呪われた宝石
呪いの掛かった品物についての話とは、実は古今東西、あらゆる時代や地域を問わず──よくある話の1つである。
中でも宝石はいろいろな逸話があることで有名だが。──今回ここで披露する話は、日本に住む、とある空き巣が経験した、奇妙な体験にまつわる話をしよう。
彼の名は秋須太郎、もちろん仮名だ。……なに? もっとマシな名前を付けろ?
空き巣犯など、名前を付けてもらえるだけで感謝すべきだろう。珍満腔、とでも改名したら満足なのか?
……もういい。この空き巣だが──各地を回って空き巣を繰り返す、筋金入りのクソ野郎だったのだ。
もう何度も警察に捕まっているが、繰り返し繰り返し行った犯行のおかげで、空き巣の技術が増し、近頃はなかなか捕まりにくくなっていたらしい。
そうして磨いたスキルで、ある中層階級の住宅に忍び込むと、金目の物を盗み出して家に持ち込んだという。
すぐに売ると足がつきやすいので、何年も前に盗んだ物を持っておき、それを売って金にするのが、秋須太郎のやり口だった。
盗まれたばかりの物だったら、質屋などを回って、売りに来た犯人を特定することは可能だが、数年前になると、なかなか難しくなる。
盗んだ物の中にそれはあった。
真っ赤な宝石が付いた金の指輪だ。 それは、とても高価そうな──高値で売れそうな物だと、秋須太郎は思っただろう。
ところがその指輪は「いわくつき」の物だったのだ。
盗み出された中層階級の住人は、痛手をこうむったと同時に、ほっとしたかもしれない。
なぜならこの指輪を持つ者は、眠ることができなくなるからだ。
指輪の持ち主が眠ろうとすると……それが起こるのである。
がりがりと壁を引っかく音。
床を人が歩く足音。
壁(天井)を叩く音。
そんなことが起き始め、物音に気づかなくても持ち主は──悪夢を見て、うなされて目覚めてしまう。そうしたことが起き、精神状態が追い詰められて行く。
するとある夜に、枕元に誰かが立っているのを見ると言うのだ。
それは恨めしそうな顔をした女性たちで、ときには1人の女性が、ときには数人の女性が見下ろしているのだと、多くの持ち主が語っている(その女性たちの多くは外国人であったらしい)。
この呪われた指輪。
いくつもの宝石商の間を渡り歩き──一時期、日本にも上陸を果たしたのだが、こんな物はごめんだと秋須太郎は思っただろうが、盗み出したアクセサリーのどれが原因かはわからなかったのである。
「盗んだ当日から悪夢にうなされることになったが、どれが原因の物か、わからねぇんだ……」
別々の場所で盗んだ品を処分しようとした秋須太郎は、警察署の中で、そう漏らしたという。
❇ 桂木克也の独白
……さて、3話連続で「私」が語り部を務めさせていただいたが──いかがだったろうか。
大して怖くもない話のオンパレードだっただろう。
世にある「本当の」怖い話の多くは、こんなものだ。
実を言うと私、ある雑誌に寄稿文を書いているライターなのである。
私がいままで聞いてきた「本当にあった怖い話」とは、大抵はこういった──人の死なない、ラップ現象やポルターガイスト現象などに悩まされたりした人物の声なのだ。
だが希に、かなりやばい案件に出くわすこともある。……そう、この短編集の最初の方に出てくるような、「死を招く」存在がいると思わせる、そんな話もあるのである。
私──桂木克也が怪談のルポライター「K・K」として雑誌に投稿した物や、これから寄稿しようと思っている物、そんな物についても随時、ご報告したいと思っている。
もちろん私の命が続いていればの話だが……




