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14 暗闇に消えた男たち

 時はギャングのアジト壊滅よりも少し前に遡る。バーが見える路地裏に数人の男が隠れていた。


「ククク。あの傷を負った間抜けそうな女を捕まえて人質にすれば……」


「あいつら無抵抗でしたからねぇ」


「クヒヒ。絶対にビビッてやがるぞ」


「これからはやりたい放題ですぁ!!」


「身代金に。日替わり動画撮影。なんでもありっすわぁ」


「特にさっきの。あの迂闊な動きは絶対に素人。俺素人好きなんですよ!!」


「あ、静かに。誰か出てきました」



 黒髪の男がお店から出てきた。


「ちっ。男か」


「弱そうですね。あの女が来るまでの暇つぶしになぶりますか?」


「いいなそれ。最期の言葉はなんだろうなァ」



 襲撃者の一人が体半分を建物から出し、優しそうな声で手招きをする。


「ちょっとそこの兄さん!! 良い話がありまっせ!!」


「俺? なになに?」


「クク、凄いムフフなお店があるんですよ。凄いのが揃ってますよぉ~」


「……ほう。そんなにすげークリームソーダが? 実に興味深い」


「え? あ、まあ。なんか専門店的なやつっすわ!!」


「気に入った。仲介料は多めに払ってやろう」


「あざーす!!」


 心の中でチョロイと笑っていた。そんな気も知ってか知らずか、男はノコノコと彼についていく。


 ひと気のない建物にくると数人の男に取り囲まれた。その中で一番格上そうな男が言う。


「さて……持ち金は当然、全部もらう。カードとその暗証番号もな。そして、時間つぶしにサンドバッグになってもらおうか」


 少し間をおいて偉そうな男は言う。


「ちなみに拒否権はねぇ。いくら泣いて叫ぼうが止めることもねェ。おっと、だが安心しろ。最期にはバラして海の中だ。手紙の一つでも置いてりゃ旅に出たと思って誰も悲しむことはないぜ。ギフェフェ」



「クリームソーダはー?」



「……」


「ああ? っんなもんあるはずねぇだろッ。馬鹿がてめぇは!! 話聞いてたのか、この間抜け!! おいやれぇ!!」


 少し離れていた巨漢が近づき、腹部に強烈な拳を叩きこむ。取り巻きがニヤニヤとその様子を見ていた。


 だが、予想とは違う状況になる。


「うぎゃあああああ!! 腕がぁ!! いてぇ!!」


 叫んだのは弱そうな男ではなかった。殴った方であった。腕が変な方向に曲がっている。


「……え?」


「今時そんな処理方法してんの?」


「な……」


 なにかがおかしいと彼等は思わず後退りをした。


「ていうかさ、あんな襲撃があったのに。こんな無警戒な男が……本当にいると思っていたのか?」


 さっきまでのアホそうな男の口調が変わっていた。決してクリームソーダの件が嘘だったからではない。


「は? はぁ?」


「て、てめぇ!! ふざけっ……」


 殴りかかろうとした男たちは硬直する。巨大な黒い四足歩行の生物らしきナニかが、夜空の後ろに居たからだ。


 次の瞬間、腕を負傷し、痛みで悶えている男を丸ごと呑み込こんだ。そして、生物らしきものはそのまま地面へ同化するように消えていった。


 呑まれた男はなんども助けてくれと言っていたが、ある時を境にその声がプツリと途切れ、辺りが静かになった。


「ひぃ!! な、なにをしたぁ!!」


 ゴロツキたちは慌てて逃げようとするが、今度は彼等の足が地面にめり込んだ。まるで沼のようになっており、黒い闇が彼等を地面にゆっくりと引きずり込む。痛みはなかったが、彼等はそれにも気が付かない。そんな余裕はなかった。


「な、なんだこれッ!!」


「うわああああ!!」


 急に一人の男が数多を抱えて発狂した。


「かなり抑えてるんだけどなァ。耐えきれなかったか。まあ。適当に楽しめよ。最期の宴だ」


「ああぁぁあ……嗚呼ァ!! うわああああ!!」


「助けて!! 助けてくれ!! 俺たちが悪かった!!」


 夜空は彼等に背を向けた。そして言う。


「ほら撃てよ。魔法を止めるには本体を叩けばいい……常識だ。さあ、しっかりと狙え」


 背中を向けている無防備の男。沼に沈んでいく男の一人が体を震わせながらも銃を抜くと奇妙な態勢で構える。


「うわああああ!!」


 叫びながら発砲した。弾がなくなるまで何発(なんぱつ)も。銃弾が尽きた頃、彼は肩で大きく呼吸をしていた。


「その態勢から全発命中。中々上手いな」



 安堵するために撃ったはずなのに、その不可解に彼はさらに恐怖する。


「な、なんで……なんで倒れないっ……あ、当たったよなぁ……ッ!!!?」


 ポタポタと血が滴り落ちていた。次第に血が滴る速度も落ちていく。背を向ける男はからかうように言った。


「ハハハ。夜だから?」



「「「「!!!?」」」」



「ば、化け物……っ!!」



「人聞きの悪い……俺はただ自分を守っただけだ。そうだろう?」


 化け物という言葉を気にしている様子はない。彼はただ遊んでいるようだった。


「誰か!! 誰かいないか!! 助けてくれ!!」


「化け物が!! 化け物に殺されるぅ!!」


「お、俺はどうなるんだぁ!!?」


 一人の男が情けない顔で問いかけた。去って行く男は言う。



「ご想像にお任せするよ」



「い、嫌だ!! や、やめろ!! 止めろぉぉぉぉ!!」


「助けてぇ!! 助け!!」


 彼等は一人残らず地面へと吞み込まれていった。



 夜の静けさを取り戻した時、足音が聞こえた。誰かが走ってきているようだ。


「兄貴!! あの女が店から出ましたぜ!! へへっ♪ 改めて見るとかなり可愛い女……ってありゃ?」


 返事はなかった。シーンとした空間に不気味な空気だけが残っていた。身震いしながらも男は一言呟いた。


「あ、兄貴?」


 その男は一晩中仲間を探した。しかし、見つからなかった。




ご一読いただき、感謝いたします。投稿は21時になります。

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