66 空
猫宮は小さな振動で眼を覚ます。するとトシノバに背に乗っている事に気が付いた。
「……な、なにをしてるんっすか……っ」
「……」
「まさかウチを助けにっ? なんで……っすか……」
「ふん。俺はただ奇妙な狼を駆除しようと追いかけてたらッ。そしたら偶然バカ猫を発見しただけっ。ほんとに偶然な!!」
「は……誰がバカっすか。そっちのッ……っィッ……」
「はっ。無理をするな。死んだら決着がつけられないだろ……」
病院に着くと玄関で倒れた。
「……馬鹿っすね……でも今回だけはお礼を言っとくっす。ありがとうっす」
トシノバは疲労のあまりそれを聞いていなかった。気が付いた者がすぐに運び、治療する。
治療の中、命に別状はないことを聞くと帰ろうとするトシノバ。背を向ける彼に慌てて部屋から飛び出した猫宮が言った。
「ちょっと待つっすよ!! 大事な話があるっす!!」
「な、なんだよ……」
猫宮は真剣な表情でいった。
「お金貸してくれないっすか?」
「……ふざけろ」
トシノバの財布は空になった。
◇
依頼をこなし疲れ切ったトシノバが、喫茶店に入った瞬間に倒れ込む。
「動き過ぎて死ぬぅ……」
「おいおい、大丈夫か? なんかあったのか?」
ハンターの男が近寄ってきた。彼は遠くを見ながら微笑む。
「ふふ。いや、なにも……ただの疲労だ」
「んだよー。その含みある笑いはよー」
肩を借りてテーブル席に着く。喫茶店にはモニターがあった。夜は雰囲気に合わないので片付けている。モニターに映っているのはヨモヨモという局のニュースだ。
『……深夜に第二区の……でモンスターに襲われるという事態が発生しました…………その中には人気配信者が…………アカウントが複数あり、その全て動物の救出動画だったとのことです……ファンは複雑な心境を語っています……』
トシノバに耳にふとそれが入ってきた。
「なんて事だ……」
動揺する彼に周囲の男が言う。
「強欲、承認欲求のモンスター。どこにだっている悲しい魔物。まっ、安全に暮らしたいなら……」
「馬鹿を言うな。俺はハンターだ。モンスターを狩りにきた」
「そうだったな。悪かった」
「トシノバ。言っておくが、あれはレアなケースだ」
また別の男が誤解しないようにと付け加えた。
「分かってる」
「ああいう少数の輩のせいでそうでない人が被害を受ける。悲しいね~」
そこで猫宮が入ってきた。二人は顔を合わせない。美雨が聞いた。
「どうしたの、その怪我?」
「ちょっとやらかして。でも二日も休めば大丈夫っす」
「それまで大変でしょ。家にくる?」
「いいんすか!! 行くっす!!」
こうして猫宮はこの店に少しずつ馴染んでいった。
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