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赤執事 ~Scarlet's Butler~  作者: 鬼姫
【赤執事】気息奄編
24/65

Ep.24 無断外出

「フランお嬢様!?」

「一日ぶりね、私の執事さん。」


 やはりどうみてもフランであった。


「とりあえず、中にいれて。」


 玄関で立ちっぱなしのフランが小傘に向かって言う。


「??

 上がってくればいいじゃない?」

「うん、わかったわ。」


 それを聞いてやっと、呪縛でも解けたように小傘の家へ入った。


 なるほど。

 この一連のやり取りは一見不自然のように見えるのだが、確か吸血鬼は他人に招かれないと家に入れないのだったな。


「お嬢様。何をなされにいらっしゃったのでしょうか?」


 彼女は日傘を閉じると、不機嫌そうにつぶやく。


「自分の執事の様子をうかがいに来たら悪いの?」




 紅霧異変から数日後。


 紅魔館は、たったの一夜のことでかなり変わった。


 フランは霊夢や魔理沙のおかげからか、部屋の外に出るようになっし、そして、レミリアはフランに対してかなり寛容に密接になった。

 おそらく、近々フランの部屋をレミリアの部屋の隣に移すのではないか、と噂されている。

 変化があったのは二人だけではない、咲夜さんや美鈴、パチュリーや小悪魔、そして、妖精達までもだ。詳細について話そうと思えば、それこそ、丸々小説一巻ほどの物語になってしまう。

 それでも、人くくりにまとめるとすれば、雰囲気が明るくなった、ということだ。

 それについては、俺もいいことだと思っているし、彼女たちの心中に深入りするつもりはない。


 しかし、問題はまだ山積みだった。


 その一つが、フランの気まぐれだ。

 別に癇癪について言及しているのではない。そっちの問題はあの事件を境に回数が激減している。かつては一日に何回も破壊行為を行っていたが、ここ数日は1、2回ばかりで、それについても、コップみたいな小物を壊してしまう程度になった。


 では、何が問題なのか?

 それは彼女が逆に外に出たがっていることだった。



「レミリアお嬢様に許可はもらったのでしょうか?」


 それを聞くとフランは、ぎくりとして、後ろめたそうにうつむく。

 やっぱり脱走してきたのか。


「・・・あ、あいつ、もう寝ちゃったから許可はいらないと思って!」


 ああ、それでそろそろ就寝時間の朝に来たのか。

 全く、門番の美鈴は何をしているんだか・・・。勝手に入ってくるやつも問題だが、勝手に出ていく彼女も問題なんだから見張ってないとダメだろう。



 彼女はあれ以降、積極的に「館」の出たがるようになった。

 もちろん過保護なレミリアは「お家で遊びましょう?なんなら庭で弾幕ごっこでも。」と言ってあまり館の外に出そうとしない。

 俺としてはフランに外の世界を見せることは悪くないと思うのだが、レミリアとしては、かつて両親とはぐれてしまった時のことを引きずっているのだろう。愛しい妹がまた迫害されるかもしれないと思うと、手放したくないのだ。その気持ちは話を聞いた俺もわからないでもない。


 それでも、だからこそ外に出してやるべきではあるし、それに対して、迫害されそうな行動は誰かが抑えて、教えていかないといけない。


 そういう観点からフランという少女をみていくと、レミリアの許可はあったもののこうしてフランを一人にして人里に来たのは間違いだったのかもな。




「お嬢様。」

「な、なに?」

「よろしくありませんよ、勝手に外出なさるのは。」

「だってお姉さまったら、「執事の様子が心配だからいってもいい?」っ言っても「あなたが人里に行ったらどれ程の脅威があるのかわからないでしょ!ダメ、ダメダメダメダメ!!」って怒るし。」


 これだけ聞いているとレミリアの方が子どもだな。しかもこれが、知識を持った子どもときたから余計たちが悪い。もう少し、何かこう、説得の仕方があるだろう?


「レミリアお嬢様も理由があってのことでしょうし、きちんと説得なさるなり、そうでなくとも、咲夜さんから許可はいただかなくては。

 なにより勝手に外出なさるのは心配されますよ、みなさま。」


 あ、うつむいた。多分、いじけたな。


 さて、どうしたものか。こうは言ったがこのまま一人で帰してしまうというのは何だかまずいような気がする。もしものことを考えて、だ。

 しかし、これから小傘に仕事の紹介をしてもらうから、自宅においておくのも心配である。


 ・・・仕方ない。小傘には悪いが今日は仕事探しは諦めるか。

 確か今日は紅魔館の買い出しの日だから、咲夜さんたちが来るだろうそれまで待って、連れて帰ってもらおう。


「小傘。悪いんだが今日は仕事探しはやめようと思う。」


 土間の縁に足を投げ出しぶらつかせて俺達のやりとりを聞いていた彼女は、不思議そうにした。


「え?別に一緒に行けばいいじゃない?」


 一緒に行く、か。

 まあ一人にしない点では概ねいい案ではあるのだが、人里に人馴れしていない妖怪を連れていくは問題ありだろう。もちろん、人間だけではなく、フランに対しても。


「いや・・・。それはまずくないか?」

「そんなことないよー?そもそも悪意のある妖怪はここに入れないしね。その子がここに来れたということは、問題ないってことだと思う!」


 悪意はなくても錯誤があったらどうするんだ。結局害を被るのはフランだぞ?

 それに彼女の意思も尊重しないと。


「フランお嬢様はどうなされたいですか?」

「私も行く。」

「ほら、その子もそう言ってるし一緒に行こう!!もし君に用事とかあったら私が面倒みとくから!」





―でねでねー!ここの店はよもぎ団子がおすすめだよ!」

「よもぎ団子!?何それおいしそう!」

「おいしいよ!何よりここのはすごくすごいんだよー!」

「すごくすごい!何かすごそう!」

「間違いなくすごいよー!」


 妖怪二人が朝の大通りを華やかなおしゃべりで通りすぎていく。

 そのせいで、誰しもが俺達から一定距離離れている。小傘だけなら何てこともないのだろうが、何せ高貴な雰囲気を漂わせる、明らかに妖怪の見知らない少女が堂々と歩いていたら必然的に警戒心は高まる。


 通りすがりの威勢のいい豆腐屋さんが、フランを見た瞬間豆腐もびっくりの蒼白顔になっていたのはおもしろかった。



「ところでお嬢ちゃんは何が好物なのかなー?」

「ケーキ!

 私、いつかケーキ屋さんになるの!」

「ケーキかー!人里だとあまり見かけないなー。

 じゃあ、もしお店を開いたらサービスしてね、お嬢ちゃん!」

「うん!

 ・・・あ、でも私のことをお嬢ちゃんて呼ばないでよ。こう見えて495歳なんだから!」

「あちゃー!ごめんね!

 でも、私は1000歳越えてるから、やっぱり君はお嬢「ちゃん」だね。」


 フランは大きな目をさらに丸くさせる。


「1000歳!?私の二倍だ!」


 彼女は、すごい、すごいと自分のことのようにはしゃいでいる。


 しかし、彼女の生い立ちから推測していた。ただ改めてその年齢を知ると、見た目はかわいらしいショートボブの少女だが、その内にはかなりの歴史が刻まれているのだと感じさせられる。


  おどけているように見えるし語りにはなかったものの、それなりの経験を乗り越えてきたということだろう。

 きっと少女である姿もおどけている姿も一見すれば経験した歴史と不釣り合いにみえるが、それは彼女なりの「必然」なのかもしれない。


 多分レミリアやフランも同じだろう。

 彼女たちも小傘のように抱えているものに対する必然性からきっと「少女らしさを着ている」のだ。


 でなければ、今ごろはいつぞやのフランのように成長しているはずだ。




「ほら、ついたよー!」

「・・・ここは?」


 木造の長屋。

 そして、その中へと子供がちらほら入って行っている。


 小傘が一歩前へ出て手を腰に当てる。


「ここは寺子屋。子どもたちの学舎だよ。」

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