怨念の部屋と大学生
僕は、○○大学に入ったばかりの大学生だ。
田舎から出てきた僕は、小さな古い木造アパートの2階に部屋を借りて1人暮らしを始めた。
正直言って、ぼろいアパートだ。まるで昭和の時代にタイムスリップしたみたいな気になる。
だが、勉強するのに場所は関係ない。
早く大学で法を学び、法学部を卒業して、弁護士になるのだ。
大学では勉強ばかりしていた。
バイトに行ったときにも休憩時間には、法律の勉強をした。
部屋に帰ったときも、時間が空けばすぐにテーブル机に向かって勉強に励む。これが僕の生活サイクルだ。ほかにやるべきこともない。
そう言えば、大学でできた友人が終電を逃したとかで、この部屋に泊まりに来たことがあった。
「ぼろいアパートだなぁ」
桂浜はそう言って、2階にある僕の部屋にやって来た。
「そうだな。風呂もないし、便所は共同だ」
「マヂかよ」
僕は肩を竦める。
勉強以外のことなど、いまは2の次3の次だ。
小さなテーブル机に向かって本とノートを広げ、僕は勉強を始める。
「テレビもないのか⁉」
「ごらんの通りさ」
呆れた表情をした桂浜は、横になって眠ることにしたみたいだ。
静かになった方がありがたいので、僕は自分の勉強に集中することにした。
ところがしばらくすると、急に桂浜はうなされ出して、目を覚ましたかと思うと、「うぎゃぁあぁぁぁ!」と天井を見て喚くのだ。
「うるさいぞ、静にしろ何時だと思ってる」
「おま、おま、おま……あれが見えないのか!」
桂浜はそう言いながら壁の方に逃げて、虚空を指さす。
「おまえは何を言っているんだ」
「くっ、首吊り、首を吊ってる男の姿が、みっ、見えないのか!」
僕は部屋の中を見回して「いいや」と言った。
「寝ぼけてるのか」
僕が立ち上がると桂浜はさらに驚いて、壁に背を押しつけて、ずりずりと横へ移動する。
「おまっ、かっ、かっ、重なってる! 重なってるぞ!」
「いや、だから、何がだ」
僕が冷蔵庫から麦茶を取り出そうとすると、桂浜は「もういやだぁぁっ」とか叫んで、部屋を飛び出してしまう。
「わけのわからん奴だ」
冷たい麦茶を飲むと、僕は少し休んでから、もう少しだけ勉強をする。
* * *
その翌日から僕は「幽霊部屋の法学生」というニックネームが付いたらしい。
幽霊なんて……ばかばかしい。
見える奴は幻覚を見ているだけだろう。もしかすると桂浜の奴は、合法ドラッグとか、脱法ドラッグとかいう物をやっているのではあるまいな?
まったく、そんな物に手を出すくらいなら、勉強をしろ勉強を……
そう言えば最近、天井が軋む音がうるさい。
大家に頼んで修繕を依頼した方がいいかもしれない。




