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竜王に育てられた俺・・・今、異世界の王女の召喚獣やってます!  作者: えみお
第1章:アリスとの出会い

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竜の顎

 俺と巨大虎が『決闘』するというセンセーショナルなニュースは、早朝から朝食までという非常に短い時間であっという間に城内に知れ渡った『らしい』。


『らしい』・・・としか言えないのは、その渦中の人物である俺はといえば、未だに狭い厩舎の中から無断で出ることを許されておらず、『決闘』直前にアリスと交わした会話でもって知ることになったからである。


 なんでも彼女の父親・・・即ち国王までもが国事を中断して見に来るというのだから、もはや兄弟同士の諍いというスケールには収まらない事態になってしまったのは間違いない。


(「まあ・・・あの馬鹿兄貴が次期国王の座を掛けちゃった時点で、只の喧嘩じゃ済まなくはなっちゃったから、当然と言えば当然なんだよな・・・」)


 2人の父親たる国王は、きっと遙か以前から自身の後継者のことについて色々考えを巡らせていたに違いない。


 そして、順当に行くなら長兄たるルーデルに自らの地位を譲ろうとする思いもあったはずだ・・・。


 そんな親心を蔑ろにした馬鹿息子が玉座を賭け事のチップの如く扱ってしまったが故に、流石の王も山積する仕事を放棄して『決闘』の結果を見届けざるをえなくなってしまったのだろう。


 本来なら只の兄妹同士の練習試合にも係わらず、いざ蓋を開ければ『決闘場(コロシアム)』と呼ばれる円形のステージ・・・それをグルリと囲む客席は満員御礼状態になっていた!


「おお!凄い数の人だな!」


 アリスと共にコロシアムの中心近くに立ち周囲を見回した俺は、その人の数に圧倒される。

(「『謁見の間』にいたのがこの城に住む全員じゃなかったんだな!」)


「・・・あそこにいたのは王族と衛兵くらいだ。今ここには王宮で働くあらゆる者達が仕事の手を休めてやって来ているからな。あの時の10倍くらいはいるはずだ」


 戦いの場独特の空気に当てられ俄然テンションが高ぶっている俺だったのだが、その一方で主たるアリスの表情が浮かない。


 どうやら不安を抱えているらしい彼女を元気づけるべく、俺は声を掛けた。


「アリス・・・大丈夫だ。俺は負けない」


「トール・・・だがお前は彼のことを・・・あの『猛虎』のことを何も知らないだろ」


「『猛虎』?」


「ルーデル兄様の召喚獣の名称だ。単体の攻撃力なら生半可な相手を一撃で葬るだけの力があるのは勿論、堅い毛並みに覆われた皮膚は生半可な刀剣じゃ傷1つ付けられない。『第6階級』に相当する召喚獣の中でも特段戦闘向きなヤツなんだ、あれは・・・」


 階級だとかはイマイチよく分からなかったが、彼女の内心は読み取れた。


 どうやらアリスはすっかり怖じ気づいてしまっているようだ。


「・・・恐いか?」


 俺は彼女の手を握る。


 昨日の『召喚の儀』では断られた故、また断られるのではと一瞬考えてしまった俺。


 しかし、隣の少女に触れた瞬間、その心配は杞憂だと気付く。


(「・・・よっぽど不安なんだな」)


 初めて触れたアリスの手は氷のように冷え切っていた。


「・・・ああ。恐い」


「一体何がそんなに恐いんだ?ルールはさっき聞いたけど、アリスに危険が及ぶことはないじゃないか?」


 仮にこれが『決闘』とかいうお遊びではなく、『戦』だというのであれば話は変わってくるだろう。


 もしここが戦場であり、ルールや矜持なんてものに二束三文の価値すら無いのであれば、戦闘力が高く奇っ怪な能力を持っているかもしれない『召喚獣』を無視して『主(あるじ)』の方を狙うことこそセオリーだからだ。


 だがこの『決闘』はあくまで互いの召喚獣の武勇を決する為のもの。故に召喚主たるアリスが傷を負う可能性など万に一つも無い。


 にも拘わらず、彼女の指先の冷たさはといえば、まるで自らが初めての戦に赴くかのようで・・・


 俺は何が彼女をそこまで不安にさせているのか気になった。


「まあ、万が一・・・いや億が一にでも俺が死んでここからいなくなるようなことがあったら、その時は新しい召喚獣を召喚するなりすればいい。そもそもお前が失うものは何も無い勝負じゃねえか?一体何がそんなに心配・・・」






「私は・・・お前に傷ついてほしくないんだ」






「なんだ・・・って、え?」


 自らの発言の最中、唐突に呟いた彼女の言葉を、俺は最初・・・聞き間違いかと思った。


 俺に・・・傷ついてほしくない?


 この・・・俺に?


「・・・トール、お前はやたらと自信満々だが、私は正直トールがアイツに勝てるとは思ってない」


「え?」


(「俺が・・・勝てない?」)


「『第6階級』の召喚獣なんてそうそうお目に掛かれるものじゃない。ヤツは危険なんだ!見ろ、あの爪と牙を!トールの実力がどんなものかは知らない。だが、もし一撃でも食らえば・・・お前は・・・」


「アリス・・・」


(「まさか俺が・・・この俺が、変則的とはいえ『戦い』で心配される時が来ようとは・・・」)


 向こうではおおよそされることがない扱いに対し俺は一瞬戸惑うも、よくよく考えればその心配は当然だと思った。


 アリスにとっての俺の認識・・・それはきっと今も変わらず『ハズレの召喚獣』なのだろう。

 鋭い爪も牙も無く・・・なんなら服さえ着ていなかった只の人間。


 ソイツが多少話せたからといって、人間であることが変わらない以上・・・戦闘力は推して知るべし。


 決して『ちゃんとした』召喚獣には勝てない。そう思っているに違いない。


(「なら・・・まずは『ご主人様』に信頼してもらうところからか」)


 俺は彼女の手を今度は両手でギュッと握ると、少しかがんで目を合わす。


 そして、もはや恒例ともいえる潤んだ瞳を真っ直ぐ見つめ、そして宣言した。






「アリス・・・俺は勝つから!傷一つ追うこと無く、一瞬で勝つから!だから見ててくれ!そして俺を信じてくれ!」






「トール・・・」


「両召喚獣・・・位置について下さい!」


 審判であろう男が指示を出す。


 俺は最後にアリスの頭をポンポンと叩きあやすような仕草をすると・・・


「・・・アッ」


 何処か名残惜しそうにする彼女を背に残し、指定された立ち位置に向かった。


 ルーデルの召喚獣『猛虎』も、その巨体を揺らしながらゆっくりと近付いてくる。


 互いが正規のポジションに着いた時点で両者の距離は10メルほど・・・。


 人間同士の戦いなら十分間合いがあるといえる間隔だが、きっとあの虎はこの程度の距離・・・一瞬で詰めてくるだろう。


(「正直・・・少し様子を見たかったんだけどな」)


 そして召喚獣とやらの情報を少しでも集積しておきたかった。


 だが・・・






(「今回は、アリス優先だ!」)






 俺は一撃必殺の構えをとる。


 右拳に自身の『力』を集中させると、その形をイメージ・・・。


 理想は『顎(アギト)』。どんな敵をも噛み砕く『龍の顎』。


「クハハハハハッ!なんだアイツは!いっちょ前に構えなぞ!」


 ルーデルの耳障りな高笑いが聞こえるも、周囲の喧噪にかき消されたソレは自身の集中を阻害するほどではなかった。


 大勢の観客が来てくれたことによる思わぬ副産物に誰とも無く感謝した俺は、ふとアリスの方を振り向く。


(「ああ、もう!」)


 あろうことか彼女は祈るように両手を組み、目を瞑っているではないか!


(「それじゃ見えないだろ!」)


「おい、アリス!」


「!」






「ちゃんと見てろ!お前の『召喚獣』の晴れ舞台を!お前の『願い』を!」






 彼女の目は開く!


 そして・・・数秒のち


「試合・・・開始!」


 審判の合図が響いた!


 勢いよく駆け出すべく、四足に力を込める『猛虎』。


 沸き立つ歓声!


「いけえっ!『猛虎』!ヤツを食い殺せ!」


 もはや本性をむき出しにしたルーデルの声。


 そして・・・






「トールッ!!!!」






 幼い少女の心からの叫び!


 俺はそれら全てを感じ取り・・・そして放った。






「『龍の顎』!」

 




 

 ここまで読んでいただきありがとうございます!

 これからも、鋭意作成し続けたいと思いますので、応援の程、宜しくお願いいたします!

 また、感想・レビュー・ブクマ・評価・コメントなどもらえると、作者は本当に喜びます!(ガチ!!!)

 ぜひ…清き一票を!!!

 

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