22 妖刀がある区
リーダーが取り乱す事で恐怖がさらに膨張する。仲間たちが絶叫する。なん人かが仲間を置いて逃走した。しかし、影が伸びて彼等の脚に巻き付く。誰も逃れられない。
「悲観する事はない。脚を犠牲にすれば簡単に逃げられる。次は掴まるなよ」
リーダーは過呼吸ぎみになっていた。例え片方を犠牲にしても次は腕か、もう片方の脚に絡みつくだろうと確信する。仲間はうろたえ、言葉にならない声をあげている。
あるの者は絡みついた影に畏怖し、狂い始め、激しく息をしていた。ある者は痛みを忘れ、自分の脚を短剣でなんども切りつけ、切断しようと奮闘していた。
ここでようやくリーダーは、あれには手を出してはならなかったと悟った。しかし、今更どうしていいか分からずにただただ喚いた。
「ふ、ふざけるな!! 汚いぞ!! 仲間を人質にとるなんて!! 堂々と戦え!! 俺は逃げも隠れもしねェ!!」
既に彼の言葉に興味はなく、夜空は月を眺めていた。
「デネブ、デネブ……2、そして……デネ……うむ。あれがなんたらのなんとかかんとか、か……美しい……」
夜空がリーダーの方を見ながら言った。
「死ぬには良い夜だ……」
怪しく光る赤い瞳がリーダーをとらえた。彼は怯えながら叫ぶ。
「うおおお!! 俺の仲間を離せぇ!! 教養も倫理の欠片もねェェッ。化け物クソ野郎が!!」
リーダーはとにかく叫ぶことで恐怖に打ち勝ち、夜空に接近する事ができた。しかし、彼がなにかをしようとする前に夜空がパチンと指を鳴らすと、彼等の体の内部が鋭利な影に切り刻まれ、全員が同時に息を引き取った。
夜空は立ち上がり地面に飛び降りる。そこで黒い沼が出現し、写真と屋根の上で乾いた自分の血を沼に引きずり込む。
「まったく物騒な世の中だなー」
夜空は欠伸をしながら、戦闘中にコッソリと取り外したカラコンを再び入れ、ホテルに戻る。そして、床でぐっすりと眠りについた。
◇
日が昇り、朝になった。夜空が目を覚ますとベッドに寝ていた。部屋には美雨はいなかった。
「なんでだよ。ったくこういう譲り合いは人を不……」
そこで言葉を止めると夜空は僅かに微笑んでいた。下からドタドタと足音が聞こえる。それは徐々に近づいてくる。ドアがバタンと勢いよく開く。美雨が血相をかかえていた。
「山井さん。大変よ!!」
「なに?」
「……この周辺でアウトローが殺された……」
「アウトロー。聞いた事がある。しかし、いくつかに別れているはずだが……」
「知ってるの?」
「封印されし太古の大図書館に詳しい情報はある……ついてきな」
(どこの情報サイトだろう?)
珍しいと思いながらも美雨は彼の背中を追う。本屋さんに入ろうとしていた夜空の服を掴んだ。
「いや、ならず者がでる漫画の話じゃないよ」
「違うの?」
「違うよっ。一流のハンターたちッ……聞いた話じゃ。リーダーのランクがS+で幹部もAだったらしいの」
「へー」
「へー、じゃなくて!! 強いのよ彼等は!! 一人一人が!! しかもチームとして活動していて、人数は約50人」
「ご、50人も!?」
「うん……今も増え続けてたって。それがアウトローっていう巨大なチームなのよ!!」
(そ、そこは驚くんだ)
驚く夜空に対して美雨は続ける。
「そんな集団が一夜にして壊滅……原因は不明らしくて。四区のギルドの人たちの予想では、かなり柄が悪かったから他のチームとかから恨みを買ったか……もしくは亜人に……って話!! 一番不可解なのはその騒動に誰も気が付かなかったこと!!」
「そんな強い奴等が謎の死をとげた……? 相当やばい区だな。クク、妖刀がなぜこの地にあったのか、理由が分かったな……」
「そのただの妖刀は関係ないと思うけど。早く二区に帰ろう。そんなのに遭遇したら私一人でも逃げ切れるか分からないのに。絶対に山井さんを守れないよ」
「いや、俺の方が強いから」
「はいはい。早く帰るよ~」
美雨の提案で四区から離れる事となった。
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