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突然の来訪者で気分よく帰れないかも

***

◆朝・ギルドロビー


 朝。

 いつものようにギルドに入る。


 受付前はすでに混んでいて、

 依頼を受ける冒険者、報告をする冒険者、

 ただ雑談してるだけの冒険者が入り乱れていた。


 俺は部屋の隅に置かれた給水機から麦茶を注ぎ、

 紙コップ片手にロビーを眺める。


 この時間帯のギルドは、冒険者の“素”がよく見える。

 やる気満々の新人。

 寝不足で目が死んでるベテラン。

 妙にテンションの高い配信者。

 そして、今日もどこかで揉めてるパーティ。


 俺は麦茶を一口飲んだ。


「……平和だな」


 そう思った、その瞬間だった。


 ギルドの扉が勢いよく開いた。


 バンッ!!


 ロビーの空気が一瞬止まる。


 駆け込んできたのは――

 肩までの黒髪、小柄な魔術師の少女。


 ミヤだった。


 女の子と言っても、俺よりは年上に見える。

 先日の怯えた顔とは違い、今は必死そのものだ。


 ミヤはギルドの中を見渡し、

 そして――俺の方向を見た。


(やばい)


 俺は瞬時に顔を伏せ、

 紙コップを持ったまま、

 壁の陰に隠れるように姿勢を低くした。


 だが――遅かった。


「――ショウさん!!」


 ミヤは俺のそばまで駆け寄ってきて、

 ぱっと顔を輝かせた。


「ショウさんですよね! 探しました!」


「ヒ、ヒトチガイデスヨー……」


 弱々しい声で否定してみたが、

 ミヤは首を横に振った。


「やっぱりショウさんです!

 覚えていますか? 先日の海鳴で!」


(覚えてるけど……なんでここに……)


 俺は視線をミナミさんに向けた。


 ミナミさんは、

 “やれやれ”と肩をすくめるポーズを取りながら、


「先日、その子が来たんです。

 あなたを探して」


 とだけ告げた。


(……もしかして俺を売ったのか!?)


 と思ったが、

 時すでに遅し。


 周囲の冒険者たちの視線が集まり始めていた。


「おいおい、あのDランクのショウに詰め寄ってるぞ」

「アイツ、あの子になんかやらかしたんじゃないのか?」

「普段の態度悪いしな……」


 普段の評判の悪さが、

 ここにきて最悪の形で作用している。


(……やめてくれよ……)


 そんな俺の内心など知らないだろう、ミヤは目を輝かせてこちらを見ていた。


 俺は小声でミヤに告げた。


「ここじゃなんなので、ちょっと場所を変えましょう」


 ミヤはぱっと笑顔になり、

 こくりと頷いた。


「はいっ!」


(……これは面倒なことになりそうだ)


 俺は麦茶を飲み干し、

 逃げ場を探しながら歩き出した。

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