42 未知の法則
ある時、敵の銃弾が美雨に向かって飛んできた。だが、夕凪はそれすらも容易に撃ち落とす。
「に、逃げろ!! 銃使いやばいぞ!!」
夜空は一度制止し、刀を肩に担ぐ。カッコイイポーズをしていた。
「クク。いまさら俺の強さに慄くか。死んだぜ、お前等」
やがて人狼から過信が消え始める。遮蔽物に隠れて射線を切る。その様子を見た夜空はボソっと言う。
「無駄だ。死角はない……」
夕凪が三連続で弾を放つ。一発目は適当に魔力を込め、二発目以降は魔力を強めに込めて弾速を上げる。
魔力の影響で絶妙な角度になった先発の弾に後発が追い付き、ついに衝突した。弾道が大幅に変わる。直角に曲がり、物陰に隠れていた人狼に弾が当たる。人狼は叫び声とともにその場に倒れた。
彼等は障害物に隠れながら、仲間が次々と倒れてくさまを見る。苦痛の声を聞く。呼吸を荒げて、次は自分の番かと恐怖していた。
逃げなくてはいけないのに動いたら絶対に撃ち抜かれるという圧力を感じ、誰も一歩も動くことができない。
「な、なんなんだよ……あの人族はァ!!」
夕凪がさらに壁にも弾を反射させ、死角の敵を全て排除していく。休むことなく弾を追加していく。
着弾の嵐に誰もが動けない。美雨はハッと閃いた。
「もしかして、山井さん。夕凪さんに寄生してる?」
「失敬な。俺の動きで相手は惑わされ、逃げ切れなかったんだ。ていうか今宵の方がなにもしてないぞ」
「……」
美雨も数回素振りをした。そんな時、一人だけ盾を持って逃げる人狼が現れた。盾と魔法の障壁を組み合わせて強度を増している。
夕凪は弾が残っているマガジンを取り外して回収し、別のマガジンを取り出した。そして、間髪入れずに二連続で発砲する。弾が盾に当たった瞬間、凄まじい爆発が起こった。遅れてもう一度爆発する。今度は小さめの爆発であった。人狼は一応息をしていた。相手の魔法障壁分も計算していたようだ。
「依頼完了だな……」
「……」
夕凪は汗一つかかずに、その場から一歩も動くことなくそう言った。倉庫で取引をしていた人狼は全滅していた。呆然とその様子を見る事しか出来なかった美雨。
「あの……今回の報酬は全て夕凪さんで……」
「一緒に戦っただろ。三等分で良い」
「ええ!! でもそれじゃ不公平で!!」
「それだけで十分に生活できる」
「で、でも貯金とかしたほうが」
「金はあの世には持っていけないからな。それなら知人に託した方が有意義だろ」
美雨は濁りのない瞳を見た。いくつもの命を奪ってきた冷たい瞳。しかし、その奥にどこか優さがあった。不思議と吸い込まれるようであった。
「そうだぞ、今宵。俺たちが経済を回さないといけないんだよ」
美雨はその瞳を見て驚いた。某脳に満ちていたからだ。しかし、彼女はそれを軽蔑せずに微笑んだ。
(どうせクリームソーダでしょ。なんか親が子にお菓子を買ってあげた感じかな)
後日、美雨は軽装の防具を新調した。魔力効率がよく、防具よりも軽く、障壁が硬い。こうして彼女はまた少しだけ強くなった。
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