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第13話 蒼空 対 綺羅

「あー、あー、聞こえるか?」


"はい!聞こえてます!"


拠点に着いた蒼空は浮遊カメラ(ドローン)を起動し、試合開始を待つ。


「結衣はあんなこと言ってたが、気にせず蒼空らしい試合をしよう」


"分かりました!自分らしさを貫きます!"


「よし!」


『第2試合場、第16試合、試合を開始します』


ビーーー!!!!!


開始の合図が会場内に響き渡る。

と同時に、直前に打ち合わせした通りポインターを狙いに動き出す。


「よし、この位置なら回って拠点に帰って来れる!蒼空、ついてきてくれ!」


"はい!"


拠点から近いポインターは万が一に残し、少し離れたところを狙う。

運がいいことに、蒼空陣地のポインターは円を書くように点灯していた。

これなら相手がこちらの陣地に踏み入る際に、中央で鉢合わせることが出来る。


(それにもし交戦を避けて相手に拠点を破壊させたとしても、中央からなら相手の拠点を狙うことも出来る)


そうなった場合、やはり序盤の点数が重要になってくる。


「蒼空!ここを破壊したら次は左前に進むぞ!」


"はい!"


──蒼空ー綺羅 1ー0 残り27分35秒


"やりました!初得点です!"


そうか、蒼空は初戦不戦勝だったからこれが初めての得点なのか。

初めての得点獲得に本人の士気も上がっている。

だが、油断は禁物だ。


「さぁ気合いを引きしめていくぞ!」


また一点、また一点と蒼空は点数を稼いでいく。

もちろんその間、綺羅の点数が変動しないなんてことはなく点数の差はあまり開かなかった。


(やはり拠点やコアを攻撃しないと、点数に差が出ないな……)


そしてとうとう中央まで前進したその時だった。


「まて、今何か写った!音を殺して地面にしゃがめ!」


"は、はぃ"


飛翔は物陰にかくれながらカメラを移動させる。

何かが見えたその先には、やはり彼女がいた。


「……蒼空、向こう陣地のポインター横に人が立ってるの、見えるか」


"……見えました。もしかして、あそこに……"


「あぁ、綺羅がいる」


ついに交戦が始まるのだと、蒼空は緊張で冷や汗を流す。

幸い向こうは、こちらに気づいていないようだ。

中央の得点板には、「蒼空ー綺羅 4ー3 残り時間 18分24秒」と書かれている。


(今から交戦を開始して、果たして蒼空の体力は持つのか?この暑さ、今回が初めての夏になる蒼空にとってかなり厳しいものだ、できるだけ時間を稼ぎたい……)


こちらがリードしている以上、向こうは動かざるを得ない。

だが綺羅は、こちらの陣地を警戒するようにポインターの傍から離れようとはしなかった。


"私、どうすればいいですか?仕掛けないんですか?"


「……向こうが動くのを待とう。このままじっとそこで待つんだ」


"分かりました"


頼むから動かないでくれ、と飛翔は願う。

だがその願いは、やばくも破れることになる。


「蒼空、カメラがこっちに向かってきてる。少し移動できるか?」


"やってみます……っ"


蒼空はほふく前進の容量で位置を移動する。

が、


"(パキッ)"


「あっ……」


"あっ……"


木の枝が折れた音が、膠着していた静かなフィールドに響き渡る。

もう、隠れるのは無理だろう。


(くそっ、こっちから仕掛けられるチャンスだったが、あまりにも早すぎた……っ)


ポインターが固まっている。

それ故に中央に来るのが早すぎたのだ。


(残り時間は……っ、あと15分もあるのか……っ!)


だが仕方ない、やるしかないのだ。

今から見逃してくれるほど、簡単な相手じゃない。


「蒼空、とにかく開けた場所まで誘導するんだ!クイックターンを生かすには、ここじゃ狭すぎる!」


"わ、分かりました!"


「俺に着いてきてくれ!」


飛翔の合図とともに、隠れていた蒼空が姿を現す。

この一瞬の間に、かなりの距離を詰められている。


「苦しいと思うが頑張れ!あと少しだ!」


飛翔はひたすら蒼空を鼓舞し続けた。

何とか開けたの場所まで誘導することに成功し、蒼空は振り返る。

が、綺羅はもう目の前まで迫ってきていた。


"きゃっ、危ない……っ!"


『お、よく防いだね』


イヤホン越しに、綺羅の声が聞こえる。

綺羅の不意打ちとも取れる一撃を、よく防いだと思う。


「蒼空、いいか!試合時間はもう15分を切ってる!ここから先、何があっても背中は見せるな!」


もうこれ以上危険なことはさせられない。

今あるリードを守り続ける、それだけだ。


「もう無理に点数は稼ごうとしなくていい!ひたすら守り続けろ!」


"はぁ、はぁ……分かりました!"


息が切れている、先程まで走っていたのだから当たり前だ。


(この暑さにこの疲労、どこまでもつか……っ)


次から次へと飛びくる斬撃。

それを全て受け流し、蒼空は耐え続けた。


だが、限界はそう遠くなかった。


「蒼空!」


"だ、大丈夫です!"


蒼空はそう言うが、飛翔は見逃さなかった。

一瞬だが蒼空がふらついたように見えたのだ。


「蒼空、辛かったらリタイアしてもい──」


"嫌です!"


飛翔の声を遮るように、蒼空は叫ぶ。

そうは言うものの、これ以上は危険だ。

飛翔はコマンド席にあるリタイアボタンに手をかける。

だが、彼女の叫びを聞いたあとでどうしても押せなかった。


(プレイヤーに無理をさせるなんて、俺はコマンダー失格だな……)


「蒼空……」


"……っ、何ですか?"


飛翔は大きく息を吸い込む。

そして今までにない程の大きな声で叫んだ。


「残り5分、絶対に守りきるぞ!!!!!」


"……っ!!はい!!!!!"


もうあとには引けない、引きたくない。

最後の力をふりしぼり、蒼空は剣を振り続けた。


だが残り1分を切った時、全てが塗り替えられることになる。


(やはり無理があったか……っ!)


蒼空の体は、とっくに限界を迎えていた。


──蒼空ー綺羅 4ー6 残り時間0分38秒


一撃を受けてしまい、点数が逆転する。

残り時間はもう、1分を切っていた。

屍のようにふらつく蒼空に、綺羅は剣を構える。


「楽しかったよ、蒼空さん」


振り下ろされる一撃。

受け流す力は、もう残っていなかった。


"…………まだ、負けてません……"


「…………蒼空?」


蒼空は目をギラつかせ、綺羅を睨む。

その形相は、まるで鬼のようだった。


"うぉぉおおおお!!!"


「クイックターン……っ!」


蒼空は綺羅の攻撃をかわし、背後に潜り込む。

クイックターンは綺羅も想定外のようで、驚きを露わにする。

対戦経験がない初心者がクイックターンを使ってくるなど、誰が思うだろうか。


"これが私の──"


そして蒼空の剣先が綺羅のコアに触れる。

得点が動く、点数が逆転する。

誰も予想だにしない結末が、そこにあった。


"戦い方だあー!!!!!"


ビーーー!!!!!!


──蒼空ー綺羅 7ー6 蒼空WIN


「…………よく頑張ったな、蒼空」


"えへへ、もうへとへとです"


蒼空の初の大会は、鮮やかな勝利で幕を閉じた。


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