23 幻のクリームソーダ
【酒場:ノックス】
夜空がバーで飲んでいると、美雨がA3の紙を持っていた。隣に座るリリンに話しかけていた。
「というわけなんです。行きましょうよ!!」
「ああ? そこのクリーム中を誘えばいいだろうがァ」
「あー。なんとこれ、条件が女性だけの依頼です」
「あ? 私はそんなに暇じゃねェんだよ」
「えー残念だなー。女性同士なら夕凪さんの話もできるかもしれないのに」
「仕方ねーなー。丁度仕事が一段落ついたとこだしな~」
夜空が依頼書を見ながら言う。
「最低条件が女性三人って書いてるぞ」
「中々捕まらなくて。だからダメ元でリリンさんに」
「ダメ元? まさかてめぇ、さっきの嘘じゃねェだろうな」
「……いやぁ? それは本当ですよぉ」
動揺する美雨。リリンが疑いながらも立ち上がる。二人で勧誘するために動き出した。面倒な気配を感じた店内の人たちが不自然に距離を取り始める。
「大変そうだな。ん?」
夜空が大蛇討伐と記載された下の欄を見る。備考欄だ。そこには”期間限定。幻のクリームソーダ始めました”と書いてあった。
「まさかっ。俺を差しおいて味わう気かッ……ぐぬぬぬ。許せん……ッ」
夜空はバーの外に出る。路地裏に入ると闇魔法を使った。黒い魔法陣が怪しく光を出す。すると魔法陣から銀髪赤眼で悪魔のような翼を腰から生やした美しい女性が現れる。召喚魔法だ。
「久しいな。ドッペル」
「お久しぶりですマスター。再び出会えたことを嬉しく思います」
「……あれ? 契約期間すぎてないか? なんで呼び出せるんだ?」
「それは再契約しましたから」
「なにそれ知らないけど?」
「裏技みたいなものですので。特にマスターを害するものではないのでご安心を」
「ご安心って……まあいいや。呼び出された理由は分かってるな? 例の物を手に入れたら影転移で俺のところへ……」
「心得ております」
「あ、その姿はまずい。なにか別の……そうだ。今宵の姿になればいいか。似た人は世界に数人いるって話だし。髪だけ変えて」
「畏まりました」
様々な技を駆使した遠視でバーの中を覗くと目標を発見した。そして、ドッペルは一瞬で変化した。
「服はドッペルのセンスに任せる」
するとそこから黒い髪が少し長くなり、桃色の癖毛に変化した。そして、ピッタリとした執事の服を着用する。
「なぜその服で瓶底のグルグル眼鏡を?」
「顔に注目させることで逆に気が付かないという作戦です。心理学に精通してませんが、そんな感じです」
「似ててもそんな偶然あるんだ~、くらいで終わると思うけどな。まあドッペルがそう判断したならいいか。それと念のため」
空間に小さな闇が現れ、そこから可愛らしいぬいぐるみのような蝙蝠が現れる。クルクルと嬉しそうに夜空の周囲を飛ぶ。肩に乗ったのでしばらく撫でると満足したのかドッペルの周囲で任務を聞く。
「今宵を守るのも任務の一つだ」
「? あんな小娘を? どうしてです?」
「ククク、今宵は幻のクリームソーダを食べたよーと自慢してくるだろう。すると俺はこういうんだ。”あれ旨いよな”っと!! そこから息を吸うような食レポを語る俺を見て悔しがる顔が目に浮かぶ……ッ」
「なるほど、完璧ですね!!」
ポンと蝙蝠が片側だけのイヤリングに変身した。それをドッペルが身に着ける。
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