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怪奇異譚~KAIKI・ITANN~  作者: 荒野ヒロ


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12/29

鈴の音が聞こえる山道

 某県と某県の境にある山脈の中に、険しい山道がある。

 私たち○○大学山岳部は、いつも行っていた山への合宿を変更し、険しい道でそこそこ有名な、○○岳の山道に挑戦することにした。


 木々の間に大きな岩や、地面から突き出た大きな石など、悪路が多いその場所は──昔、修験道しゅげんどうとして使われていた場所でもあった。

 山伏やまぶしが自らを追い込むために使っていた道だ、生半なまなかな物ではなかった。すでに脱落寸前の者まで出る始末。


 もちろん事前に食料などを用意し、寝泊まりの準備もしてきた私たち。決して軽い気持ちで登山に来たわけではない。


 夕方頃に山頂の手前にある、平坦な地面がある場所までたどり着いた私たちは、そこで一泊することにした。

 私たちは本当に疲れ果て、体力や身体の頑丈さには自信のある竹畑でさえ、足が痛いと泣き言を口にするくらいだった。


 持って来た食事を口にし、テントの中で寝袋にくるまれて横になると、──私たちは疲れからすぐに眠りに落ちただろう。いつ眠ったか、そんな記憶すらないほどに、あっと言う間に眠ってしまう。


 * * *


 翌朝目を覚ますと、朝食の用意をする──そのときだった。


「あれ? 竹畑は?」

 竹畑の姿が見えない。

 竹畑と同じテントで眠っていた杉崎は、ぼうっとしており、あまり眠れなかった様子だ。


 竹畑はどうした、そう尋ねると、杉崎は躊躇ためらいながら話してくれた。


「俺が寝ていたら、竹畑のやつが急に俺を起こして『何かが聞こえる』って言い出したんだ。俺は耳を澄まして聞いてみたけれど、何も聞こえなかった。──だから竹畑に『疲れてるから幻聴が聞こえるんだろう』と言って眠ろうとすると、竹畑は『鈴の音が聞こえる──どんどん近づいて来る!』そんな風に言って、寝袋の中に隠れるみたいに丸まっていたよ」


 それで今朝、起きてみると──竹畑姿はなかったらしい。

「トイレに行っているものだと……」と口ごもる。


 私たちは食事を簡単に済ませると、竹畑を探し回った。足跡を見つけようとして山頂へ続く道や、私たちがまだ足を踏み入れていない場所を念入りに探したが、竹畑の足跡らしい物は見つからなかった。


 山頂に行ってみよう。

 私たちはテントなどの荷物をその場に残し、山頂まで登ってみました。

 やはりそこにも竹畑の姿はありませんでしたが、山頂にある小さなほこらの前に、鈴がいくつも置いてあるのを見つけました。それは修験道で訪れた修行僧が身に付けていた鈴で、彼らは山頂まで来ると鈴を祠に置いていったのです。


 結局、竹畑は見つからず、山を下りた私たちは捜索隊にお願いして、竹畑が救助されることを祈っていましたが──数年()ったいまでも、竹畑は見つかっていません。


「この山は、たびたび神隠しにう山だから」

 そんな風に話す地元の人もいるそうです。




 けど、この話には続きがあります。


 竹畑がいなくなってから数年後に、私は杉崎と久しぶりに再会し、酒を飲みながら話しをしていたところ、こんなことを話し出しました。


「竹畑が行方不明になってすぐに、俺は山岳部を辞めただろ? あれ、実は……」

 あの登山の後、家に帰った杉崎自宅の留守番電話に、こんな録音が入っていたそうです。


『……どうして、かえっちまったんだよぉ。──はやく、はやくぅ、もどってこぉおぉぉいぃ……』

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