幕間:第2王女の覚悟
私・・・アリスがトールに自らの身体を差し出す選択をしたのは・・・きっと彼に『許して欲しかった』からなのだろう・・・。
縁もゆかりもないこの世界に唐突に呼び出し、馬小屋に閉じ込め、都合の良いときに利用し・・・そして、彼を故郷に還してやることすら出来ない。
(「そんな哀れな私が、何か少しでも彼に償えることがあるのなら・・・と考えた結果がコレとは、もはや姉を笑えないな」)
自身の美貌を思う存分に活かし、貴族の若い男達を食い散らかしていると噂の姉・・・。
そんな彼女のことを心中で馬鹿にしてきた私であったが、いざ男性に対して何か喜ぶようなことをしてやりたいと考えたときに真っ先に思いついたのが『夜這い』とは・・・我ながら情けない。
(「だが・・・トールは喜んでくれるのだろうか?」)
自身の部屋の近くに用意させた彼の私室、そこに向かう道中・・・ふとそんな思いに駆られた私は自らの身体を見下ろす。
・・・一応、周囲からは美辞麗句をふんだんに使われ褒められることの多い容姿ではあるが、所詮おべっかだと言われればそれまで・・・。
それに何より、トールがこの世界の住人と異なる嗜好の持ち主であることも十分に考えられる。
(「意を決して行ったというのに、もし、ポカンとした顔でもされたらどうする?」)
何となくありそうな結末を想起し、私の足は止まりかける。
だが・・・
(「いや・・・それでも、せめて私なりの誠意が伝われば・・・!」)
仮に・・・そう仮に!私の器量が彼のお気に召すものでなかったとしても、私の彼に対する感謝の気持ちが少しでも届けばそれで良い。
そう・・・たとえ、私が彼の好みでなかろうと・・・
「・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
(「・・・・・・・・・はっ!」)
自らの想像で気をそぞろにし、彼の部屋を通り過ぎては世話がない。
慌てて後退し、辿り着いた目的地・・・その扉の前で深呼吸を1つ・・・。
(「いてくれるだろうか・・・?いや、いないならいないでまた後日に・・・ハッ!?馬鹿な!また私は逃げだそうとしている!違うだろ!今日、トールに今日のことも含めて感謝の気持ちを伝えるのだろう!そして、出来るなら・・・出来ることなら・・・もう暫く私と共に!」)
逃げだそうとする自身の気持ちに活を入れ、私は自らを奮いたたる。
そして・・・意を決すると、いざ、目前の扉をノックしたのであった!
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