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迷宮宝箱設置人 ~マナを循環させし者~  作者:


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75/203

暗き地よりいたれりは①

******


 それから一週間、レリルは物語を綴った。


 彼女はレザやクロートと稽古をしたり買い出しをしたりと動きながら、クランベルと話したりもした。


 いまは昼過ぎで、レリルはクランベルとお茶をしに王都へと繰り出したところである。


 クロートとレザは稽古で疲れ果てており、昼寝をするらしい。


 そんなわけで、クランベルが行ってみたかったという新しい店の個室に、彼女たちは腰を落ち着けた。


 可愛らしい草花や動物の絵によって装飾された店内は華やかで、テーブルの縁にも花の細工が施されている。


 なによりお店全体が薄いピンク色を基調とした造りのため、クランベルが好みそうだとすぐに感じたほどだ。


 レリルは注文を済ませると、いそいそと話を始める。


 聞きたいことはたくさんあった。


 やはり五級で職を辞す【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】と【監視人】は多く、彼らは『ノーティティア』に残るかどうかを選択するらしい。


 クランベルは【監視人】であることを選んだ――「遠い昔よ」と、はるか彼方を見詰めながら教えてくれた――ためいまも『ノーティティア』にいるが、去った者たちを思い出したくなるときもあるそうだ。


「つらいこともね、そりゃあるわよ。仲間が――その、いなくなることもあれば、私が監視していた人の宝箱を取りに行った冒険者が帰ってこなかったりもする」


 いなくなる――命を落としたのだろうが、クランベルはあえてぼかした言い方をした。


 レリルはアルや『アルテミ』の皆のことを思い、胸がきゅっと苦しくなったが、深呼吸をして気持ちを落ち着ける。


「クランベルさん。ほかの【迷宮宝箱ダンジョントレジャー設置人クリエイター】は、いまなにをしてるんですか?」


「そうねぇ……『ノーティティア』として情報を集めながら、いままで通り宝箱を設置しているわね。だからマナレイドやレイドボスの情報がどんとん入ってきているところ。各地で大きな被害が出ているし、国からも情報が欲しいって話がきているみたい」


「そうですか……」


「正直、こんな爆発的にマナが放出されるなんて思っていなかった。いままでは容易く攻略できた迷宮でも、奥地までたどり着けずに宝箱を設置してきたって報告も出始めたわ」


「そんなに変わるんですね」


 そこで、注文したケーキが運ばれてきた。


 クランベルは甘酸っぱい果実をふんだんに使ったピンク色の四角いケーキ、レリルはクリームがたっぷり使われた丸いケーキである。


「とりあえず、いまはしっかり体力つけて、次に備えましょう。すべてはそれからよ」


 クランベルは至極まっとうなことを口にしながら、涎がこぼれそうな口元を拭う。


 レリルは思わず微笑むと、フォークを手に取った。


「うん。報告ももうすぐ書き上がるし、そしたらまた迷宮に向かうことになると思うから――食べないとですね!」


******


「んー、よく寝たー」


 レザの声でクロートは夢から覚めた。


 あまりいい夢を見ていなかった――そんな感覚だけは残っていたが、内容はすっかり忘れている。


 すでに見慣れたベッドから彼が体を起こすと、胸元に白薔薇の核が揺れた。


 ――マナの祝福を施した御守り……ね。


 本当の祝福ではないのかもしれないが、祈祷師だって存在しているのだから、なにかしらの加護があると信じたいとクロートは思う。


 ――少しは父さんやレリルを守る役にでも立ってくれたらいいんだけどな……。


 そう考えて、クロートはふと自分の装備――ベッドの傍らに置いている――から、それを引っ張り出した。


 残っているのは赤い革紐のペンダントである。


 それは……そう。彼が依頼して四本できた白薔薇の核のペンダント――その最後の一本だ。


 クロートはベッドを囲むカーテンを引くと、ちょうど出てきたレザに声をかけた。


「おい」


「ん? ……わっ⁉」


 びゅんと投げたそれを、レザは驚きの声とともにしっかりと掴む。


 彼は右の手のひらに収まったペンダントを見て、首を傾げた。 


「あれ、これ女の子も付けてたね」


「なんだお前そんなとこ見てたのか。……俺も付けてるけど?」


「え、あんたには興味ないよ?」


「はぁ? こっちだって願い下げだよ……まぁいいや。それやるよ」


「……いや、だからさー。俺、あんたに興味ないってば」


「……俺の言ったこと、ちゃんと聞いてたか……?」


 ――なんだこいつ。


 クロートは内心で盛大に突っ込みつつ、ため息をついた。


「それ、御守りなんだ。マナの祝福を込めたやつ。俺とレリルと……あと父さんも持ってる。で、一本余ってたからさ。お前にやるよ」


「……御守り……」


 レザは不思議そうな顔でペンダントをかざしたりひっくり返したりしていたが、やがてすぽんと首にかけた。


「へへー、女の子とお揃いってことかー!」


 どこがどうなってそうなったのか、クロートにはまったくわからなかったが……突き返されるよりはマシだろう。


「お前の思考回路、どうなってんだよ……」


 クロートは満更でもなさそうなレザに呆れた声で言いながら、心のなか、ひっそりと思った。


 ――ついででいいから、レザのことも守ってくれたらいいんだけどな。


******


また過ぎちゃいましたが昨日分です!

よろしくお願いしますー。

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