞こえているかな、クレイモア。」
『“もちろんです、ナオヤ様。“』
何となく音が籠もって聞こえる。
転移しようとして思い出した。
「あ、そうそう。ソリオに訊こうと思っていた事があったんだ。」
映像のソリオが首を傾げる。
「あのさ、ソリオの分体ってかつてはホムンクルスだっんだよね。
それってもう造れないのかな?」
『さようでございます。私ソリオを始め、各施設の4人と呼べるようなホムンクルスをそれぞれが独自の個性を持って分体としていました。』
「今みたいに実際に何かする時あると便利なんだけどな?」
地上に降りている僕に接触したり、僕の代わりをして貰えるのではないかと考えているとソリオが答えた。
『中央施設ではその設備がございません。研究所のグレアを見つけて下さい。』
「分かった。場所の特定は出来ているの?」と僕が訊くと壁に地図、と言うか航空写真が現れた。
尺度が小さくなって全体表示となり、光点が5つ光る。
『かつてババロンの空中庭園があった場所がソルティ諸島のこの海域です。
謎の魔素消失現象が起きてこのように分離されたと推測されます。』
白い光点を中心に光が離れて行く。
『研究所のグレアは恐らくこの辺りに浮遊している筈です』
青色の光点はこの惑星の北極に近い大きな島の中央にあった。
『グリーブランド、別名極極の島と言われている魔物が巨大になっている島です。』
「研究所のグレアは地上にあるのかな?」
『推定では地上に無い筈です。ただ、何らかの事情で地上に降りている可能性は否定できません。』
「通信は出来ないんだよね。」
『魔素が復活してからも連絡が取れていません。』
地図を見て現在地からグリーブランドまでおおよそ7000キロメートル。飛空挺クレイモアでどれほど掛かるだろう。
「ソリオ、グリーブランドまでクレイモアでどれくらい掛かる?」
『音の速度の3倍の最大速度でおおよそ2時間ほどでしょうか』
音の速度とはマッハ速度の事だな。成層圏にいるとき
の音速は約295m/sでジェット機のマッハ速度がおおよそ1062㎞/時だな。
成層圏までの加速とか考えると2時間半程度は掛かるだろう。
無事に何事もなく見つけられても半日以上掛かるな。
う~ん、どうしよう。
大事なことだから早めに対応しよう。
「ソリオ、これからクレイモアでグリーブランドまで行くぞ。」
僕が性急に言うとソリオに止められた。
『お待ち下さい。クレイモアはまだ完全に修復されていません。最高速度は出せない状態です。』
「え?駄目なの?」
うなだれる僕にソリオは追撃して言う。
『あと、10日程修復時間が必要です。』
しょうがないので飛空挺クレイモアの概要をソリオに説明して貰おう。
飛空挺クレイモアのスペック
全長:333m
全幅:256m
全高:195m
形状:卵を縦に半分にしたような涙滴型、或いは角の取れたホームベース
主翼:両翼長で302m
副翼:下挺部より11mづつ三角形に突出
階層数:7
乗員定数:148人
最高速度:音速の3倍
巡行速度:200㎞/時
航続距離:大の月まで
接続ユニット:各辺6m菱形高さ1.5mの魔素連結
砲門の種類:7
主砲:60㎝バレット魔砲 3門
副砲:50㎝バレット魔砲 9門
20㎝電磁カノン砲 20門
30㎝機雷砲 10門
自動5㎝マシンガン 60門
10㎝ロケット砲 10門
光撃砲:
熱波砲 1門
集光砲 2門
注)バレット魔砲は4種類の魔法に対応する。
注)光撃砲はパルス型と常射型を併用する。
注)熱波砲は距離と範囲を可変とする。常用は範囲1㎞射程2㎞である。
概要
上面のほぼ平らな部分は太陽光及び魔素集積パネルであり、砲門は半円形の下部に突出している。乗船は最下部のハッチ6ヶ所か転移による。
船体を構成する素材は神鋼とアダマンタイトの高複合鋼であり、船殻は3重構造となっていて、魔素伝達には金メッキされたミスリル銀線が使用されている。
最下部には動植物の実験区画があり、癒やしのポイントともなっている。
集積パネル下の区画は魔素凝積機4、魔素保管器10、魔素反応炉4などが密集している。
転移陣のある緩衝空間を経てメインブリッジがある。メインコントロールと4つのサブコントロールがある。そして、階下がクレイモアの魔導脳のある階層である。
更に下は食堂と風呂とジムの区画が併設されている。
更に2階層の宿泊ルームがある。
3次元ホログラムで飛空挺クレイモアを説明されて、その能力と目的を知った。
飛空挺クレイモアはババロンの空中庭園の防衛施設であり、移動用動力源なのだそうだ。
それであれば飛空挺クレイモアの攻撃兵器は過剰とも言えた。シュモール国を建国した時点の世界では突出し過ぎていたのである。
ナオヤがその過剰さを中央施設に尋ねても記憶が失われていてそれは不明だった。
風の町フウトとは?
もしかしてダブルが居るのか?




