48 公園
【第三区】
リリンと数名の男女が建物にいた。建物の外には警官が複数いる。
「写真を見たが酷い遺体だったな」
「ああ。凶器はないか。手掛かりが少ないな……」
「魔法を使える可能性が高い。気を付けろよ」
「あとは売春で油断させてから連れ込んで、くらいしか……」
「警察から情報きてないの?」
「見たら分かる情報くらいだ。まだなんとも言えんとさ」
「金目のものは持ち去ってないそうですしね。異世界の者の仕業ですかね。リリンさんはどう思います?」
「……知らん。それっぽい奴を見つけたらぶっ飛ばす」
そこで別のパーティーと遭遇する。リーダーの女性が目を細めた。
「リリン……なんでここにいる?」
「……お前、たしか第三区の……例の殺人鬼の調査だよ」
「……見れば分かる。ここは私たちの縄張りだって言ってんだ」
「この依頼に限らず、どの区の依頼を受けても規定違反じゃない。それに二区でも多数事件が起こってる。今はそんな面倒に構ってる暇はねェよ」
「チ。休戦ってか。行くぞ」
パーティーは去って行った。
「……なにしにきたんですかね?」
「さあな……」
リリンが続けて言う。
「一応現場に見にきたがやっぱり駄目か。現場検証は専門家に任せて足で探しに行くぞ」
「ですね」
◇
夜空は大きな欠伸をしながら歩いていた。
遅くまで飲んでいたら朝になってしまった。喫茶店に入れ替わったのでご飯を食べて家に帰る途中である。公園に通りかかるとベンチで座っている少女がいた。
彼女の目の前を通り過ぎようとした時、話しかけられた。
「お兄ちゃん。パパ見なかった? ここで待ち合わせしてるんだけど……」
周囲を見渡すと夜空以外に誰も居ない。話しかけられたと感じて回答する。
「見てないな」
「そっかー」
少女は少し悲しい顔をしていた。夜空は知らん顔をしてそのまま歩きだそうと前に進む。
「お兄ちゃんはなにしてる人?」
再び呼び止められる。質問に対し、なにかのスイッチが入ったのか夜空は歴戦の猛者のような声を出す。
「ふ、ハンターだ」
「えー!! すごーい!! ハンターってあのハンターさん? お話聞きたーい♪」
「いいだろう。だが少しだけだ。俺も暇じゃないんでな……さて、壮大な夜空叙事詩を語るとしよう……」
「すごーい!! でも少しで語れるのぉ?」
「クク、俺にかかれば造作もない」
夜空は自分の体験に嘘を混ぜて話し出す。グロい話や吸血鬼の体質は言わずに。怖がらせないように。それは凄く長い話であった。
「お兄ちゃん強すぎだよぉ~。かっこいぃ!!」
「まあな。自分でも困ってるくらいだ。なんせ俺の中のビーストが体というチンケな檻から出たがっている。五千人でおこなった大魔術により、闇の鎖で深淵に繋ぎとめているが……それもそろそろ限界だ」
「五千人がかりで!! すごーい!!」
美雨が不在なのが問題ではある。しかし意外に少女は楽しくそれを聞いていた。
話が終わると少女はどこか遠くを見ていた。夜空はしばらく沈黙し、少女の言葉を待った。
「……お兄ちゃんのお話にあった子と同じ。私もね。本当のパパとママがいないの……」
「それじゃ、今待ってるのは?」
「おじさんだよ。でもねぇ~すっごく優しくてすっごく良い人なの~♪ 要らないって遠慮しても、欲しいだろって。なんでも買ってくれるの!! 寂しいけど大丈夫!!」
「ふむ。それは良かったな。俺も異世界で世話になった人がいる。今を大切に生きろよ。世の中なにが起こるか分からんからな」
「うん♪」
今度は少女の話を聞いていた。彼女は楽しそうに自分のことを話した。あっという間に時間は過ぎる。そこで、男性が遠くから近づいてきた。
「あ、パパだ。じゃあねお兄ちゃん。あ、私は兎野瑠琉。また……絶対に遊ぼうね~お兄ちゃん♪」
屈託のない笑顔を見せて手を振る。夜空はそれに一言で返した。
「またいつかな」
男が言う。
「ごめんルルちゃん。仕事が長引いちゃって!!」
「もぉー。携帯に連絡くらい入れてよ~」
「ごめん。ごめん。じゃあいこっかー」
二人は手を繋いで去っていった。夜空もそれを見送り帰宅する。
瑠琉と二人きりになった時、男が低い声で言う。
「で、あの男は誰?」
「……ぁ……知らない人。遅かったからお話し相手に……」
「僕のせいってことかな? 言い訳するなんて……いつからそんなビッチになったのッ?」
「ち、ちがうくて……その」
「言い訳は聞きたくないなッ。こういう時はどうするの!!」
「ご、ごめんなさい」
男は怒りの形相から満面の笑みになった。
「そんなに怯えなくても。大丈夫、怒ってないよ。でも、お仕置きだね……可愛い洋服を買った後、外でアレしよっか? ね?」
「はい……」
「今日は会社で嫌な事があってね……ああ、心配そうな顔をしないで。大丈夫だよルルちゃん」
◇
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