65 かくれんぼ
まだかまだかと待ちきれない様子の魑魅魍魎。悍ましい眼光が男をとらえている。眼光火須男はその光景にさらに怯えていた。それを見ながら夜空は言う。
「あと54秒……」
容赦のないカウントダウン。火須男はその理不尽さに顔を歪める。
「うわああああ!!! 嫌だぁぁああ!! 死にたくない!!」
男は必死に立ち上がり、逃げ出した。時間になると一斉に影は動き出す。男は走る。無我夢中で走り続ける。
「助けてくれ!! 誰か!! 誰かいないのか!!!? 誰か!! うわッ!!」
影がいたので道を変える。逃げて逃げて逃げまくっている時、男は気が付いた。
「ひと気のない場所に誘われてるッ……このままじゃ!!」
男は隠れることにした。近くの茂みに身を隠し息を潜める。土を自分にかけて擬態する。彼は頭が良い方ではないが、本能がそうさせた。
携帯を取り出すといつの間にか壊されていた。男は怒りをぐっと抑える。怒りよりもここで音を出せば見つかるという恐怖が勝った。
(あ、あの男は化け物の類……さっき日が暮れればと言っていた。そうだ漫画にもあったじゃないか。恐らくは光に弱く、あの時はなにもできなかったんだ……日が昇りさえすれば……ッ!!?)
ゆっくりと考えてアレから逃げる方法を探す。狼の遠吠えが定期的に聞こえた。その度に体を縮めて震わせる。
(なんで!! なんで俺がこんな目に!!)
男は体中を震わし、涙を流しながらうずくまる。あの時、あの男と関わらなければと、後悔が無限に頭の中を巡る。
その時、火須男は口角が吊り上がる。恐怖に打ち勝ったからだ。辺りが明るくなった気がした。そして、それは現実になる。太陽が最初はゆっくりと。感覚が慣れていくと凄い速度で昇っていくように感じる。
彼の顔には次第に笑顔が戻ってくる。喜びのあまりしゃがんで茂みの向こうの様子を慎重に覗き込む。眩い光が徐々に同化していく。
「太陽で弱体化すると考えたのは良い判断だ。99点ってところだな」
火須男の真上。枝の方から夜空の声が聞こえた。男の顔から笑顔が消え、再び恐怖する。けれども男は上を見なかった。
彼は震えながら背後を見た。そしてその嫌な予感は的中した。いつの間にか、自分の影に恐ろしい形相で睨む狼がいた。
「影からは誰も逃げられない」
「うわああああ!!! ぎぃゃぁああびぃあぁぁあぐあぁああ」
立ち上がろうとするが蛇が巻き付いて上手く起き上がれない。飛びかかる狼やその他の影。男は鳴き叫び、苦しみながら絶命した。
太めの枝に座り、なにか考えごとをしていた夜空はハッとする。
「あ、鳴き声を聞くの忘れてた。まあいいか」
その後、夜空は適当な最寄りのお店でクリームソーダを飲んだ後に歩いて帰宅した。
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