新宿アンダーシティから気分よく帰りたい
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◆新宿アンダーシティ
新宿アンダーシティは、地下街の奥に突然出現したダンジョンだ。
これまでのダンジョンと大きく異なる点は――
まるで地下街がそのまま延長したように、奥へ奥へと続いていること。
照明が生きている区画が多く、
魔術師が明かりを灯す必要もない。
地形は規則的で、入り組んだ場所もあるが、
上に行けば出口、下に行けば深層という分かりやすさ。
落石や落とし穴の心配もない。
その代わり、ここは冒険者の数が少ない。
理由は単純で――厄介な魔物が多いからだ。
ダンジョンに直通する地下街は、すでに一般人立ち入り禁止。
俺とミヤはゲートを抜け、アンダーシティへと足を踏み入れた。
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◆地下街型ダンジョンの光景
「これが都市型ダンジョン……地下街タイプなんですね」
ミヤが感心しながら歩く。
照明の明るさに目を細め、周囲をきょろきょろ見渡している。
「見通しが良いですね」
「まあまあ厄介なところですよ、ここ」
俺がそう言うと、ミヤはぴしっと背筋を伸ばした。
ここに来るまでの間、ミヤはほぼ一方的に喋っていた。
Aランクパーティ“蒼風の爪”に所属していたが、
本人はCランク冒険者だという。
なぜそんなパーティに?
と思ったが、ミヤは語らず、話さないのなら詮索する必要もないと思った。
追放されたことについても口をつぐんでいたが、
怒りのような感情は感じられなかった。
むしろ、どこか納得しているようにも見えた。
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◆店の前で
「ダンジョンなのに……お店が……」
ミヤがシャッターの半分開いた店の前で立ち止まる。
「お宝はこの店の中にありますが、注意してください。
ここの魔物は待ち構えてます」
そう言った瞬間だった。
ミヤの死角から、影が飛び出した。
「――っ!」
制服姿で、手には警棒のような武器。
パッと見は人間の警備員だが、実態は魔物。
《ガードマン・シェイド》
このダンジョン特有の“警備員型魔物”だ。
ミヤは驚き、そのまましりもちをついた。
ガードマン・シェイドが警棒を振り下ろす――その前に。
俺はミヤの前にウィンドウを展開した。
ぱん、と透明な板が空中に固定される。
警棒がウィンドウに阻まれ音もなく止まる。
「こ、これ……!」
「こんな感じです。結構厄介なんですよ、ここ。
それに、人型の魔物って……抵抗感あって」
俺は別のウィンドウを横に展開し、
それを魔物の側頭部に叩きつけた。
ガードマン・シェイドは吹き飛び、
光の粒となって消滅した。
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◆店内の探索
「……っ、た、助かりました……」
ミヤは何とか起き上がり、服の埃を払った。
「こういう感じです。
とりあえず、この店には他の魔物はいなさそうですね。
ちょっと見てみましょう」
店内に入ると、棚には
日本語らしき文字が印刷されたビニール袋入りのお菓子が並んでいた。
「これは……ダンジョンのアイテムですか?」
「そうですね。でも、これらは毒が入ってることもあるので、
基本的に食べちゃダメですよ」
「そ、そうなんですね……」
「ここの戦利品は目利きが重要です。
それも、ここに冒険者が少ない理由のひとつですね。
なんでもかんでも持って帰りたいなら、
無尽蔵に物を積めないといけない」
「なるほど……」
ミヤは素直に頷いた。
「それじゃあ、もうちょっとだけ探索してみましょうか」
俺は店を出て、アンダーシティの奥へと歩き出した。
ミヤは一歩遅れて、俺の後ろをついてくる。
(まあ、適当にやって帰ればいいか)
そんな気分で、俺はさらに奥へと進んだ。




