5章
◇◇◇
「……誰だ?」
幼い少女の声がスマートフォンの向こうから響く。微かに風の音がするので、屋外にいるのだろう。
俺は歩いていた足を止めた。
『すみません。テンション高すぎましたね。初めまして。名莉海くん。』
「初めまして。ってね。」
『天崎さんは私のこと教えてないでしょうか?ギブアンドテイクじゃない空たんです。』
「天崎兄ちゃんの知り合い?―――で、敵なのか味方なのか、わかんねーんだけど。敵なら殺すよ。今さあ、ちょっと機嫌悪いんだわ。」
ナイフで殺すとかあり得ない。
よく妹はあれで平気だな。服についた血と匂いが気持ち悪い。
『敵というものではありません。ご安心を。』
「ふーん。」
あまり信用できたもんではないけど。
信用は半分の半分以下ってとこ?
『死色という方が知っていると思います。先ほど会ったので。訊いてみたらいかがです?』
聞かれて、俺は眠そうに目をこすっている死色に問いかけた。
「死色、空って奴知ってるか?」
「ふぇえ?誰でしかそれぇ。しーちゃん知らないでし。知ってるのは名莉海くんだけでしー」
「…………。」
考えを整理中。
会ったことある人に対しての死色は、大体この反応。
会ったことのない人に対しての死色は……どんなだったかな。
「死色、じゃあさ……ナスビさんって知ってる?」
「はぁ?誰でしかそれ。不審人物でしか?殺しましか?」
「……いや、知らないならいいや。」
はい、わかった。
本当に知らない奴は殺すとかいう短絡的思考怖いよ?
「死色は覚えてないらしいけど、まあ会ったことあるらしいのは本当だな。ってね。」
『そうだと思いました。覚えてないのは分かってました。』
おい死色、分かられてんぞ。
「で、何がしたいわけ?俺、天崎兄ちゃんの知り合いだからって、へりくだったり、ましてや信用したりしないぜ。」
『私は……一応抄夜君の味方です。今は。……信用できなければ屋上に来ていただければ、直接話せますよ?』
「しょうや……一つ聞きたいんだが、しょーやくんとやらは、粗蕋抄夜?」
『そうですけど……わからないまま首を突っ込んでいたんですか?バカですねー。』
「………いや、まあなんとなくはわかってたけどさ。ふーん……やっぱあいつなんだ。」
タロット遣い。
俺は別に関わったことがあるわけじゃないけど。
「あんたのこと、信用するわけじゃねえけど、用件だけ言ってくれよ。依頼じゃなくて、協力はしてやるよ。死色のためにな。なんちゃって、てね。」
電話の向こうで笑い声がする。
『では、情報をお渡します。抄夜さんは三階の教室にいます。腐臭がするのですぐわかると思いますが。』
「は?腐臭?」
何じゃそりゃ。
『ええ。抄夜さんが一人ばかり殺したのでこうなってます。』
「あいつが……人を?」
『抄夜さんだって人ぐらい殺しますよ。人間なんですから。』
あなた達と同じ、と紅咲は言った。
「……そうか。」と俺は少し低い声で呟いた。
あいつはそんなことしないと、思っていたけど。
『………ということで抄夜さんはカードを使ったせいで疲れてます。というか寝ています。』
「そりゃまた呑気だな。」
拐われたところで普通寝ないだろ。
もう全員殺しちゃえばいいのに。
『それでですね殺し屋の白陽陰名莉海君。あれ?今は依頼は受けてないんでしたっけ?』
「最近はね。特に今現在は受けてないってね。」
『しりません。依頼です。』
人の話聞けよ。
『勾柁新汰があなた達を探しています。邪魔なので殺してください。』
「新手かよ……。やだなあ俺。今すげえ家に帰りたいんだけど。シャワー浴びたいんだけど。」
『どうでもいいです。で、能力はですね、簡単に言っちゃうと風使いです。ざんねんでしたね。弱点は貴方だったらわかるでしょう……?今、二階にいますね……?』
どうやら有無を言わさずのようだった。
もういいや。どうにでもなれ。
『そこの角を曲がって、そこを真っ直ぐにいって――――』
言葉通りに道を進む。
『そこです!後は任せましたよ。―――貴方に最高の快楽と苦しみを。』
そこで通信は途切れた。
「おい死色。」
「う?」
「依頼承りました。ってね。」
「しーちゃんの依頼はうけたまわってくれなかったでしのに!」
「そうだな。まあ、ぺろぺろキャンディーアイスやるから許せ。」
死色は目を輝かせて頷いた。
「でしー!!」
まあ……。
覚えてたらの話だけど。
◇◆◇
「にゃ……?」
あれ?
寝てたんだっけ。
それにしちゃ眠りが浅かったような気がする。
そして、
「雅さんはなにやってんだこれ……。」
僕の隣で寝てやがる。
なにがあったら一緒に寝るはめになるんだよ。
「寝れば……ある程度回復するみたいかな……。」
カードを使うとものすごい勢いで疲労する。
疲労困憊って感じ。
普通に出来ないこと(回復とか。)使うとさらにやばい。
カードを使う人はみんなこうなのかな?
それともトレーニング?
昔、どでかいのを使ったときはぶっ倒れたような気がするし。
あまり使いたくないな。
「紐はあったって、べつに邪魔じゃないし。無駄に疲れるぐらいならとかない方がいいか。」
壁とかで擦りきるとか出来るかもしれないけど、僕はそれほど体力がない。
だったら無視していった方がいいな。
とりあえず、学校から出よう。
教師とか来て、僕のせいになったらめんどくさいし。(僕のせいなんだけど。)
「……あーあ。めんどくせー。」
ベッドから飛び降り、立ち上がる。
明日はまた、学校にいかなくちゃ。
「――雅さん、さようなら。」
短い間でしたが楽しくはなかったです。
また、どこかであえたら。
封磨君だったものをよけ、カードを机からとり、ドアからそとに出る。
廊下にはだれもいない。
「とりあえず、したに降りたら外に出れるだろ…。」
この学校の道なんて知らないけど、下に降りて、外に出れない建物何て知らない。
あったら無理。
とりあえず、下にいくっぽい階段を探して階段を使って下に降りていく。
先生が来なきゃいいけど…。
他校の制服だから怒られるに違いない。
いや、追い出される。
いや、何をしてたかきかれる。
なにをしていたんだ。ときかれたら、人殺しちった!なんていえないし、拐われてきたんだ!っていっても不審がられる。
「うーん。」
踊り場を曲がった。
「……?」
階段に座ってる一人の人がいる。
一般生徒だったらスルー。
敵だったら―――殺す。
「――――どっちでもなかったらどうするの?抄夜君。」
「………。」
体はこちらには向けないまま頭を逆さまにする形で後ろを見たのは、左右に赤と黒の所謂オッドアイの目をした、
「諸行雫……?」
「あれ?知っててくれたの?はじめてまして、狂ってる抄夜君。僕の名前は諸行雫。よろすく。」
「よろすく……?」
死神こと、雫君が通ってる学校なんだから雫君がいるのもおかしくないけど、なんで僕の名前を知ってるんだ?
しかも、前に見たときはオッドアイじゃなくて両目が黒かったような。
「こっち側の人間になったっぽいね。……うーん。隣座る?」
「いや……いいです。」
「じゃあ肩車する?」
「はい?」
肩車?
「いや、冗談。…だけどさ、この状態じゃ話にくいっていうか、頭に血がのぼるっていうか。」
「じゃあ、下いきます。」
とんとんと下に降り、雫君の下で座る。(体育会座り。)
「警戒はそこまでしないんだね。…まぁ知ってたけど。」
「……雫君とは話してみたいって思ってたからさ。」
「あ。そうなの?」
「うん。」
「へーそうなんだ。それにしても、大変だったね。お疲れ様様。阿立さんに拐われたんだっけ?おつかれ。」
「……はあ…。」
なんで知ってるんだ?
「なんでもしってる雫君だからね。歌乾封磨を殺したのも知ってるし、歌乾湖が名莉海君に殺されたのも知ってる。後は、蜜柑さんが逃げたのも知ってるし、今起きてる戦いも知ってる。君が知らないことを全部知ってるよ。」
「……?名莉海…君?」
「名莉海っていう人はね、死色って人と君を助けに来てるよ。」
「助けに?」
「うん。」
黒闇陽死色が助けに来てるのは本当だったか……。
それに名莉海君も来てるっぽいし……。
なら、合流した方がいいのか?
「……僕が、殺したの知っててよく近寄りますね。」
「ん?」
雫君は首を傾げる。
「なんで?一人じゃん。」
「僕だったら一人でも殺した人には近づきたくない……かな。」
それに、一人じゃない。
もっといっぱい殺してる。
「じゃあ、ぼくに近寄らない方がいいよ。何人殺ったか覚えてないから。」
ひらひらーと笑顔で手をふる雫。
「よく、警察におわれないね……。」
「警察?あぁ、警察か。おわれないよ。国に頼まれてやってるんだから。極悪人退治だからね。……あ。抄夜君は殺さないよっていうかぼくじゃ抄夜君に勝てないよ。」
暁人ならやれるかもだけど。という。
「それに、タロットカード遣いなんて珍しいもの殺さないよ。」
「はあ……。」
珍しいのか?
そこまでいうほど珍しくないと思うけど。
意外に結構いたり。
しないか。
「友達になろ。抄夜君。」
「え?」
「友達になろう。抄夜君。」
「はい?」
「友達になろう。粗蕋抄夜君。」
「え、はい?」
「友達になりませんか?粗蕋抄夜君。」
「……………?」
「お友達になりませんか?粗蕋抄夜君。」
「あ。はい。」
五回目にしてやっと理解した。
「軽いっ。……まあいいや。ケータイは、あぁ抄夜君燃やしたんだっけ。」
「あ。」
やば。
ケータイ再起不能じゃんか。
「じゃあさ、今度会いに行く。おけ?」
「おけ。」
「じゃあ、ぼくも愁ちゃんから逃げなきゃいけないから、一先ずばいばいしよう。……えっと、名莉海君は二階の右側の教室の前にいるよ。」
「教室の前?」
「空って人の命令っぽい。あの人は偽者だね。なんにも知らないのに知ってるふりをしてる人。なんか、嫌いだな。」
といって、遠くを見る雫君。
「じゃあ、ぼくそろそろ逃げないとマジギレ愁ちゃんがやってくるよ。」
雫君は立ち上がる。
そして、階段を上に上がる。
「じゃあ、ばいばいっ!」
「ばいばい?」
一応手を振ってみる。
それをみて、雫君は満足そうに笑って階段をのぼっていった。
「………………本当の意味でポーカーフェイスっていうのかな………あーゆーの。」
絶対作り笑顔だった。
しかも、手馴れてる。
「…それに、なんであの人スカートだったんだ?」
絶対男なのにスカートはいてた。
女装趣味とかなのかなぁ。
それとも愁って子か暁人って子にいじめられてるのかな。
なんかこわい。
「僕は、名莉海君と死色にあった方がいい感じか。」
なら、雫君のいう通り進もう。
また、いつか会いに行にきたら来たらで、そのとき考えよう。
できればなかよく。
できれば。
あくまでも出来れば。
二階に降り、右側をむく。
ちょっと隠れぎみで。
「名莉海君……と死色と…………だれ?」
三人でなんか話してる?
◇◇◇
「あんたが新汰?」
俺は目の前にいる少年に訊く。
「そーだよん。あんた名莉海くんでしょ?白陽陰名莉海くん。白黒戦争っていう戦争の生き残り?勝者?ウィナー?ウィンナーかなあ?」
何だこいつ、めんどくさいな。
「ちょっとした依頼を受けちまったんだよ、俺。」
「ふうん、依頼ね。例えば僕らを殺すとか?」
僕……ら?
複数いるのか?いや、まさか。
新汰の近くに他の気配は特にない。
歌乾のように影に何かいるってわけでもなさそうだし。
ただの一人称?
「あれ?黙っちゃって。図星?」
「まあね。ってことで、殺していい?」
「え、うーん。確かに人生には飽きてきてるけど、死ぬのは嫌かな?」
「抵抗しなかったら楽に殺してあげるよ。」
「嫌かな?」
「しーちゃんも殺してあげるでしよ!」
「嫌かな?」
「しーちゃんが殺してあげるでしよぅ!」
「……話通じてるかな?」
笑って首を傾げる新汰。
先ほどから語尾にずっと?がついている。
口癖なのかな。
俺は弓を構えた。
「嫌だって言ってんのにな?」
「俺だって別に、殺したいとは思わないんだけどね。でもほら、依頼だからさ、仕方ないんだってね。」
「そっかー仕方ないんだ?」
言って、新汰は両手をあげる。
「フェアに行こうぜ名莉海くん。お互いの技をバラす。」
ここで相手に訊かないんだな。
普通ここは質問だぜ、新汰。
「僕らの能力は、空気を操ることさ。空砲に出来たり、風を起こしたりできるんだよ。褒めて?」
「ふーん、ご立派だな。ってね。」
「フェアに行こうぜ名莉海君。」
これは俺も言うべきらしい。
このまま戦いに発展させちゃダメなの?
―――そっか。
「俺は別に、能力っていう特別なものは皆無。皆まで無し。終わり。」
「駄目駄目。アンフェアだよ?」
「本当のこと言っただけだ。」
「………………?」
「何だよ。」
じっと、俺のことを見る新汰。
この様子だと、隠してるのバレてるな。
嫌だなあ、海神。
妹……名木風にも隠してたのに。ここでバレるか。
「俺は、なんつーか……頭がいいんだわ。」
「……それだけ?なわけないよね?」
やっぱ言わなきゃ駄目?
「―――答えわかっちゃうんだわ。」
「へえ。興味深いね?ちなみに今はどう?」
「さあてね。そいつは教えられない。」
勝敗の答えを見つけても、それは俺対新汰。
つまりは俺だけ。
死色のことはカウントされてないわけで、答えは不明。
おーけいおーけい。
俺対新汰は引き分けもしくは俺の負け。
俺、死色対新汰は不明。
「死色も自己紹介しとけー。」
言うと彼女はでしっ!と頷いた。
「黒闇陽死色!黒闇陽のアイドルでし!とくぎ?と、釘は上に七メートル飛べることでし!」
「………………」
初耳だよ!
俺より高いぜ!?お前人間か!?
「横には三メートル跳べるでし!」
「なんで半分以下に下がってるんだよ!!」
「うぇ?」
しまった。突っ込みをしてしまった。
恐るべし死色。
いや、でも七メートルが三メートルになるのは何でだ?あれか?横に跳ぼうとしても、上に跳んじゃうってこと?
意味わからねえよ。
「……まあいいや。とにかくこれでフェアだろ?新汰くんよぉ。」
「そうだね?ま、いいか。死色って子の技は意味わからないけどね?」
「それは俺にもわからねぇけどな。」
とにかく。
俺は再び弓を構える。死色は剣を。
「任務開始ってね!」
言って、俺は矢を放つ。
が、新汰の技だろう、空気を操るという能力によって敢え無く矢は床に落ちた。
「でっっっし!!」
新汰の後ろからいつの間にやら、死色が剣を振り上げた姿勢で空中に浮いている。
「あぶ、ない?」
危ないと言いつつ、ひらりと余裕綽々でかわしている。
俺も休まずに矢を放っているが、死色の攻撃をかわしつつ空気を操っているから一向に当たらなくて面倒だ。
「ナイフのがいいのか?」
呟く。
弓を打ちながら考えるの苦手なんだけどなあ……。
「……なに?ぶれてるよ?」
「うっせーってね。」
案の定、狙いが定まらずにぶれる。
何か今回、弓の出番少なくねえか?
「―――ったく。俺は弓使いだっての。」
弓使わせろよな……。
空気操作とか、きつすぎ。
「だあああっ!しーちゃん特製っ!ぐぅうるぐるマシィイイイイイイイイィィィィイイイイイイイイイインッッ!!!!!」
うるさいほどの技名(?)を叫びながら、剣を振り回している死色。
「ちょ、うるさいよぉ?」
眉をしかめながら攻撃を避けている新汰。
―――っていうか、新汰の武器ってなんなんだ?
出してなくないか?
「完全に舐められてるってか。」
はは、笑わせるぜ。
黒闇陽殺戮衆に勝った白陽陰名莉海くんがここまで舐められたこと、かつてあったか?
「ないよなぁ。まったく、イラつくぜ。」
最後に弓を引いて放った。
すると意外なことに。
「おわわわっ!?」
新汰は慌てて、身を翻し、間一髪でかわした。
「あ?」
何で今更?
矢を引く手が止まる。
「なぁあああに呆けているでしぃぃかぁああ!?」
「た、タンマタンマっ!?」
死色はまだぐるぐると回っている。
「おい死色!あと何回回れる!?」
「あとあとあとあとっ!三百回はいけるでしぃぃぃいい!!」
三百回とかお前、三半規管どうなってるんだと言いたいところだが、今回は無視だ。
「あーっもうっ!」
耐えかねたように、新汰が叫び、死色の後ろから―――回っているので後ろなのかはわからないが―――鎌が飛んできた。
空気操作で、飛ばしてきたのだろう。
死色も気づいたのか、しゃがみながら回る。
避けることはできたが、鎌は新汰の手に渡った。
「へえ、鎌ね……ってね。」
そりゃまた面白い武器だ。
それに、何となく弱点も見つけたし。
後半戦ってとこか。
「……てい!」
新汰が死色に鎌を振り下ろす。
「ぽぅぇええっ!!」
バランスを崩して、回るのをやめる死色。
「ちょ、耐えろよ!」
言いつつ、ナイフを構えて新汰に突撃する。
「あ?へ?ふーん?ナイフも使えるんだ?」
「いちおーってね。得意じゃあないがな。」
「ふーーん?」
ナイフをどれだけ振っても新汰には鎌で防がれるし、こっちも攻撃をナイフで防ぐ。
「ねえ、勝敗わかった?」
攻防を繰り返しているとき、新汰が俺に問いかける。
「―――まあね。」
「へーそりゃまた……」
「隙ありぃぃぃぃいっでしよっ!?」
気を抜いていたのか、忘れていたのかは知らないが、新汰は死色の攻撃を避けられなかった。
「……いっったい!?」
新汰の片腕が切り落とされる。
「こっちもいるよん。」
俺は左足を断つ……まではさすがにいかなかったが、致命的なダメージを与えることはできた。
「ずるいずるいずるい!!多勢に無勢!卑怯者っ!」
痛みのせいでか、新汰は泣きながら訴え、床に座り込む。立てないようだ。
「知らねーよ。だってそういう任務……いや、依頼か。依頼だからさあ……。」
完遂しないといけないじゃん?
どんな手を使っても?
「死色、今度はちゃんとやれよー。ってね。」
「うーーい。」
にやにやと嗤いながら、死色は、立てない新汰に剣をあげる。
「ちょっ!?えっ!ごめんなさい!許して許して殺さないで!?」
「「無理。」」
俺と死色は言った。
瞬間、死色によって、新汰は人間からモノに変わった。
「いぇーい、任務完了。」
「依頼でしよぉ?」
「あー、そうだった。依頼完了ーっ。」
「いぇぇええい!」
結局見つけた弱点は無駄になったな。
ま、いいや。万事解決。
はっぴーはっぴー。
「んじゃあ死色、しょーやくんを助けに行こうか。」
「名莉海くんが行くなら地獄でも大地獄でもついていくでしっ!!」
はいはい、と俺らは血塗れになった廊下を通り過ぎ、三階に向かうために階段に向かった。
◇◆◇
「あ。」
名莉海君と服装が変わっている死色が角を曲がって来て、目があった。
二人とも血だらけの癖に怪我はしていないっぽい。
「………。」
僕は、三人が戦い始めたので見つからないように壁にくっつきながら考え事をしていた。
そうしたら、いつのまにか戦いがおわってたらしい。
「あぁぁぁああああ!………えっとでし、ナスビさんじゃなくてでし…田中さんじゃなくてでし、あ。ペロペロキャンディーアイス?」
「いや、抄夜くんだろ。」
「抄夜くぅん?だれでしかぁ?ナスビさんのお友だ………抄夜君!抄夜でしね!探したでしよ!ずっっとしーたんは抄夜君の事で頭がいっぱいうえおあだったんでしよっ!」
なにもいうまい。
きっと探してたんだよ。名前は忘れてたけど。
いやあ、助かるなぁ。
別に一人でも逃げれてたなんていわないよ。
「はひっ!でしでしぃー。」
「?」
突然死色は角を曲がり走っていく。
「たぶん『忘れ物したでし。』って言ったんだと思う。ってね。」
「へぇ。」
よくわかるな。でしでし。しか言ってないのに。
死色は飛び散った血の上をぺちゃぺちゃ走って何かを拾い上げる。
鎌。
戦いは一切みていないけど、死色は剣だし、名莉海君が自分の武器を忘れることはないと思うから敵の武器なんだと思う。
「一応…………はじめましてかな。名莉海君。」
「あー。クラス違うし話したこと無かったな。」
「うん。たぶん。」
「ま、初めましてじゃないだろ。隣のクラスだし。こんにちは抄夜君。じゃねーか?」
「こんにちはっていう状況じゃないけどね。」
「まぁ……ね。」
こうみると名莉海君って背が高いなぁ。
弓道やってる人って背が高いほうがいいのかな。
………いや、僕の背が低いだけか。
「この学校、先生いるんだよね。」
「そりゃ学校だからな。」
「じゃあ、すぐ逃げなきゃやばいね。」
刑務所に……いや、少年院につれていかれる。
親戚の皆さんにさらに迷惑をかけてしまう。
両親死亡、息子少年院。
どんな荒れた家庭だ。
三人か………正門から逃げたらヤバイかなぁ。
裏門か………もしくは空から?
いや、地底から。
わけがわからない。
「ていっ!」
「え!?」
名莉海君はどこから取り出したんだか知らないけどナイフで僕の手、否、僕の手を縛っていた紐を切った。
あー縛られてたんだっけ。
余りにどうでもいいことだから忘れてた。
ナイフを持っていることと、一瞬で紐を切ったということは、死色のいう通り殺し屋とかなんだろうな。
「ありがと。」
僕はお辞儀をする。
「どーいたしまして。」
名莉海もお辞儀をする。
名莉海がお辞儀をしても、名莉海君の方が背がたかい。
……………背が伸びる薬買ってこようかな。
「あれ、死色は?」
壁から覗くと、死色は血の上を頭を使ってスピンしていた。
鎌と剣は足に挟んでいる。
のたうち回ってるようにしか見えない。
「スゥウウゥゥウウピィィイイイイイイィンゥゥゥゥウウウでしぃいぃぃいいい!」
いや、頭血だらけだって。
乾いたらどうするんだよ。
「…………。」
「どうすれば……。」
「放っておけば来るんじゃねーかなってね。どうせ、血で転んだからそのまままわってるだけだと思う。」
どんな思考回路だよ。
「死色、禿げるよ。」
「……それは困るな。」
「でしょ。」
「いざというときは鬘をかぶれば……。」
「戦ってるときにとれるに一票。」
「だな。……死色ー!」
名莉海君が呼ぶと死色はピタリと止まる。
頭で。
逆さで頭で全体重を支えている。
「なんでしかぁ?名莉海君ー。」
「帰るってね。」
「えぇぇえええ!もーでしか!?暇でしからもっと殺したいでしぃ!」
「いや、抄夜君に迷惑かかるだろ。」
「抄夜君とかどーでもいいでしよぉ。だれでしかぁそれ。」
「…………。」
名莉海君は無言で死色に手に持っていたナイフを投擲した。
「むにぃ!なにごとでしか!?名莉海君がしーちゃんに武器を投げるなんて一年ぶりでしよ!」
一年前にあったんだ。
というか、死色が一年前のこと覚えてる。
「しょーがないでしねぇ、帰りましよ!」
死色はくるくると回転して頭を上にあげ、足で着地する。
そして、とててーと走ってくる。
右手に剣。左手に鎌。
余計に人前に出れなくなった死色であった。
「で、どーすんの?」
「んー。どうしよう。」
正門から出るにしろ、裏門から出るにしろ、職員室の前は絶対通る。
地底には潜れない。
飛ぶ……。
「いや、」
最後だからしっかりと正門からでよう。
飛んで帰るのもカッコ悪いし。しまらない。
「正門から出る。」
「りょーかーい。」
「でし!」




