20 昼間の夜空
喫茶店のテーブルに向かい合って座っていると、ハンバーグやらクリームソーダが運ばれる。夜空は急いで完食する。するとメインディッシュを飲みながら話をする。
「じゃ、俺は用事を済ませてくる。ここで待っててくれ。時間はそうかからない予定だから」
(あ、戻った……)
夜空は少し緩いトーンになっていた。クリームソーダを摂取すると、仕事人モードが解除された。
「なんで? 私も行くよっ」
「……んー。今宵にはまだ早い……」
「むぅ。じゃあさっきの封筒頂戴よ」
「な、なんでそうなる。要らないんだろっ」
「やっぱりお礼はちゃんと貰っとかないと相手に悪いかなって」
「っ……難解な……これだから……」
「これだからなに?」
「……なんでもない」
◇
二人は傍から見ると仲良く街の中を歩いていた。ひと気のない場所に段々と入って行く。その不気味さに美雨がうろたえる。
「ちょ、ちょっと本当にここなの?」
「あまりキョロキョロするなよ。連れ込まれるぞ」
「ええ!!」
「……さあ、着いたぞ」
目の前には古い建物があった。ガラスごしに武器が飾ってあるのが見えた。そこは表通りに面しており、ひと気のない道から行く必要はない場所にあった。先ほどの裏通りの治安はどちらかと言えば良いほうだ。
つまり雰囲気を作るのために遠回りをしていた。
「武具店?」
「入るぞ」
おじいちゃんがいらっしゃいと声をかけてきた。それ以外の反応は特にない。知り合いではないらしい。夜空は近づいて言う。
「妖刀はあるか?」
「お、お主ッ。な、なぜそれを……ッ」
(ぁ……お店で飲みながら待ってた方が良かったかも)
美雨はもの凄く後悔した。
「だ、駄目じゃ!! あれは売れん!! 人には危うすぎる……」
「クク、余計気に入ったぞ。ところで聞きたいのだが……その妖刀は満足しているか?」
「ッ……!!!? …………そ、それは」
「宿主を待っているのではないか……現世の乱世で暴れたいと……」
「……少し待っておれ」
店主が奥に入った。
「妖刀村正があるからもう要らないんじゃない?」
「コレクションだ」
「いやさっき暴れたいって」
「うむー……なら定期的に交代するか」
「それでいいんだ」
そんな会話を知らない店主が刀を持ってきた。
「妖刀濡れ鴎じゃ……」
「濡れ鴎……」
「とある文献にはこうある。妖刀に魅入られたカモメさんが寄ってきた。するとふと我に返り、飛び立つカモメさんをシュパーとしたという伝承が残されておる」
夜空が驚いて叫んだ。
「あの最速の鳥をッ……ありえん!!」
そんなやり取りを見ながら美雨は冷静に考えていた。
(カモメさんそんなに速いかな?)
「あまりにも常軌を逸した速度。刀を振った男の周りにはなにも残されていなかったとか」
(カモメさんも? というか刀じゃなくて持ち主が凄いんじゃ……)
刀を抜くと夜空は言う。
「どうりで美しい訳だ……まるで刀身に吸い込まれるよう……」
(……どこかで見た事ある柄の刀だけど……)
「ふむ……どうやら刀がお主を選んだようじゃな」
「モテる男は辛いな。いくらだ?」
「……一億……といいたいところじゃが……刀が主を選んだのなら。25万でどうじゃ?」
「くくく。選ばれし者、か……罪だな……」
一枚一枚ゆっくりと数えながらカウンターに置いていく。途中で重なっていた札があったので数が分からなくなり、もう一度数えだした。止めようと思ったが夜空の顔を嬉しそうな見てやめた。
「まいどあり」
お店を出ると早速刀を抜き、輝きを見る。
「うはー!!」
「ちゃんと手入れしなさいよ」
「当ったり前だろぉ~」
新しいゲームソフトを買った人のように喜んでいた。二人が外に出た頃、おじいちゃんは言った。
「さて、新しい妖刀を二本くらい入荷するかのぉ。そうじゃな。それでは次はこうしよう。五大妖刀が一つ……」
◇
本来の目的、討伐依頼を終わらせる事になった。Eランク下位のモンスター、カマイタチがターゲットである。
街の周辺に現れては人を切り刻むという事件が発生していた。それを憂いた役人が依頼を出したのだ。
「そっちに行った!! 一定距離で時間を稼いで!! 私が隙を見てッ」
「任せろ。魅入られて散れるが良い!! いくぞ濡れ鷗……」
刀を抜き並行して魔物と走る。そして、一気に間合いを詰める。
「ぐうわぁああ!!」
カマイタチの魔法、風の刃が周囲に発生し、夜空に襲いかかった。速くはない。E-もあれば避けれる速度。そして、彼はまた地面に転がり血だらけで倒れた。
「なんでェ!!」
美雨が叫ぶ中、困惑して動きを止めたカマイタチ。首を傾げながら警戒する。
カマイタチからすれば小手調べであった。魔力をあまり込めていない攻撃で、男はなにゆえ倒れたのだろうかと。この男は立ちあがるのだろうか、それとも罠なのかと警戒している風に見える。
その時、意識の外側。背後から美雨が攻撃し、一撃で倒した。美雨が近づき、モンスターが絶命した事を確認した。応急処置をするために道具を出していると夜空が目を覚ます。
カマイタチが倒れているのを見て確信する。
「やったか……ふっ。我が妖刀は速すぎるあまり、遅れて切れる……ぐっ」
再び意識を失ったのを見て美雨が慌てて近づいた。
「山井さん!!」
◇
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