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第14話 敗北の味

「結衣、時間が無い!あと30秒で見つからなかったらポインターまで誘導する!」


"分かってるわよ!もう!どこにいるの……っ!"


早くも試合は終盤を迎え、残り時間は10分を切っている。

しかし、未だに結衣は相手選手と接触できずにいた。

現在の得点は13―15で結衣が押されている。


「もうこれ以上は危険だ!ポインターに移動するぞ!」


"──っ!"


飛翔の誘導に従い、結衣がポインターの元へと全力疾走する。

一点、また一点と差を縮めていくが、三点分のリードはそう簡単には埋まらなかった。


ビーーー!!!!!


──結衣―奈央 15―16 奈央WIN


"はぁ……はぁ……"


得点板を見て立ち尽くす結衣。

彼女にとってこの試合は、あまりにも不完全燃焼だったことだろう。

事前のデータだと、相手は拠点、コア型であった。

それに加え、序盤点数の変動がなかったため、結衣は予定より早めに拠点へと向かった。

相手が本当にコア型なら、拠点を破壊したあとでも点数を稼げるだろうと考えたからである。

しかし実際は違った。

恐らく結衣の実力を知っているからだろう、あえて交戦を避けてきたのだ。

そのせいで結衣は相手を見つけられないまま点数をリードされ、取り返すことが出来ないまま試合は終了してしまった。

一度も相手に触れず、なんなら一度も出会わずに試合を終えたことを、結衣は不満に思っていることだろう。


「…………お疲れ様」


なんと声をかけたらいいのか分からず、言葉が続かない。

けど結衣は笑って、


「負けちゃった。惜しかったな〜」


と軽そうに受け流した。

だが本当はすごく落ち込んでいるに違いない。

それがわかるからこそ、飛翔は胸が苦しくなった。


「ほら、早くしないと蒼空の試合が始まっちゃうよ?まだ対戦相手のこと調べきれてないんでしょ?」


「あ、あぁ……」


そう言って結衣は何処かに去ってしまった。

飛翔はその背中を見つめるのことしか出来ない己の弱さを憎んだ。

もっといいやり方があったんじゃないか、もっと待ってよかったんじゃないか、反省点は考えれば考えるほど無限に溢れてくる。

悔しさでどうにかなりそうだった。

だが、今は落ち込んでる時じゃない。

まだ蒼空の試合があるのだ。

彼女の試合に、戦いに己の情を持ち込む訳には行かない。

飛翔は気持ちを入れ替えるために顔を水で洗い、蒼空たちが待つ待機場所に向かうのだった。



蒼空の4―25という大敗で、青藍高校の個人戦は幕を閉じた。

どんな結果だったとはいえ、蒼空は初めての大会でベスト16という偉業を成し遂げたのだ。

これには他校の生徒も驚きの声を上げていた。

それはID部の人達に限らず、一般の生徒たちにも……。


「蒼空さん、この前の試合見てたよ!本当に未経験者なの?!」

「ね!凄くカッコよかった!」


「あ、ありがとうございます……」


どうやら試合は某有名サイト内で配信されていたらしく、夏休み中でも部活のために学校に来ていたクラスメイトたちが蒼空の元へとやってきていた。


「蒼空ちゃん人気者だねー」


「今年の台風の目だったからな。そのせいで、団体戦にも影響が出そうだ」


蒼空は試合の中でクイックターンを使った。

それは全選手の前で配信されていたのだ。

当然初戦の相手である玉響高校がその試合を見逃すわけが無い。

恐らくこの一週間、蒼空の対策に力を入れてくることだろう。


「あれ、そういえば結衣は?」


「確かに……でもでも、私が部室に来る時すれ違ったよ?忘れ物取りに帰ったとかじゃない?」


「だとしても何も言わずに帰るか?なんか引っかかるって言うか……」


と、飛翔の目に一枚のプリントが映る。

それを手に取った瞬間、血の気が一気に引く感覚に襲われた。


「どうしたの飛翔?……ってこれ……っ?!」


その紙には結衣の時で、


"ID引退します。探さないでください"


そう書かれていた。





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