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赤執事 ~Scarlet's Butler~  作者: 鬼姫
【赤執事】気息奄編
22/65

Ep.22 仕事

 多々良小傘という変な隣人、もとい、隣傘に出会ったのも今は昨日のことだ。


 さて、記憶探しの体をしつつも、ただ自堕落に日々を送るのは、いささか社会的目線からみても紅魔館の執事という立場からしてもよろしくない。そう思った俺はとりあえず何かしらの職を得ようと今日もしくはここ数日の間、人里を見て回ることにした。

 人里を見て回る。こういったがしかし実際、どうするべきか、誰を頼るべきかなどの宛はなかったため、まずは小傘のところに立ち寄った。


「小傘、いるか?」


 昨日のこともあってか、身構える。


 ・・・。

 しかしながら、返事はなかった。

 とりあえずもう一度戸を叩く。


「小傘、いないのか!」


 ・・・。

 またもや沈黙。


 本当にいないのだろうか。しかし、こんな朝方から出かけるところなんて彼女には無さそうなものだが。


 と思っていると、後ろから声がした。


「うらめしや?」

「うわ!」


 金次郎像のように薪を背負い、唐笠片手の小傘がそこにいた。


「何してんの?」


 不思議そうな顔で聞いてくる。

 前回とは違って、せっかく純粋に驚いたのにそこはスルーされるんだな。


 まあ、俺には関係ないけどね。


「小傘、お前に用があって訪ねたんだ。しかし、お前はどこに行っていたんだ?」

「お?私?私は鍛冶につかう薪を拾いに行ってたけど。」


 薪か。

 俺は人里で買うつもりだったが、もしかしたら小傘に付いていって一緒に集める方が経済的かもしれないな。

 それに小傘も一応は妖怪だ。人里の外に出るという行為のリスクを軽減させる効果はあると思う。


 さて、それについてはおいておいて本題だ。


「小傘、お前の仕事を手伝いたいんだけど。」


 彼女は首をかしげる。


「仕事?・・・人を驚かすこと?」

「いや、そっちではない方。」

「ああ!鍛冶のことね。」


 本当に冗談ではなく、人を驚かすことが本職だったようだ。


「鍛冶はねー、手伝いっていっても、手伝ってもらうことはないね。と言うよりか手伝わないでいただきたい。」

「あ・・・。そうだよな。

 素人だと火加減やら焼き入れやらの微妙な調節はできないし、いても邪魔か。」


 それを聞いて彼女は、おっとどっこい!と言って歌舞伎のように構える。


 見ていて本当に愉快だ。


「気を悪くしたんならごめんよー!

 でも、私のはいくら出来がいいとはいっても趣味だから!他人に仕えられても渡せる事は何もないのだよー、ふっふーん!」


 つまりは、他人に自分の趣味の領域を侵されたくないということだった。

 俺もわからなくなくはない。

 昔、ガンダ○のプラモデルを作りかけでおいていて、いつの間にか家族が完成させていたときは、殺意を覚えたものである。


 誰だって自分の楽しみは自分で楽しみたいものな。


「なんなら、本職のほうを・・・。」

「それは遠慮する!」

「えー、そっちの方が大変なのにー。」

「・・・。」


 考えてもみろ、成人が女の子と一緒に道行く人々を子供騙しの仕掛けで驚かせようと躍起になっている姿を。

 変質者どころの騒ぎではなく、通りがかりの霊夢から情状酌量の余地なく死刑を受けるはめになる。


 ・・・いや、それよりもまず真っ先にレミリアに殺されるだろうな。



「まあ、とりあえず上がってよ。詳しい経緯はそれから聞こう。」


 彼女の家の中の鍛冶場を抜けた先には、囲炉裏を囲んで土間がある。

 そこで俺は小傘の淹れてくれたほうじ茶をすすりながら状況説明をした。


「・・・ふむ、なるほどなるほど。事情は読めたよ。別に紅魔館の執事なら今は休暇だと思って自堕落にするのも、最悪いいと私は思うけど。

 それに、記憶探しだっけ?

 ・・・そっか、君も大変なんだね。」

「まあね・・・。」


 こう言ってしまえば誤解を生んでしまうことは承知なのだが、俺はこの件に関して嘘をつくことに慣れてしまったようだ。

 嘘をつきすぎて、いつかは嘘に飲み込まれるのではないかと思ってしまう。


 気のいい少女にさえ偽らなければならない。何だか永久に自分を偽らなくてはならないような気がして、少しそんな自分に幻滅した。


「仕事ね。さすがに私は紹介できないな。すまない。」

「いや、こちらこそ朝早くから失礼したよ。

 このお礼はまた何かの形で・・・」


 といいかけたとき、おもむろに彼女は言葉を遮った。


「でも!君でもできそうな仕事を知っている人間を知っているよ!」




 こうして仕事を知っている人を紹介してもらうという約束を取り付けた。


 しかし、その人が現れるのはまだらしく、それまで数時間、雑談をすることになった。

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