表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二番煎じの転生者  作者: きゅうとす
37/163

風の町フウトの守護者

らいだー 変身!!

承章4 学術都市ディービアの陰謀②下


スピードとパワーの2人掛かりをものともしない狼ドーパンの戦いは尚も続く。


彼らを気にしつつ僕は別の存在に気を取られていた。

少し離れた建物の陰に止めている馬車だ。

御者1人に馬車の中に1人。

馬車の中からおかしな魔素の線が伸びている。その線は狼ドーパンに繋がっていた。

僕は気配を殺したままその馬車に近づく。

馬車の中から籠もった男の声がしていた。独り言らしい。

「ああ、くそっ! 違う、そっちじゃない!

斬られるのを恐れてどうする。

前に出るんだよ!

ほら、そこは飛び上がれ!・・・」

中の男はどうやら狼ドーパンを操っているようだ。

御者にそっと近づき気絶させる。

後ろの馬車をそっと覗く。

背の低い小太りの男が双眼鏡のような魔導具を両手で目に当てて、大騒ぎしていた。


他に誰も居ない。護衛も居ない。絶対安全だと思っているのだろう。それとも何かあるのか。

余りの怪しさに僕はそのまま声を掛ける事にした。


「もしもし、旦那様?」

なんじゃ!うるさいぞ!

どうやら僕を御者と思ったらしい。

「何をなさっているのです。」

そんなもん、見ればわかるじゃろがぁ!狼ドーパンを操っているんだわ!

「その魔導具でですか。」

そうじゃ、邪魔するでないわ!

「どうやってですか。」

ああ、五月蝿いのう!ここの穴にこのソースメモリを差して、魔力を登録したら、ソースメモリを使って人間をドーパンにして操るのじゃ! 良いか、もう声を掛けるで無い!! やられそうでは無いか!!


じゃあ、もう終わりにしよう。

僕は馬車の中に入り込んで素早く魔導具を奪った。

「ななな何者!このワシをバッカ様と知っての事か!」

「あ、嫌知らな~いです。」

魔導具を手に入れさっさと馬車を降りる。

「ま、待て!それを返せ。ヤンソン様に叱られてしまう。」

バッカは馬車から身を乗り出して手を差し伸べる。

知らない人物名に思わず立ち止まって振り返った。

「ヤンソン様?」

馬車から半身を乗り出したままバッカ様が答える。どうやら話をすれば時間稼ぎが出来ると思ったらしい。

「そうじゃ、ディービアの大貴族ヤンソン様だ。」

「じゃあ、そいつに聞けば全部分かるな。」

驚愕に震えてバッカは叫んだ。

「なんて不遜な!・・・そんな事はさせん!此処でお前を潰す!!」

何やら興奮したバッカは持っていたソースメモリを自分のベルトのバックルに着けられた魔導具に挿入した。


魔導具が発光、発雷する。光が治まるとそこには熊の魔物に変わったバッカがいた。

熊の異形魔物(ドーパン)である。馬車を破壊しながら飛び出し叫んだ。

 ごがぁぐがぁ

変身して迫る勢いは狼ドーパン程ではないが、恐ろしい迫力である。御者は慌てて逃げ出した。

僕も思わず半身を引いてしまうが、雷熊杖を取り出して雷魔法を発動する。

「スタン!」

気絶を目的とした弱められた雷魔法だ。耐久性のある者には効かないことがあるのが欠点だ。眩い電撃がバッカと雷熊杖を繋ぐ。

走り込んで来た勢いのまま熊ドーパンのバッカは前のめりに倒れて動かなくなった。

すると、バッカが気絶して変身が解けた。

僅か2秒の戦いだった。


足でバッカをひっくり返すとバックルと一体化していた魔導具も奪う。ベルトが無くなってズボンがずり落ちる。派手な色のパンツがもろ見えだった。


そろそろ、ショウとフィリップの方の戦いも終わりだろう。


バッカをそのままに先ほどの広場にもどり、隠れずにそのまま2人に近づく。

2人は倒れた狼ドーパンの前に立っていた。どうやらバッカとは違う変身をしているらしい。変身が解けて狼の身体が光に帰って行く。

光が消えて、見知らぬ男が現れた。被害者らしい。


「それで?君は誰?」

ショウが僕に向かって言う。

「その狼ドーパンだった男は死んだのか?」

僕は相変わらず質問に答えず問い掛ける。

フィリップが代わりに答える。

「死んだ。」

「やっぱり、魔導具が不完全なのか?」

僕は先ほどバッカが使った魔導具と狼ドーパンを操っていた魔導具を出して渡す。

フィリップが受け取り、驚いた。

「これはドーパンコントローラーとメモリドライバー。一体どこで。」

「そこの路地裏でバッカとか言う貴族が持っていたので強奪した。」

何でも無いことなのでそのままに言ってしまう。


「バッカ様が?じゃあドーパントはディービアと繋がりがあるのか。」

「ディービアの大貴族ヤンソン様とか言っていたぞ、そいつ。」

僕の暴露にフィリップとショウが顔を見合わせる。


「あんたが誰か知らないが、ここじゃあ話せないから俺達のねぐら)で話そう。」そう言ってショウは歩き出した。着いて来るものと思っているらしい。

「じゃあ僕がギルドに報告してくるね」そう言ってフィリップが反対方向に歩き出した。


汗かいたな。冷や汗だけど。シャワー浴びて来ても大丈夫だよね。

僕は左手を高く挙げてクレイモアに拾い上げて貰った。そして、身体の汚れを払うため風呂に向かった。


15分後、身綺麗になった僕はクレイモアにショウの近くに転移して貰った。

楽勝!? 実はショウの行き先はクレイモアに追跡して貰っていたのだ。


ドアを叩く。どうぞと言う声に中に入る。

驚くショウとフィリップ。

「あんたか。いきなり消えて・・・  どうやって此処を知ったのか知らないがまあ、入ってくれ。」

バーカウンターのある応接間と言った様子のねぐら)に苦笑する。


「何から話したら良いのか・・」ショウが切り出そうとした時、初めて僕は名乗った。


「僕の名前はナオヤ。訳あって調べものをしている。」僕の名乗りに大きく反応したのはフィリップだった。

「あんたが噂のナオヤか!ラサメアの懐刀だろ!」

なにそれ!そんなふたつ名知らないんですけど。

「結構この業界じゃあ有名だぜ。」ショウも知っていた。


「必要な事だから知っていること全てを教えて欲しい。」

僕がナオヤだと分かると凄く協力的になったし、態度も親密になった。

う~ん。僕はどう見られているんだ?

この2人には正義の味方と言った処か?


ディービアに魔物を操って大人しくさせ使うことは出来ないか、そう考えた者がいた。


ディービアは魔導具の研究都市である。魔導具開発の大家エル・ランティ上級貴族は魔物をコントロールする為の魔導具ソースメモリを開発した。

ソースメモリに自分の魔力を込め、魔物に打ち込む事で別のコントロール魔導具から操るのである。


実験は上手く行った。ただ、魔力が弱い者はコントロール魔導具から逆に魔物に操られると言う脆弱性を見せた。研究者全てが魔力の強い者では無かったのである。限られた予算の中で研究するには研究者自ら被検体とならざるを得なかった事が悲劇の始まりだった。


このエル・ランティの研究が別の可能性を秘めている事に気づいた者がいた。

大貴族ヤンソンに身を寄せていた食客、通称“彼“である。彼の提案でヤンソンは配下をエル・ランティの研究に潜り込ませその研究を盗んだ。そして彼の指導の元、魔物のソースメモリが完成する。魔物のソースメモリを人間に打ち込めば魔物と化す。研究はここで頓挫し、廃棄される事になった。これを惜しんだエル・ランティが開発したのがメモリドライバーである。


メモリドライバーを介して魔物のソースメモリを使用する事で魔物の力を人間が使えるのである。

メモリドライバー開発の研究者の1人がフィリップだった。

試作が完成した日、悲劇が起こった。

大貴族ヤンソンが研究結果を奪うために襲って来たのである。この時エル・ランティは亡くなった。

試作品をフィリップに託し、逃がしたのである。逃げたフィリップは知り合いであるフウトの有名冒険者ゼンダイを頼った。

冒険者ゼンダイの弟子ショウが追われていたフィリップを助け出した時にゼンダイは盾になって大貴族ヤンソンの追っ手と戦った。そしてその後ゼンダイは行方不明となり、何処にも見つからなかった。

フウトに隠れ住んだフィリップはメモリドライバーの開発を続けた。

そして魔物の力のみを利用できるドライバーが完成したのである。

ダブルソースメモリドライバーそう名付けられたドライバーを使ってショウはフウトの町を守る冒険者を続けているのだ。


長い話に欠伸が出そうになっていた僕の前に置かれたのがダブルソースメモリドライバーである。

うん、仮面〇イダーのアレそっくりだ。


倒したドーパンの使用済ソースメモリとフィリップのソースメモリを併用する事で外見が変わらずに魔物の能力が使えるようになるらしい。肉体強化され魔技、体技が使える。

便利だね。


大貴族ヤンソンが探し続けない訳がない。量産して軍隊作れば武器商人として大儲け出来るぞ!ってところだろうな。自分が軍隊持っても良い。

いずれにせよ、個人で持つには過ぎている。

あっ、クレイモア持っている僕の言えたことじゃあ無かったか。

ならば、バレない手伝いをしよう。


「そのドライバー使って戦った事ある?」とショウに訊く。

「ん?ああ、森の中で試した事はあったけど、街中で使ったのは今日が初めてだ。」いいわけがましく顔を歪めてショウが言う。

「じゃあ、顔バレしないように変装しよう、そうしよう。」と言う僕にフィリップは頷いた。

領主にでも見つかったらメモリードライバーは取り上げられた上、犯罪者として強制労働だろうからね。


「変装用具を用意するから1日待って。」


お気軽な僕の言い草に怪訝な顔をするが、取り敢えずOKなようだ。

2人にまたねと軽く言って外に出た。後ろ大丈夫だよね?


中央施設センチネル)のソリオに魔物の加工は出来るかと前に訊いた時、簡単な物は可能、服飾もOKと言っていたのでショウとフィリップの2人に安請け合いしたのだった。

中央施設センチネル)で魔物の素材≪殆ど無傷≫をインベントリーから取り出し、イメージをソリオに伝える。

ソリオは僕のイメージを加工出来るようにモニターに表示したのでとても良く出来上がりが分かった。

完璧だろう。


後は待つだけだ。ショウとフィリップの塒や宿屋に戻るのは面倒だったのでそのまま中央施設センチネル)に泊まる。


次の朝、出来上がった物をウキウキしながら受け取り、ショウとフィリップのねぐら)近くに転送して貰う。ドアを叩く。

眠そうな顔をしてフィリップが出てきた。


取り敢えずコーヒーを貰ってショウを起こしてきて貰う。

これはショウ用に作ってある。

眠いのに起こされていささか、不機嫌なショウに出来たから試着してくれと言うと目を輝かせた。


ライダースーツのようなそれをパンツ一丁のショウがフィリップの手伝いで着て行く。慣れれば早くなるだろう。最後に背中のマジックテープを止める。

動いてみて貰う。

問題なさそうだ。

次にロングブーツとロンググローブだ。

サイズもぴったりだ。さすがババロン謹製だ。


最後にヘルメットを出す。


2人が目を見開く。

これは以前僕が倒したトンボの魔物の頭だ。

中身をくりぬいて緩衝材を詰め、ババロン流の魔導具を埋め込んである。


ヘルメットを着用したショウは異様な姿だった。


トンボの魔物の頭とトンボの魔物の皮を使ったスーツ。さながらトンボの魔物が人間に化けているかのような異様な姿になった。


か、カッコイい~!


僕が感激しているとフィリップが震えていた。感動した訳ではないだろう。その目には恐怖が宿っていた。


「これくらいのインパクトがないと迂闊に近寄る者が居るからね。」

理由を理解したのか黙ったままフィリップが頷く。

姿見鏡で自分を見たショウも固まっている。バッチリ!


「これであの香ばしいポーズもセリフも恥ずかしくないね。」

恥ずかしい存在になったショウも満足だろう。


スーツは取り敢えず全部脱いで、みんなで寛ぐ。

ドライバーとの運動確認は後で森に行ってするらしい。

スーツを着たショウをなんと呼べば良いんだろうと言う話になって、3人で話し合い

『仮面を被るダブルソースメモリドライバー装着者』から

『仮面ダブル・ド・ライバ』と短く名乗ることになった。

仮面にはショウに教えていない秘密の機能があったが内緒だ。おいおい分かるだろう。驚くショウの顔が楽しみだ。


これで風の町フウトでのやることは無くなった。今日にでも町を出てディービアに向かおう。

別れ際にフィリップになぜこんなにも親切にするのかと訊かれた。


もちろん、彼の後始末の為だが、それだけでは無い。

風の町フウトを愛する2人の冒険者にささやかながらオマージュを捧げるためである。

いよいよ 学術都市編です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ