21 夜討ち
夜空が目を覚ますとホテルのベッドに居た。床には布団を引いた美雨が寝ていた。立ち上がって彼女を抱えるとベッドに移した。
静かな夜だった。しかし、それにそぐわない小さな足音が複数聞こえた。外の道や屋根上に多くの人間がいた。ある一カ所、小さなホテルを見ている。
殺気だった男たちが小声で言う。
「よそ者が。どこの区の奴だ?」
「分かりません。獲物を横取りしたってことくらいですかね」
「まったく。盗人どもが……駆除しても駆除しても湧きやがる」
屋根の上で写真を見ているリーダー格の男。そこには夜空と美雨が写っていた。男はつまらなそうに見終わった写真を捨てた。屋根に落ちたそれを見て黒い髪の男が言う。
「お、こいつはたしか二区の最強無敵ハンターじゃん」
「ほー。噂のランクSSSのハンターにお目にかかれるとはぁ運がいい。だがな真のハンターはいかなる状況でも対応できなきゃならねェ。寝てるだなんて言い訳にもならねェんだよ。フフフ、見せてやるよ。四区のハンターの力を……」
邪悪な笑みを浮かべる男の背中。心臓付近に優しく指が当てられた。指を当てた男は煽るように言う。
「はいキミしんだー。俺の勝ちぃ」
その声の男は先ほど情報をくれた者だった。怒りの裏拳を出しながら振り返る。夜空は軽く跳躍してそれを避けた。
「てめッ写真の男!! いつのまに!!?」
リーダーが驚くと周りも気が付いて驚いた。
「は? あいつ、今宿にいるんじゃ!!」
「おかしい!! 窓や通路は残らず見てるのに!! 誰にも見つからずにここに? 不可能だ」
夜空は愉しそうに笑っていた。
「はぁ? おかしいのはお前等だ。背後を取られてものんびりと作戦会議ごっこをしてるんだからなァ。ほらどうした? 四区の力を見せるんだろ?」
リーダーの頭に血管が浮き出る。トンファのような武器。違う点は棒部分が刃物であることだ。
「調子に乗るなよ小僧ォ!!」
男の刃は夜空の喉を切り裂いた。それを見たリーダーは勝ち誇っていた。
「へっ。馬鹿が!! この距離でベラベラ喋ってたのは迂闊だったな!!」
大量の血を吹き出る。そんな中、勝ち誇る男に向かい、夜空はなにごともないかのように言う。
「あ、そうだ。ルールを決めようじゃないか。さてどうすれば勝利にしようか?」
誰もがその光景に目を見開き、唖然としている。なん人かは恐怖を感じ、今にも死にそうな顔をしていた。
危険な傷を負いながら、なにごともないかのように話かけてくるソレに慄く。やがて出血は止まった。明らかに異常な速度で傷が塞がっていた。
「ッざけんじゃねェバケモンが!! ルールなんて必要ねェ!! どんな手段を使っても勝てればいいんだよォ!!」
「ハハ。安全に楽しく戦いをしようという、人間の進化を否定するか。野蛮だなァ」
「うるせェ!! 化け物が!!」
再びリーダーが腕を振る。今度は紙一重でかわした。
「ハッ!! お前等見たか。やつは今ッ、攻撃を避けた。無敵じゃないぞ!!」
「さすがリーダー!! なんて分析力なんだぁ!!」
「なに当たり前の事言ってんだ? いいから早くかかってこいよ」
ご満悦だったリーダーはその言葉を聞いて憎悪を燃やす。
「ッ……やるぞおめぇら!! これはスポーツじゃねェ。そして俺たちはハンターだッ。正々堂々はナメプと同義だ!! 卑怯こそが正義だ!!」
「クク。野蛮なやつらが跋扈する島。実に居心地が良いだろう? 化け物が化け物らしく破壊を楽しめるのだから」
「黙れッ俺たちは人間だァ!! 俺たちハンターに挑んだ事を後悔しやがれ!!」
「はぁ、こっちはただ寝てただけだけどな」
彼等はいつの間にか配置を終えていた。お互いに射線に入らない位置に移動している。そして、各々が魔銃を乱射する。
「「「「死ねぇぇ!!」」」」
銃声が無数に鳴り響く。男たちは愉しそうに叫んだ。
「ハッハハハ!! ハチの巣になったか」
「フヒヒ。俺たちに喧嘩を売るとこうなる!! 俺たちは”アウトロー”だ!!」
「化け物風情が人間様に逆らうんじゃねェってんだ」
そして、弾が尽きた頃、異変に気が付いた。
「……は? なんで……なんで倒れてねェ。なんで穴が空いてねェ。なんで血が出てねェんだてめぇはァ!!?」
伸びた影の先が二股に別れ、当たる寸前で弾を全て掴んでいた。影の力を弱めるとボトボトと鈍い金属音が屋根の上に響いた。
「自分の言った事すら忘れたか……ほらさっき言ってたじゃないか? バケモンってさぁ」
彼等は歯を噛みしめる。今までで出会った事のない。得体の知れない化け物が、まるで人間のように話かけてくる。
「さあ、ハンターの得意分野、化け物退治だ……ミスは死に直結するから気を付けろよ」
そしてさらに人間側の言葉を自身に向ける異常者。リーダーの男が叫んだ。
「こいつヤバイ!! あの女を人質にしろ!! 急げ!!」
「はいっ!!」
一人の男が二階の窓に跳躍する。しかし、窓に手をかけようとした時、男が宙で止まり地面に落ちた。受け身をまったく取らなかったのが不気味だった。
「夢幻泡影。蝉の時期が終わる頃か……」
よく見ると黒い球体が部屋を囲っていた。それに触れた瞬間に男は絶命した。別の男が倒れた男の安否を確認する。
「うわぁっ……そんなっ。し、死んでるっ!!」
「あのクロイシ君が一瞬で……そんな……」
背筋が凍り付く男たちをよそに夜空は弾むように話かける。
「内部は防音だから中々快適だぞ。入ってみるか? もちろん許可はするぞ」
少し目を離した隙に夜空は影で簡易な椅子を作り、座っていた。目の前に敵がいるのにまるで警戒心がない。
「……な、なんだあれはっ……なんなんだ貴様はぁぁあ!!!」
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