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迷宮宝箱設置人 ~マナを循環させし者~  作者:


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81/203

暗き地よりいたれりは⑦

******


 とにかく、ホブゴブリンたちに敵意はなさそうだ。


 クロートとレザが近付くとじゅるっと涎をすする不穏なやつもいるが、武器を取る気配はない。


 そんな状況で、なぜかレリルを取り囲み頭をぺこぺこと下げている魔物を眺めながらクロートは唸った。


 ――群れたり罠を張ったりするわけだから、それなりに頭がいいんだろうけど。友好的な魔物なんて聞いたことないよな……。


 そう。彼らは魔物である。普通なら生物を喰らおうと襲ってくるはずなのだ。


【メルゴモル迷宮】が【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】五級でようやく許可されるのは、ホブゴブリンがそれだけ危険だからだ。


 加えて、クロートたちが集めてきた情報のどこにも友好的などという文字はなかった。


 それにレリルの言うとおり繁殖しているのだとしたら、それこそ大問題だろう。


 クロートは隣で口をへの字にしているレザに話しかけた。


「魔物も繁殖するとしてさ――倒されてもまた『リスポーン』するわけだろ? ずっと増え続けたら危ないんじゃないか?」


「うーん。単に子供っぽいやつが『リスポーン』しただけってことじゃないのかなー」


 レザは答えながら、すぐ近くに留まっていたホブゴブリンに歩み寄りじろじろと眺める。


 小さな歯がずらりと並んだ、見た目はカエルのような左右に広い口。


 その上にこれまた小さな鼻がちょこんとあって、額から頭頂部……さらには背中まで、たてがみのような――まるで針金のようでもある――剛毛が生えている。


『ギャ……』


 居心地が悪そうなホブゴブリンは、三本指の手で頭を抱えるようにするとレザから隠れるような仕草を見せた。


 しかも別のホブゴブリンがその個体を守るように後ろに庇うので、レザは大袈裟に肩をすくめる。


「本来なら狩り対象なんだけどなー……なんか、やりずらいー」


 そこでひたすら頭を下げられていたレリルが困ったように両手を上げ、泣きそうな声で言う。


「クロート、レザぁ……この子たち、なにかお願いしてるんだと思うんだけど……なにかなぁ……」


 クロートとレザは顔を見合わせて苦笑すると、同時に応えた。


「そんなの、ファンブリール討伐しかないだろ」

「そんなの、ファンブリール討伐しかないよねー」


「え……」


 レリルはそれを聞いて、みるみる不安そうな表情になる。


「……それは……でも」


 言い淀んだレリルの様子を察したのか、彼らはぺこぺこと頭を下げる回数を増やし床に這いつくばる者まで出始めた。


 理由はわからないがホブゴブリンたちはレリルを仲間……いや、まるで主とでも思っているようだ。


 レザはそれを見下ろしながら、ふわふわした金色の髪を揺らしてへらっと笑う。


「女の子ー、俺はかまわないよ。体が鈍っちゃうしー」


「そうだな……倒さなきゃならないとは思ってたし。レリルはここでこいつらを見てくれれば――」


 クロートがレザに同意して言いかけると、レリルはこぼれそうなほどに目を丸くした。


「だ、駄目だよ! 行くなら、私だって……」


「……まあ、そう言うと思っ――」


 言いかけたそのとき。クロートはうぐっ、と喉を詰まらせた。  


「……」


 レザが無言で双剣を抜き放ち、レリルが眉をひそめる。


「クロート……?」


 鼻から入ってきた空気は湿り気を帯び、ねっとりと絡みつくような――甘ったるい臭い。


「迷ってる暇はなさそうだな……」


 クロートの言葉と間を置かずして、その微かな音が耳に触れ、レリルは身を堅くした。


 ……ズッ


 ズーッ……


『ギャッ……』


 鳴き声を上げたホブゴブリンの口を別のホブゴブリンが塞いで、すぐに板の後ろに回り込む。


 さらに別のホブゴブリンがレリルの手を取って板の後ろへと連れて行こうとするが、レリルはきつく唇を噛んだ。


 ――この子たちはずっと……震えていたんだ、ここで……。きっと、たくさんの仲間が犠牲になって……それで……。


 唐突に、雨に打たれながらも中庭にいたホブゴブリンたちを思い出す。


 ――彼らの足下に積まれていた石……あれは、お墓……だったのかな……仲間の。


 呟いた声は窓に叩きつける雨の音に掻き消され――クロートとレザには届かなかい。


 レリルはふーっと息を吐くと懸命に彼女の手を引くホブゴブリンに隠れるよう促して、その手に魔装具を描き出した。


 音に反応するというのなら、きっとこれが最善だ。


「……クロート、レザ。私が弓で射るから――撹乱、お願いできるかな」


「――任せろ。外すなよ?」


「いいね、俺もそれが一番の作戦だと思うなー」


 心強い同意にレリルは少しだけ唇に笑みを浮かべる。


 なにかを守れるほど、彼女は強くはないかもしれない。


 迷宮は、そんなに甘いものではない。


 ……それでも、戦わなくてはならないことがあるのだ。


 彼らにはそれがわかっている。


「それじゃあ、作戦だけど――」


 クロートはレリルとレザに手早く話しながら、魔装具を構えた。




本日分です。

大好きなフロンターレが、なんとチェルシーと対戦する今夜のために早めの投稿だったりします。

よろしくお願いします!

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