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15.学校と光臣

前世の良い思い出の回想です。


 私の前世でのこと。

 高校時代の親友、諸江もろえ 友美夜ゆみよと私は、同じ大学の経済学部に進学した。引っ込み思案な私と比べ、友美夜は天真爛漫と言って良い程無邪気で明るくて、見た目もとっても可愛らしい子で、そんな友美夜に男の子達が寄って来るのは、とても自然なことだった。

夏休みに入る直前のこと、授業を終えた私と友美夜は新しくオープンしたカフェに寄ろうと、お喋りをしながらキャンパスを歩いていた。その時、友美夜が同じ経済学部の近岡ちかおか 君典きみのり君に呼び止められる。友美夜にとっては、何人目かの告白。けれど、これまでと違ったのは、友美夜がOKしたことだった。近岡君は、精悍な顔立ちの男らしい青年で、実は友美夜の方でも入学早々一目惚れをし、想いを寄せていた相手だったのだ。

近岡君は、同じ高校から進学したという光臣君と仲が良く、近岡君と友美夜が付き合い始めたことによって、段々四人で行動するのが当たり前になっていった。

男らしい外見の近岡君に対し、光臣君は甘く優しい顔立ちで、当然その頃は二人とも女の子達に人気があった。ただ、近岡君は端から見ても友美夜にベタ惚れだったし、横恋慕して間に割って入ろうとする者が、かえって二人の結び付きを強くしてしまう結果を招いて、最終的に理想の恋人同士としてみんなから憧れられていったように思う。

そして私達四人が同じ学部だったから、私も彼等の中の誰かと一緒にいることが当たり前で、1人になることも殆ど無くて、僻みや妬みの視線を浴びることは常だったけれど、実際に嫌がらせやイジメに遭うことは無かった。

そんな大学時代は本当に楽しかった。

友美夜が近岡君を『君くん』と呼び、光臣君を『光くん』と呼んでいたから、いつの間にか私も同じように呼ぶようになり、また君くんも光くんも、友美夜と同じように、私を『憲ちゃん』と呼ぶようになった。

一緒にいろんなところに遊びに行った。遊園地、美術館、動物園、プール、映画、水族館………。

四人での外出は、恋人同士である君くんと友美夜が手を繋ぐから、どうしても私は光くんと並んで歩く。私達は単なる友人だから、手を繋いだり腕を組んだりといったことは皆無だったけれど、転びそうになったらその腕で支えてくれたり、手が届かないものを代わりに取ってくれたり、光くんはとても紳士的だった。しかもそういった時には大抵の場合見惚れるような優しい笑顔を向けてくれて、自分が特別な感情を持っていない相手に対しても手を差し伸べることができる温かい人なんだって、感じていた。

だから友美夜が君くんに、クリスマスやバレンタインにプレゼントする時には、私も光くんにプレゼントやチョコレートをあげた。そして光くんは、何の面白みも無いささやかな贈り物を、いつも本当に嬉しそうな微笑みで受け取ってくれて、私がいたたまれないような思いを持つことも無かった。本当は凄く人気があったから、多分私の知らないところで、沢山の女の子達からもっと素敵なプレゼントを受け取っていたのだろうけど。

こんなに優しく素敵でモテる光くんに、自分が釣り合うとは最初から思っていなかったから、本気で惹かれないよう心にブレーキを掛けていた。光くんは私も友人の1人だと思ってくれていて、もし私の感情が恋心に変わっても、彼にとっての私は、友達から恋人へ移行できるような相手ではないだろうと思っていた。逃げだとか自己保身だとか言われたら否定できないけれど、そうしなければならない程、そう思い込まなければいけない程、彼は外見も性格も『王子様』だった。


 ………………どうして今頃、こんなにありありと光くんのことを思い出したかというと、私が学校に入学したからだ。

魔術師長の娘である私は、貴族の子供達が通う学校に入学した。そして、他の新入生と同じように自分の教室に入って、かなり驚いた。共学である筈のそこは、生徒の七割が男子だったからだ。しかも家柄も外見も良い子ばかり。子供だからと侮ってはいけない。どんなに小さくても男は男で、女は女なのだ。

この世界に転生して、本物の王子様にも出逢ったけれど、レヴィナイス殿下とは年齢も離れているし、周囲の人達から婚約者がいるという話も聞いている。更に兄さまと友達で、小さな頃から顔を合わせることが多かったから、私のことを兄さまと同じように『妹』だと思っているんじゃないかと思う。だから多少親しくしていても、嫉妬の対象にはならないんじゃないかな。

けれど、この学校に通う男の子達は、言ってみれば光くんと同類。女の子達の手が届く位置にいる『王子様』的存在だ。更にレヴィナイス殿下のように、既に決まった相手がいる場合もあるだろう。だから下手に関わると、前世と同じ目に遭いかねない。

ただ救いは、教室に張り出された時間割だ。男子は将来的に、宰相等の地位は難しいにしても何らかの仕事で王宮に勤めるか、もしくは領地を治めていくことになる。だから、そういう勉強中心に授業が構成されていた。逆に女子は、より良い家柄の素晴らしい妻に、母になる為の勉強をする。その為、殆どの授業が男女別になっているのだ。だからあとは、男の子達と必要以上に親しくならないように、無駄に目立たず、控えめに大人しく学校生活を送ろうと思った。


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