夜…アリスの訪問
「ふいぃ、食った食った!」
飛竜隊とワイバーンを捕縛し、連れ帰ったその日の夜・・・王城内で盛大な宴会が催されたのは、ある意味当然の流れだった。
「まあ、結果だけ見れば圧勝だったわけだからな」
なにせ、こちらからは死傷者1人出すことなく、マグリアの主力たる彼等を捕虜にすることが出来たのだ。
これで、近々行われることになるであろう和平交渉では、相手に対し一方的に要求をすることが可能になる。
きっと王様をはじめ官僚共は、今頃、笑いが止まらないことだろう。
「・・・俺としてはワイバーンそのものを何頭か譲って欲しいんだけどな」
そして、ワイバーンの生育技術を持つ者達・・・そして飛竜隊の兵も何人か引き抜き、サンセットの者達に彼等の持つ知見を広めることが出来れば、ここにも飛竜隊を組織することが可能となるだろう。
そうなれば、この国の危機は去り・・・俺がここにいる必要は無くなる。
そして・・・心置きなく俺は故郷へ還ることが出来る。
「・・・正直、アリスと会えなくなるのは辛いけどな」
誰よりもこの国の現状を憂い、誰よりもひたむきに努力する少女・・・。
そんな彼女と、もう少し共にいたいという気持ちが無いと言ったら嘘になる。
だが・・・故郷で俺を心配しているであろう幼なじみや仲間達、そして爺ちゃんの姿を思い起こす度、俺は胸をかきむしりたくなるような衝動に駆られるのだ。
「情けねえ話だが・・・きっと俺は寂しいんだ」
物心つく前に実の両親に捨てられ、何の因果か竜王たる爺ちゃんに拾われてからはずっと、あの山で暮らしてきた俺にとって、これだけ長い間、故郷の地を踏まないことなど人生で1度も無かった。
デカい図体をした男が何を言い出すんだと言われればそれまでだが・・・だとしてもこの気持ちに蓋をすることは出来そうに無い。
「アリスには悪いが、何とかお願いして元の世界に還してもらおう」
俺がそう決心する・・・と同時に、ドアをノックする音が響いた。
「ん、誰だ?」
「トール・・・私だ」
「アリスか?」
「ああ」
(「コレは丁度良いタイミングだ」)
行動は早いほうが良い。俺は「入って良いぞ」と彼女に入室を促す。
そして・・・開口一番、彼女に自分の気持ちを吐露しようとアリスに向き合うと・・・
「・・・えっ」
そこにいたアリスの表情は、並々ならぬ決意に満ちており・・・
そして、それゆえに一瞬怯んでしまった俺の隙を突き、勢いよく自らの胸に飛び込んできた彼女…
「トール・・・私を・・・私を抱いてくれ」
その第一声は、自身の即席の覚悟など、簡単に吹き飛ばしてしまうほどの威力を孕んでいたのであった!
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