煽り運転男の末路
どこかで見聞きしたような奴の「ざまぁ」展開。
私の連れは、いつもイライラしながら車を運転している。
そして決まって気に入らない運転をする車を見かけると、パッシングや急ブレーキ、幅寄せなどをして相手を追いかけ回すのだ。
私はもう、うんざりしていた。
この男は、キレると何をするかわかったもんじゃないので、別れを切り出せずにいた。
「ちっ、なんだぁ? あの運転は! あぶねーじゃねーか!」
ほうら、始まった。
もういやだ。
こいつとは別れよう。
1対1で別れ話をすると危ないので、喫茶店などで別れることを告げよう。周りに人がいないと、暴力を振るってくるかもしれない。
パッシングを繰り返し、もの凄い速度で白い車を追いかける。
「あぶない、あぶないよ! スピードを落として!」
私は叫ぶ。
すると奴はこう言うのだ。
「ああ? あんな野郎をそのままにしておいていいのか? いいわけね──だろ! 自分の運転がどれだけ危ないか、教えてやる」
そう言って煽り行為を繰り返す。
自分のやっていることがわかっていないのか。
スピードを上げて追い越そうとする──すると相手の車も、もの凄い速度で逃げ出したのだ。
「クソヤロウッ! 逃がさねえぞ‼」
さらにスピードを上げる2台の車。
自殺行為だ。もう降りたい、本当にイヤだ。何でこんな男と付き合ってしまったのか、本当にバカな私。
白い車の右側に寄せて行こうとしたそのとき、私は相手の車を間近で見た。
車体のところどころがへこんだり、ぶつかった跡の残る不気味な車。よく見ると傷だらけの車体で、ウインカーなども壊れている。
「ちょっ、ちょっと、何か変だよ! あの車!」
男は私の車などまるで聞こうともしない。
そのとき、白い車のブラインドガラスが下りて、運転している人の姿が見えた。
「いやぁあぁぁぁ!」
私は絶叫した。
白い車と並走状態に入ったことで、助手席に座る私の目の前には、血まみれの運転手がハンドルを握りながらこちらを見て、にやりと不気味に笑いかけてきたのが至近距離で見えた。
傷で裂けた口から血が流れ、垂れ下がり変色した皮膚など──見るからに、大怪我をして死んでしまった人の姿だった。
狂乱状態になった私は、逃げようとして身体を傾け、運転する男の肩をぐいぐいと動かした。
「ばっ……おまえ、いったい何を……!」
白い車はさらに加速し、まっすぐに道路を突き進んで行く。
「やろうっ! 絶対に逃がさねえ!」
さらにアクセルを踏み込んだ男。
加速し、白い車の背後に付けると──ふっと、前を走る車が消え去った。
目の前には灰色の壁。
私たちを乗せた車は、凄いスピードで壁に激突した。
* * *
病院で目覚めると、私は生きていることに安堵した。
覚えている限りでは、壁を突き破って道路外へ落下し、崖の下に叩きつけられたのだ。
私は運良く、腕を骨折しただけで済んでいた。
看護師さんから話を聞くと、車を運転していた男は意識が戻らない状態だという。医者の話では、たぶん意識が戻ることは無いだろうと言われた。
態度には出さなかったが、私は再び安堵した。
これで、このクソ男と別れられる。
あの幽霊には感謝しないといけない。そんなふうに考えるのだった……




