表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪奇異譚~KAIKI・ITANN~  作者: 荒野ヒロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/29

オンライン中継に映った「何か」

青木ヶ原樹海で中継できるのか、その辺がネックなお話(笑)

 僕はパソコンの電源を入れると、いつも某画像投稿サイトを見ている。親からは「そんなものばかり見ていないで勉強をしろ」と言われるが、止められない。

 個人がった映像を流しているのだが、その中のLIVEコンテンツが好きでよく見ていた。


 とくに、山を登ったり、森の中を探検するような──そんな映像の物が好きで、今日も登録している配信者が前々から予定していた、青木ヶ原樹海を歩く、という企画が始まるのを楽しみにしていた。


 富士山のふもとに広がる緑にあふれた森。

 広大な樹海は、なぜかは知らないけれど、自殺者が多いことでも有名らしい。

 その森の中では、方位磁石コンパスが狂うと言われている(《作者注》実際はそんなに大きな狂いが生じることは無いらしい)。それは別に心霊現象だからということではなくて、磁場の問題だと聞いていた。


「さぁ──はじまりました。いつもご覧になってくれている方には説明不要初めての方にはざっくりとご説明しましょう……」

 そんなふうに話し始めたのが「クロノツバサ」さん。年齢不詳の20歳と言っているが、ギリギリ30代手前か、30過ぎの男の人だろう。最近髪が薄くなり出したことを気にしているみたいだ。

 帽子に付けた小型カメラを見せながら、それをかぶって樹海の中を歩いて行くと説明している。


「……というわけで、今日は、前々から言っていた、青木ヶ原樹海の散策を開始したいと思います。今回のために、数人の仲間が電波の中継器を持って、樹海の中を通る道に立っています。いや──スポンサーの力は偉大ですね。距離によっては通信が切れるかもしれないけれど、後で画像はアップするので、そのときはよろしく~~」

 まあ、道から大きくは離れられないから、そこんところよろしくぅ、とツバサさんは言って、鬱蒼うっそうと生い茂った森の中に足を踏み入れる。




 最初の方は、ただ木々の間を歩くだけの画像だったが、しだいに地面の起伏が激しくなり、こけの多い岩や地面を避けながら、樹海の奥へと進んで行く。

 帽子に付けられたカメラなので、ツバサさんの動きに合わせて、右を見たり左を見たりする。


 そのとき、画面のすみに何かが映ったと、誰かがコメントした。

 ツバサさんも生配信している自分の動画を確認しながら進んでいるので、コメントが出ると「え、どこに?」と反応を返してくる。


 コメントの指示に従い、地面の陰に見えた物を探しに行くツバサさん。たまに画面にノイズが入り、電波状態が悪いことをうかがわせた。


 地面に落ちていた物を確認すると、それは小さな赤いリュックサックだった。

「自殺志願者の物かな?」

 そんなことを気軽に言うツバサさん。怖くはないのだろうか。




 その後も薄暗い森の中を歩き回り、いくつもの遺留品を見つけていたが──しばらくすると、白い物が散らばっている場所に出た。

 苔の上に白い棒がたくさん落ちている。

「骨だ」樹海には野犬などがんでいて、自殺者の遺体を食べてしまうのだとツバサさんが説明する。


 その骨に手を合わせて腰を上げたとき、森の先に人影が見えたように思った。

「人がいた」と誰かがコメントする。

 僕も慌てて「僕にも見えました」とコメントすると、ツバサさんはそちらへ向かって進んで行く。


 ザザ──ッと、ノイズが激しくなり、ツバサさんの声も音割れがひどくなる。

「ぁあ……こ──なに……みえ──なぃ」

 木の間に来たとき、首を左右にゆっくりと振って、周囲を見回す。

 そのとき、また何かが映った。


 一瞬でわからなかったが、誰かが「足みたいのが見えた」とコメントする。……そうだ、確かに足だった。でも……


「あし? ど……こに、あ──(ザザッ)」

 コメントらんにも「やばくない?」とか「樹海から出た方がいい」とか、そういったコメントが流れる。


 足が映っていたのは、画面の上部に──()()()()()()()()()()のだ。血の気の失せたふくらはぎ、だらんと垂れたつま先。……ということはたぶん……自殺者の足が映ったのではないだろうか。


 しかし、ツバサさんが辺りを見回しても、今度は何も映らない。上の方を見上げても、もう足らしい物が映ることはなかった。


「じゃ……もど(ザザッ)り、ぁすか(ザ──ッ)お……?」

 ザザ──ッとノイズが画面に広がる。

 すると遠くの木の陰に、黒い髪の女の人らしい姿が見えた──気がした。

 ぼろぼろの衣服は汚れ、元は白かったと思われるそれは、破れたり、黒い染みが付いていたりした。


「右! 右!」「いや、違う、木の横に!」とか、コメントがどんどん流れていく。

「え、(ザザ──ッ)な……、(ザザッ)どっち──」

 クルクルと向きを変える画面。すると、画面の遠くにいたそれが、段々と近づいて来ているように見えた。


「やばいやばい!」「逃げて!」そんなコメントであふれる。クロノツバサさんは少し後ずさったが、どこへ向かうのかわからないみたいに周りを見回すだけになった。


 どんどん、女の人がツバサさんに向かって近づいて来る。揺れる画面にははっきりと、汚れた衣服を着た、ぼさぼさの長い黒髪の女の姿が映し出されているが、ツバサさんには見えていない様子だ。


 そのとき、停止した画面の向こうから、はっきりとした女の声が聞こえた。



『あなたもこっちへ来なさいよ』



 それは、ゆがんだ──不気味な女の声。

 配信を見ていた人たちも大パニック。

「聞こえた!」「やばいやばいやばい」「幽霊でちゃったよ!」「いや、やらせでしょ」

 そんなコメントが、止まったままの画面上に流れていった。


 * * *


 その後、クロノツバサさんの仲間たちが樹海の中を探し回ったが、彼を発見することはできなかった。


 その日の午後には救助要請を出し、ツバサさんの捜索が行われたが、結局、数日かけても彼は見つからなかったらしい。


 その後しばらくして、どういう判断がなされたのかは知らないが、クロノツバサのアカウントは消され、配信されていた画像も見れなくなってしまった。




 気になっていた僕は、ツバサさんのその後についても、ちょくちょく検索していた。画像が削除されたとはいえ、一度流れてしまった映像だ。誰かが録画していた物が流れ「クロノツバサ失踪しっそう事件とその流れ」などとうたったまとめサイトまで作られた。


 あくまで噂の域を出ない話として、「クロノツバサ氏の遺体はすでに発見されている」というものがあった。


 その書き込みによると、ツバサさんは自分のベルトを使って、樹海の木の枝で首を吊った姿で発見されたらしい。

 映像は残されていなかったが小型カメラや、そのほかの機材を身に付けたまま死んでいたという……


 ネットでは、幽霊に殺された配信者として、以前よりも有名になってしまったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ