二十八話 02 大宣伝
店の入口の改装と一緒に店内の配置換えも済ませておいた。
「店内の棚は縦長に配置する」
「なるほどさっきも言ってた様に、入口から客が棚で隠れないわけか」
「いや、単純に商品を沢山並べられるからかな? 一番右に日用雑貨。真ん中に便利グッズ。左に食品を置く」
ここはコンビニと違う。
ゴルトン雑貨店は長方形の形をしていて短辺側が出入口だからまったく同じには出来なかった。
「おい食品って! そりゃ不味いだろ!」
「なんで?」
「いや、だってここは雑貨屋だし……」
「雑貨屋じゃない。何でも売って何でも買えるコンビニだ!」
「コ……なんだそれ?」
俺は思わずコンビニって言ってしまった。
この言葉はこの世界に存在していないし、翻訳されてるのか疑わしい。
もうコンビニって言うの止めよう。
「ともかく売れる物は基本何でも置く、お酒って売れる?」
「許可を取れば……」
お酒は国によって売れる店が限られてたりするけど、この世界でもやっぱり許可は必要みたいだ。
「じゃあそれも、で一番置くには滅多に売れないけど値段の高いアンティークとか」
「おいおいマジで何でも売る気かよ……」
いやいやこのアンティークは元々雑貨店にも置いてあった物だぞ。
誰が買うんだってずっと思ってたけど、おっさんも忘れてたのかよ!
「いや、正確には実際に色々と置いて何がよく売れるかチェックして、売れ行きが良かったらそこにシフトして行くんだ」
「なるほどな……」
こんなアンティークよりはどっか中古に売り飛ばして、もっと売れそうな物置こうよ。
でもそういやゴルトンは宝石細工のアンティークで一山当てたんだっけ。
その成功体験から抜けられないのかもしれない。
「そして極めつけがこのカゴだ」
「そのカゴが目玉商品なのか?」
「いいや違う、これは商品を入れる為のカゴで売り物じゃない」
「はぁ?」
日本のスーパーでは常識だ。
「こうやって客が入口から入ったら、ここでカゴを受け取って」
「店内を回りながら商品をカゴに入れてもらう」
「そして出る時に会計カウンターにカゴを置いて精算する。どう?」
「なるほどなぁ」
カゴは小さめだけど雑貨店の商品は小物ばかりだ。
カゴがあれば両手で持ちきれなくて買うのを諦めるなんて事が減ると思う。
「凄い……と思うけど。それって一々客に説明するわけ?」
「最初はそうした方がいいと思う。そのうちこれが一般的になれば、客も店側もかなり楽になるから」
これがネックだなぁ。
新しい文化が浸透するのは大変かも知れない。
「しかしよくこんなもの思いついたな……」
「思いついたんじゃ無くて、俺の故郷じゃこれが一般的なんだ」
「へぇ……」
流石にそこまで褒めないでくれ。
これは俺が一から生み出したアイデアじゃない。
自分の手柄みたいにするのは気が引けてくる。
「凄いな……、何というか見違えるように洒落た感じに様変わりだ」
「ほんとだね」
「さあ次は最後の仕上げだ」
「最後の仕上げ? もう店は商品も並べ終わって完成してねぇか?」
「いやあとひと押し」
使える物は全て使う。
もうこの世界への影響なんて考えるのは止めだ!
◇◇◇
翌日の昼。
『ゴルトン雑貨店』あらため『ゴルトン商店』の前には、黒い円筒形のカメラを持った男の人と、マイクを持った女性が来ていた。
「こんにちは皆さん、リポーターのレケットです! 今日は西区にあるゴルトン商店にやって来ました! こちらが店主のゴルトンさんです」
「どうもゴルトンです」
女性はレケットと言う名で、栗色の髪をポニーテルに結んだ30歳手前の美人だ。
彼女は筒を担いだ男の方を見ながら話し始め、隣のゴルトンにマイクを向ける。
「このお店は他のお店と違って色々と画期的だって聞いてるんですが、どの辺が画期的なんですか?」
ゴルトンはレケットではなくカメラを担いだ男に向かって話し始める。
このカメラは《魔眼の水晶球》を改良した物で、そのレンズがゴルトンとレケットの映像を王都中の《マジックビジョン》に映し出していた。
『まずはこの入口です。全面ガラス張りで店内が見通せて洒落てるでしょう!』
『確かに、とても透明で綺麗なガラスですね! 思わず入って見たくなっちゃう!』
「へぇ凄いな」
「本当オシャレねぇ」
町行く人が足を止め《マジックビジョン》に写ったゴルトンとレケットを見上げる。
『それだけじゃありません! この店には独特のルールがありまして』
『独特のルールですか?』
『はい。お客様にはお店に入ったら入口のこのカゴを手に取って頂きまして』
『そのカゴを買ってもらうんですか?』
『いえ、このカゴに商品を入れてもらっって。そしてこの出口で会計をして貰うんです』
ゴルトンはテルトから聞いた話を噛み砕いてわかりやすく解説していた。
『なるほどー。面白いアイデアですね!』
「これはラクそうねぇ」
ゴルトンは見た目はともかく喋りは中々のものだった。
人を引きつける魅力的なトーク力を持っている。
道行く人を次々と画面に引き付けた。
『うちにはお客様に役立つ様々な商品がありますからね。それこそ両手で持てないくらいにね!』
「確かによく手で持ち来れなくて困る事ってあるわね」
『本当にそうですね。店内には食品から日用雑貨、それに便利な道具まで何でも揃ってます!』
『ええ。是非近くに来たら立ち寄って見て下さい! きっとご満足いただけますよ!』
「今度行ってみようかな」
いつの間にか王都中の《マジックビジョン》の前に人集りが出来ていた。
『以上、現場のレケットからでした! スタジオのマッケロさんに返します!』
これがこの世界で初めて行われた宣伝番組であり。
その効果はたちどころに現れる事になった。




