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怪奇異譚~KAIKI・ITANN~  作者: 荒野ヒロ


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25/29

見つかるのを待ちつづける

夏のホラー2021のために書きました。

読んでいるうちに「なんか変だな……」となることでしょう。わざとですよ~


リアルさよりも、少年の視点をぼかしてラストが意外な展開になるよう考えました。

 19○○年代の話。

 Y県にあるさびれた町にはだいぶ前に倒産し、打ち捨てられた廃工場がある。その工場跡地はかなり広大な敷地をもっていたが、いなか町の片すみにある土地を引き継いで産業をつづける会社は現れなかったようだ。

 そんな工場跡地を子供たちが利用しないはずはなかった。敷地を囲む高い金網のさくを乗り越えて遊びに来る子供たちは多く、敷地内の一画にある場所を利用してよく隠れんぼをして遊んでいた。


 その日も6人の男の子が集まって隠れんぼをしていた、夏の暑い日。雲一つない空の下で遊んでいた子供たちだったが、一人だけがいつまでも見つからなかったのだ。




 少年が隠れていた場所は工場の屋根の上。

 そこに行くには壁に取り付けられたパイプを伝って、屋根の手前まで伸びたパイプから屋根に手を伸ばさなくてはならない場所。

 そこに隠れることを思いついた少年は、誰にも見られずに屋根まで登るとトタン屋根の上に座り、疲れたのかそのまま凸凹でこぼこした屋根の上に寝ころんで眠ってしまったのだ。


 そうして目が覚めると少年は友だちを探した。

 屋根の上から下を見ていると、数名の大人たちが声を上げて少年の名前を呼んでいる。


いずみく──ん、杜家もりや泉く──ん」


 少年──泉くんは屋根の上に隠れたまま、屋根の中央で膝をかかえて座り込む。友だちは探しに来てくれないのだろうか、そんなふうに考えて彼はずっと膝をかかえたまま座り込んでしまう。

 空が夕焼けに染まり、やがて夜になった。

 空に月と星がまたたくと、少年は星空を見上げたままぼんやりと考える、が……何も思い浮かばない。自分がどうしてここにいるのかも、自分が誰だったのかも思い出せなくなっていた。


 来る日も来る日も、少年は空を見上げたり、工場の屋根から下を見下ろす。

 工場にはしばらく少年の友だちが姿を見せることはなかったが、2か月ほど経ったあと少年の友だちが廃工場にやって来たことがあった。

 少年は隠れていた屋根から姿を見せて友だちに向かって手を振るが、誰も彼がそこにいることに気がつかない。大きな声で友だちを呼んでも、誰の耳にも少年の声が聞こえていないみたいだ。


 5人の友だちはなぜか隠れんぼも鬼ごっこもしないで、離れた場所にあるベンチなどが置かれた場所で話し合っていたが、すぐに少年を置いて帰ろうとする。

 泉少年は工場の屋根から叫びつづけていた、屋根のすみに立ち両手を大きく振って友だちに呼びかける。何度も何度も、あきらめずに声を出しつづけたが、友だちは振り返ることもなく帰って行ってしまう。


 孤独になった少年はさびしさに包まれ、屋根のすみに腰かけると誰かが来るのをその場で待ちつづけた。




 それから半年ほどすると、見知らぬ少年少女が廃工場にやって来た。見覚えのない子供たちはやはり屋根の上にいる少年には気づかずに、工場内を探検したり、鬼ごっこをしたりして遊んでいるが、どういうわけか隠れんぼをしようとはしない。

 少年が屋根から声をかけても、彼らにはやはり聞こえないようだった。




 やがて数年が過ぎ去った。

 少年はまだ屋根の上に膝をかかえて座り込んでいる。


 その間もたびたび工場跡地に入り込んでくる子供たちがいたが、泉少年はただ黙って屋根のすみに腰かけたまま、彼らの様子をぼんやりと見つめるだけになった。


 ある日、敷地のまわりを巡察していた警察官が、工場跡地の敷地内に入り込もうとしている少年や少女を補導した。

「こらっ、君たち、ここは危険だから入ってはいけないぞ」

 少年少女は登ろうとしていた金網から降りて「ごめんなさい」と慌てて口にする。

 警察官は封鎖された入り口横の金網にかけられた掲示板のような板を指さして、そこに書かれていることを読み上げた。

「敷地内には無断で入らないでください。そう書いてあるだろう」

 警察官が読み上げたそのプレートの横には古びた紙が貼られている。

 汚れた透明なプラスチック製の掲示板の中にある1枚の紙にはこう書かれていた。


「 199○年 ○月 ○日


 A市に住む杜家もりやいずみくん(11)が友だちとかくれんぼをしているさいちゅうに、ゆくえがわからなくなりました。しきちないには入らないでください」

 そんな貼り紙だった。




 2000年になると、廃工場のある敷地はやっと県外の大企業に買い取られ、新たな工場が作られることが決定した。

 取り壊し作業がはじまると、工場の屋根の上から少年の物と思われる白骨化した遺体が発見された。

 それは風雨にさらされて屋根のあちこちに散らばっていたが、DNA鑑定の結果、その骨は杜家泉くんの遺体であることが認められた。

ぶっちゃけ昨日寝る前に考えたプロットを1時間くらいで仕上げた感じです。

シンプルかつホラーものの違和感みたいなものを読み取ってもらえたら嬉しいです。上手く書けたかは……う──ん、練り上げが足りないかもしれませんが。


なぜ少年が屋根の上に取り残されたのか。それは熱中症で倒れ、そのまま死んでしまったから。

屋根にすぎない場所で、屋上ではなかったために、放置されたままになってしまった…というわけです。

ミステリの「叙述トリック」みたいなのを感じてもらえれば嬉しいです。読んでるうちに「あれっ?」となったらいいなぁ。

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