終章
◆◇◆
「うえっ、まだ生きてるんですか。」
ガラララと雅がいつも使っている教室を開けると、雅がベッドのうえに座っていた。
雅が粗蕋抄夜に勝てるわけはないから粗蕋抄夜が雅を殺していかなかったのだろう。
心底残念に思う。
「お元気でしたか、空。」
「そんなに馴れ馴れしく呼ばないで欲しいです。私にとって貴方はもう死んでいるものだと思っていますから。」
「……縁を切っていますからね。私たちは。」
「久しぶりに死にズラを拝んでやろうと思っていたのですが、どうやら無理そうですね。兄貴。」
「兄貴……ですか。兄貴なら、おにいちゃんとかと呼べばよろしいのに……。」
雅…………紅咲雅。
忌々しい。
なぜ、こんな無能なやつらの中に私は生まれてしまったのか。
「粗蕋抄夜は正門から逃げるというわけがわからない行動をしています。」
「ふふ………そうですか。」
「教師たちは諸行愁と雫が適当に押さえているらしいです。」
さっき、諸行愁から連絡が入った。
いつも落ち着いている諸行愁にしては珍しくキレている様な声だったが。
「で、死に損ないの兄貴はどうするんですか?私としては消えてもらいたいのですけど。」
「………蜜柑は?」
雅は私が左手に持っている刀を見ながらきいてきた。
「勿論逃げましたよ。ざまぁみろですね。無理ですよ無理無理。蜜柑さんには思い人がいますもん。それも一生叶わない。」
「そうですか。私は彼女の居場所にはなれなかったんですね。」
「勿論です。なんたって無能ですから。」
私と同じ。
「……………。」
窓側によって、外をみる。
そろそろ、粗蕋抄夜達が正門の近くにいてもおかしくない。
一応、私には見届ける責任があるはず。
「…………あれですかね。」
突然隣にいた雅がそういった。
雅の視線を追うと三人が歩いているのが見える。
右から白陽陰名莉海、黒闇陽死色、粗蕋抄夜。
黒闇陽死色らしきものがかぶっているパーカーは粗蕋抄夜の物だろう。
黒闇陽死色についた血を気にしているんだろうか。
未だに他人の目を気にしているのか?粗蕋抄夜は。
「手遅れですのに。」
「いいんじゃないですか。そういう生き方も。」
「わかりませんね。そういう訳がわからないことは。」
あんな狂っているのに常人の振りをするのは疲れないのだろうか。
「そういえば、私はともかく兄貴の作戦がここまで失敗するのは珍しいですね。」
「空の性じゃないですか?」
「は?」
「ふふ――――。空はどうするんですかこのあと。」
「………私は、いつも通り逃げますよ。いつもと違うのは兄貴と逃げることです。」
「私と?」
「これ以上身内が恥さらしになるのは嫌ですからね。」
雅の目を見ないようにしていう。
「そうですか。心配ありがとうございます。」
雅は笑った。
「な……。私は身内恥が嫌だといっただけです。」
「可愛いですね。空は。」
「…チッ」
何をいっても無駄そうだ。やっぱり一人で逃げようかな。
こんな人嫌いだし。
「抄夜君は何をしているのでしょうか。」
「知りませんよ。」
粗蕋抄夜は正門を出たところで立ち止まっている。
何か考えているのだろうか。
◇◆◇
正門を出たところで立ち止まる。
「どーしたんでしかぁ?」
「うん……。」
だぼだぼのパーカーを着た死色が質問してきたけど、適当に流す。
「わすれものでし?」
「違うかな。」
「むにゅう?」
今なら、この学校であったことをなかったことにできる。
No.0のjoker。
なかったことにするカード。
全ての有を無にする。
「………。」
偶然人がいて、偶然殺して、偶然そこに両親がいたときはそのjokerの使い方を知らなかった。
数ヵ月後に使ってみたが効果なし。
捜査をなかったことにする。しかできなかった。
だから、使うなら早めに。
ここであったできごとや、ここで会った人、ここで死んだ人がなかったことにできる。
あったできごとはなかったことになり、ここで会った人は忘れる、ここで死んだ人は生まれていなかったことになる。
「やめとこ。」
「むにぃ?」
有を無かえるのは駄目だ。
忘れたいこともあるけど忘れたくないこと、忘れちゃいけないことがある。
それに僕が人を殺したという事実は裏返らない。
例え忘れていてもこの体は覚えているんだから。
「ね。」
「はひ?」
「ここであった出来事をなかったことに出来るとしたら、二人はなかったことにしたい?」
「ん?」
「むにゅ?」
二人は質問の意味がわからないというように首を傾げる。
「俺は――」と首を傾げたまま名莉海君は言う。「なかったことにはしたくないかな。それに、なかったことにしたら人生進めないってね。」
「名莉海君がいうならしーたんもそぉおーでし!ねー名莉海君!」
「そーだな。」
そうきいて、僕は微笑する。
「はは………そういうと思ってた。」
「なんだよ、俺は単純思考ってことかよ。」
「違う違う。」
なんていうか、安心した。
殺し屋さんでも、狂人でも考えは一緒なんだって。
なんか、やっていける気がしてきた。
「名莉海君!死色!――――友達になってください!」
「は?」
「ふゅ?」
訝し気な目で二人は僕を見てくる。
「何いってるでしかぁ?」
「もう、友達じゃねーの?俺ら。」
「でしっ!ふひひっ!」
「…………。あう……。」
嬉しすぎて泣きそう。
友達なんかめんどくさいから作らないって決めてたのに。
こんなに嬉しくなるとは…。
「ケータイは?」
「…………燃やしちゃった。」
「どこに燃やす要素があったんだ……?」
「色々とね。」
「ふーん。ってね。じゃ、ケータイ買ったら教えてくれよ。」
「勿論。」
名莉海君は死色の方を向く。
「死色のも教えていいだろ?」
「いいでしよぉ?ただししーちゃんのが壊れてなかったらでしけど。ふひひひぃ!」
「………。そうか。」
ケータイってそう簡単に壊れないと思うんだけど。(燃やした僕がいうのはおかしい?)
「そっれにしてもペロペロなんとかかんとーかキャンディーアイスはまだでしか!?」
「そんな約束してねーよってね。」
「そうでしっけ?おかしいでしねぇ。」
「おかしいおかしい。元からおかしいから大丈夫だよ。死色。」
「ふひひひひ!そうでしか!?嬉しいでし!照れちゃうでし!」
喜ぶ要素がどこにあったんだろう。
不思議だなぁ。
「はは……ははは。」
こんなに笑えるから僕はまだ大丈夫。
狂ってなんかいない。
明日も明後日もこの二人がいればやっていける気がする。
決して楽しくはない毎日かもしれないけど未来はある。
学校に行って授業を受けて帰る。
そんな日常の断片に名莉海君と死色がいれば楽しくなるに違いない。
「じゃあ、また明日。」って言える人がいるそれだけで嬉しい。
僕の罪は許されないし、なかったことにはできないけど。
そして一生、罪がばれることはないけれど。
彼らに、僕の友達の名莉海と死色には真実を伝えよう。そして最後に言っておこう。怒られても殺されても構わない。
『許してください』
joker isn't used by Syoya...
Good end and good-buy.
最後迄読んでいただきありがとうございました。
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