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赤執事 ~Scarlet's Butler~  作者: 鬼姫
【赤執事】気息奄編
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Ep.21 嘘と記憶

唐突な展開で申し訳ないのだが、今現在、俺は人里で暮らしている。


前もっていっておくが、フランドールやレミリアと折り合いが悪くなって紅魔館を追い出されたのではない。

記憶喪失という設定である俺の「過去」を思い出させようとしたフランドールの計らいで、小さいながら幻想郷唯一の人間の集落である人里に

少しの間住まいを構えることになったのである。

どこに行こうが何年経とうが、本当のところは無駄な努力、もとい、努力すら存在しない、要はただの無駄なのだ。


とは言いつつもこうして人里へと移ったのは、ただ時間の無駄をしに来たのではない。ちゃんと目的があった。



さて、俺は独り暮らしをすることになったのだが、当初困ったことがあった。

こちらでの生活は元の世界と勝手か違うことは、ここ半年の紅魔館での経験から学んでいた。しかし人里となると、また紅魔館とは別に勝手が違っていた。


まずその説明のためには、今住んでいるところについて話しておかなければならない。

俺の住まい。人里の端の旧日本家屋の瓦葺き。

東方projectは明治初期の田舎をそのまま閉じ込めた世界観だ。だから、人里では瓦葺きも多く見受けられるが、中心から離れていくにつれて藁葺きの民家の方が多少多くなってくる。

そのため、完全にはしっこに位置する俺の瓦葺き住まいはわりと目立つ。

そして、内装。もちろんガスや水道などはない。かまどと井戸である。


ここでひとつ問題が出た。料理についてだ。

紅魔館では、魔力式のコンロみたいなのを使っていた。だから、人里での火の付け方などについて知識がない。

しかし、これについては隣家の人のおかげですぐに解決をみた。

隣の家。多少大きさは違えどここも俺の家と同じく瓦葺きの家だ。そして、そこに住んでいるのは多々良小傘という少女だった。

問題について、彼女宅には鍛冶場があり、そこから直接種火をもらうことができ、さらには火の取り扱い方も教えてもらうことで解決したのだ。



さて、まずこの少女について記しておく。

彼女は妖怪だ。

そうでなければ独り身の小さな少女が立派な鍛冶施設など持っているわけはない。

知っている人は説明する必要はないかもしれないが、彼女は唐笠お化けに属している。



妖怪の闊歩する幻想郷における人里には「悪意」のある妖怪は通れない結界が張ってあるらしい。そのため、妖怪はその性質上から入ることさえ難しい。

ここでいう「妖怪の性質」とは妖怪は人を襲うという根本的な存在意義だ。つまり、度合いの幅はあるが少なくとも悪意を持ち合わせている妖怪は元来人里にはいられない。しかし、小傘という少女を含めて、いくらか人里に住まいを構えている。

これは、無害と認められたおかげだ。認められる、と人為的に言ったが実際無害認定をしているのは人里の人間でもなければ、楽園の素敵な巫女こと博麗霊夢でもなく、この結界ということらしい。


この結界、実は半年前単身で紅魔館を訪れた賢者―八雲紫が作成したものらしい。 別にこの世界に苦言を募らせるつもりはないが、どうだろう?妖怪から守るための結界が妖怪によってつくられ、管理されているという気分は。八雲紫という人物が不要に不用意に結界を外すなど

という外道な行為に及ぶとは思えないが、それでも人間が妖怪に首根っこを締められているという構図に変わりない。



まあ、この話はおいて多々良小傘という少女の話に戻そう。


彼女は無害ではあるが、それでも人を襲いはしている。しかも昼間から大通りで堂々と。



俺との出会いも襲われるところから始まった。


「うらめしやー!」


越してきた当日、挨拶のため何軒か隣家をまわった後、最後にすぐ隣の家を訪ねて、戸を叩いたすぐのことである。

しばらく紅魔館という悪魔の巣窟で暮らしてきた俺でも、激しく戸を開いて目先で茄子色の傘をばっと広げて驚かせようとする少女には驚いた。・・・と言うよりか、純粋に引いた。


しかし少女はと言うと、反応に満足したのか嬉しげだった。


「わー!ちゃんと驚いてくれた!!」


もちろん今までの挨拶ではおふざけなしで相手方もきちんと作法通りこなしていたので、こんな下らない愉快な子供騙しをするやつは彼女をのぞいて他にいなかった。


「・・・隣に越してきた者です。ご迷惑をお掛けすると思いますが、今後ともよろしくお願いいたします・・・。」

「あ、隣の空き家に越してきたんだー。私は多々良小傘、唐笠お化けだよ。好物は驚きで、本業は人を驚かすこと!それで趣味はー・・・鍛冶かな?」


好物が驚きと初対面の人間に言うことはおいとくとして、普通に考えると本業と趣味が逆転している。

・・・まあ、妖怪だからこれで間違いではないのかな。

でも、偽物のお化け屋敷に劣る本物なんて、怖がられるどころか呆れられるだろう。せめて本業と言い張るだけの努力は見せた方がいいと思うのは俺だけだろうか。


「しかし、昨今の人間が妖怪を怖がらない現象の中で、お兄さんみたいに分をわきまえている人間がいて私は嬉しいよ!いやー、気に入った!」

「お兄さんと呼ぶな!それに俺は驚いたんじゃなくって、引いたんだ。どん引いたんだ!」


しかし、小傘は逆にむふむふ喜んでいた。


「またまたー。照れなくったて驚きはちゃんと食べてあげるよ。照り焼きでなくても、生でも驚きは美味しいからね!」

「全然うまくない!驚きの味については人間であるところの俺にはわからないけれど、言葉掛けはうまくないのは俺でもわかるぞ。」

「あれー?面白いと思ったのにナー?」


「でもでも、お隣さんがいい人でよかったよ!」


そんなこんなで、隣人、いや人ではないから隣傘の小傘には気に入られたようだった。



それと、いい忘れていたことがある。

俺が紅魔館から少しの間暇をもらう際にフランから(実際に手渡してくれたのは咲夜さんだが)「多少」の生活資金を受け取った。食費と雑費に使えとのことではあるが、最初に店へ買い物に行って、あらビックリ。持たされた金額が、人里の物価からしてとんでもない大金であることに気づいて、手が震えてしまった。

俺はもちろんこちらの通貨価値を知らないのは当然だが、フランもあまりよくわかって無かったようだった。

それなら、事情を知っている当主のレミリアか、実質的管理人の咲夜がある程度ピンはねしておいてくれれば良かったのに・・・。


スカーレット家の怖さを何だか別の意味で味わった瞬間だった。

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