50 たいじ
リリンは高速で射出される氷の剣を避ける。しかし、ただ避けるだけではない。前進する事を忘れない。彼女は痛みを恐れない。
敵に近寄るため、最小限の動きで回避しているので、いくつかの氷の剣はリリンの肌を掠める。
剣の数は多い。直撃を免れない剣は、右拳で剣のフラー部分を叩き、払いのける。その拳は負傷したが急所に当たるよりは断然いい。
瑠琉は攻撃に意識を割いたため、守りがおろそかになり距離感を誤った。リリンを近づけ過ぎた。慌てて氷の壁を作り自身を守る。
(ダメっ。速度を重視したから壁が薄い……ッ)
しかし、どうせ避けきれないならと、氷の剣をリリンの周辺に発生させ、それを中央に集めるよう放った。
そして、凄まじい力を込めた拳が氷の壁に接触する。その瞬間、爆発が起こった。
土煙が晴れてお互いの様子が顕わになる。リリンは右肩に剣が刺さっており、瑠琉はなんとか立てているものの体全体に傷ができて、血だらけになっていた。
「……これでもかなり力つけたんだけどなぁ……強いね貴方」
「殺人鬼に褒められても嬉しくねェよ」
「……ふふ♪ なぜこんなことをするか、だっけ?」
「……」
「私だって悪いことだって思ってるのよ~♪ でもね……抑えられないから仕方ないよね」
瑠琉は悪びれもせずに話を続ける。
「殺せ。それを殺せってさ……ナニかが頭の中に直接囁きかけてくる。それに従うと、とっ~ても気持ちがいいのぉ」
ケタケタと笑いながら瑠琉はそう言った。
「けッ。根っからのイカレた殺人鬼……同情の余地はねェ!! いっぺん死んどけや!!」
「酷い人ね。貴方も亜人やこっちの人を葬るんでしょ? 貴方には罪がないっていうの? 不公平ね」
「ああ、そうだ。ただし、葬ってきたのはお前のように害のある奴だけだがな!!? こっちゃ合法なんだよッ」
接近するリリン。それに氷の壁を生成し即座に対応する。
「アハハハ!! そのパターンは見飽きたよ!!」
同じ行動には同じ対応で。瑠琉は同時にリリンの周囲に氷の剣を作る。とその時、彼女は驚愕する。リリンの左腕の装備が勢いよく、宙を舞って飛んできたからだ。
「ロケット!!!?」
壁が完成する前に、それは目の前にきていた。瑠琉は自身に氷を纏う。ただし顔を優先し氷の鎧を生成していく。
完全に生成される前にそれは瑠琉に直撃し、爆発する。彼女は凄まじい勢いで吹き飛ばされ、地面に転がる。重いダメージを負い、すぐには起き上がれない。しかし、転んでもただでは起きない。
リリンの体には氷の剣がいくつも刺さっていた。彼女は吐血している。
瑠琉はボロボロの状態で必死に脚に力を入れて起き上がる。お互い肩で大きく呼吸し、にらみ合っていた。
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