二十八話 03 大繁盛
ゴルトン商店の前で撮影機材の片付けが行われていた。
周囲にはレケットを一目見ようと野次馬が集まっている。
「今のでよかったかな……」
「ああバッチリ! 台本通りだったよ」
アミーネが言うようにゴルトンはかなり良かった。
「今の映像本当に王都中に流れたの?」
「そう考えたら急に恥ずかしくなって来やがった」
なるほど実感が無かったのか。
もし何万人もみてるって実感があったら普通はあんなに堂々としてられない。
「ありがとうございますレケットさん」
「こっちこそ。資金援助ありがとうございました。でも面白いアイデアですね。看板みたいって言われてる《マジックビジョン》を、本当に看板みたいに使っちゃうんなんて」
「ほんと凄いですテルト!」
俺は休憩してるレケットと言う女性レポーターに声を掛けた。
レケット達の放送局はいわゆる国営放送らしい。
運営資金にはそれ程余裕が無いらしく、俺の思い切った宣伝放送の提案に快諾してくれた。
ちなみに《マジックビジョン》を作った人の事を聞いてみたけど、残念ながら何も知らないそうだ。
まあそっちはアグニスに任せておくか。
「どれくらい効果があるかなぁ」
◇◇◇
宣伝放送の翌日。
朝から人の並がゴルトン商店に押し寄せていた。
「ここが《マジックビジョン》でやってたお店ね」
「いい感じじゃない?」
「へぇ本当に洒落てるね」
「入ってみよう」
店の外からも店内が見えるけど店内からも店の外が見える。
開店前から並ぶ客の行列にゴルトンとアミーネは軽く笑顔が引き痙っていた。
「いらっしゃいませー!」
「このカゴを持って……」
「知ってるよ」
エナがカゴの説明をしようとしても誰も訊かずにカゴを手にとっていく。
間違いなく宣伝放送を見た人達だ。
ガヤガヤガヤガヤッ…………
おいおいどう見てもこの狭い店に入り切らないぞ。
まさかこんなに宣伝の効果があるとは思わなかった。
「はい! 42ルドになります!」
「ありがとうございました! 次の方どうぞ!」
アミーネが大量のレジをさばいていく。
元々利発なんだろう俺より早い暗算で会計をしてる。
ソロバン習ってる友達があんくらい早かったな。
「おう酒もあるのか」
「本当になんでもあるなぁ」
やっぱアルコールは売れ様だ。
「テルト! パンが切れそうです!」
「今持っていく!」
俺は少し離れた契約したパン屋に大急ぎで走って戻る!
「こっちはクシと手鏡が足りない!」
「ちょっと待ってー!」
クシと手鏡は……それは倉庫か!
こっ、これかな? いや違うこれか!
ヤバいこのペースで在庫が足りるかな。
猫の手も借りたいぞ!
あれ? シャロンはどこだ? シャロン助けて!
◇◇◇
「はぁ…………疲れた」
「凄い数のお客さんでしたね」
1日が終わって俺は机の上に突っ伏してた。
正直《陽炎の迷宮》よりキツかった!
「信じられねぇ! なんて売上だ!」
「凄い!」
ゴルトンとアミーネが帳簿の計算が終わって歓喜の声を上げる。
相当かせてたんだろう、そりゃ良かったねぇ。
「でも毎日これだと大変です。私達もいつまでも手伝える訳じゃないですし」
「いや宣伝後の初日だから特別多かったんだと思う、こんな勢いは最初の数日だけだろう」
とは言え明日明後日までは同じくらい人が来そうだから鬱になる。
「でも1人くらいは雇った方が良いな。俺とアミーネだけじゃさばき切れねぇ」
それはいい、是非明日からでも雇ってくれ。
「取り敢えず初日は乗り切った! 成功を祝して乾杯しよう!」
「はい!」
「おーっ!」
カン カーンッ!
アミーネとエナは元気だねぇ。
まあ明日もあるし食べるか!
「へへっ俺は何もしてねぇけどな。ご相伴に預からせて貰うぜ」
「いいぞどんどん食え。お前の金もこの店の改装費につぎ込んだからな」
「はぁ? なに勝手な事してんだテルト! いくらだ? いくらつぎ込んだんだ? まさかパーティの運用資金全部じゃねぇだろうな!」
悪いなクーベルお前の物は俺のもの。
大体お前に金を渡してもロクな使い方しないんだ。
ゴルトン商店に投資しといた方がマシ。
「ところでクーベル。昼間渡した金貨は少しは増えたか?」
「あっ? あれは……その、また預金してきた。次は必ず下ろして来てやる!」
「よっぽど預金が好きらしいな。だからお前の分もこの店に預金しといてやった。手間が省けたろ?」
どうせそんなこったろう思ったよ。
これで少しは学習したか?
「何言ってやがる! それじゃ金が欲しい時に自由に引き出せねぇだろ!」
「お前の預金先の競闘場も同じようなもんだろ」
「もしかして預金先ってギャンブルですか? いけませんよクーベルさん」
「ばっかだねぇコイツは」
「うっせぇ! 俺の金をどう使おうが俺の勝手だろ!」
ならお前の金をどう使おうが俺の自由だな、うん。
「まあまあ、利益が上がったらちゃんと返すって」
まあ順調なら五年後までには全額戻って来るかもな?
捨てるつもりの投資だし契約は適当だ。
ゴルトンは返すって言ってるけど期待はしてない。
「さあ食べよう! 料理が冷める前に」
「話を反らすんじゃねぇ!」
俺達《極昂の虹》が1ヶ月で稼いだ額のたった半分だ。
クーベルもお世話になってんだからグダグダ言うなって。
◇◇◇
夜シャッター代わりに木の板で覆われたゴルトン商店の前。
そこに数人の男が立っていた。
「この店か……」
「新参者のゴルトンめ、酒や食い物まで手ぇだしやがって」
近所にある酒や食料を売ってる店の店主達だ。
今日のゴルトン商店の大騒ぎとは対象的に売上が激減している。
「どうする」
「どうにかするか……」
男達は苦虫を噛み締めた顔でゴルトン商店の看板を睨みつけていた。
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