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二十五話 01 特例の冒険者

 俺ことテルト・リバースとエナとクーベルはロイナードに呼ばれて冒険者組合クロイセフォン支部に来ていた。


 組合の建物の中には大勢の冒険者が集まっていて何やら騒々しい。

 建物に入り切らず外にいる冒険者の何人かが俺達を睨みつけている。


「なっ、何だよこれ」

「くっそ……ロイナードのおっさん何のつもりだ」

「いいから早く入って」


 俺達が建物内に入るのをためらっていると後ろから女性の声が掛かる。


 振り向くとロイナードと同じパーティ《蒼炎の大掟(そうえんのたいてい)》のアグニスが立っていた。


「あっ、アグニス……さん」


 アグニスは薄い笑いをしながら俺達に建物に入る様に促す。

 笑顔とは裏腹に圧が凄くて俺達は押し出されるように建物の方に歩かされた。


「やっぱりあの事だよな……」

「きっと大丈夫ですってテルト」


 俺達は冒険者しか入れない《陽炎の迷宮(ダンジョン)》に勝手に入ろうとしている。

 冒険者になれる18歳まで待ってられないからだ。


 でもその事はロイナード達にはバレている。

 いつかは力づくで止められるかもと思ってたけど、ついに来たか。


バタッ ザワザワザワザワ…………


 扉を開いて建物に入ると左右の椅子一杯に大勢の冒険者が座っていて凄い熱気が押し寄せる。


 正面のカウンター前の右にロイナード。

 左に高そうな服を着た銀髪のおっさん。


 少し右側に間を置いてピグザール。

 右に40前後で黒茶髪のゴツい男。


 さらに右に一緒に入って来たアグニスが並ぶ。


「来ましたねテルトくん」

「こっ、こんな子供達が!」

「……一体これは、何の用ですか……」


 ロイナードが俺の名前を呼ぶと銀髪のおっさんが驚いた顔をする。

 俺達は聴衆が睨みつける中、ロイナードの2メートル手前あたりまで歩いて行った。


 俺の中で緊張が走る。

 いきなり袋叩き……なんてされないかな?


「貴方達を特例で冒険者にするように推挙しました」

「えっ!」

「本当ですか?」


 ロイナードの答えは予想外の答えだった。

 勿論良い意味で!

 ずっと特例で何とかならないかなーと思っていた。断られ続けて来たけど。


「うっ嘘だろ……あいつらが!」


ザワザワザワザワ…………


 だけど周囲のざわつきからはあまり歓迎されてる様には感じない。

 これはまだ喜ぶのは早いかもしれない。


「詳しいは話はギルド長からお話が」

「私はギルド長のゲラルフだ、君がテルト・リバースくんかね?」

「はい」


 銀髪のおっさんはギルド長だったのか。

 確かにそれなりに威厳を感じる気がする。


「ロイナード様のたっての願いだ、特例として君達を冒険者とする準備がある。君は冒険者になる気はあるかね?」

「はい! もちろん!」


 ギルド長の顔と口調からは前向きな印象を受けた。

 そうだ他の冒険者が反対してもギルトのトップが認めれば良いんだ!


「ふむ……ではテルト・リバースくん、君達を《F級(エフランク)》冒険者として迎え入れよう」

「はい!」

「やったぁ!」


 うおぉーーっ!

 珍しく物事が俺の思い通りに進んでる! なんか後が怖くなってきたぞ!


 ともかく、これで冒険者を敵に回さずに堂々と《陽炎の迷宮(ダンジョン)》に挑める!


「そんな! ギルド長! 前例がありません! せめて試験くらいは!」

「そうだそうだ!」

「もちろん、これは暫定的なもの。もし実力が伴っていなければ除名するので覚悟するように」

「わかりました」


 チャンスがあるだけで十分だし今のエナとクーベルとなら《陽炎の迷宮(ダンジョン)》で一番雑魚の《砂足蜘蛛(ガアラネア)》だけなら蹴散らす自身がある。


 そこからじっくりレベル上げでもしてもっと強くなっていけば良いんだ。


「本来なら《A級(エーランク)》からで通用すると思いますが、……まあすぐに適正なランクに上がれるでしょう」

「いやでもそれでは……」


 まだ納得してない冒険者が居るみたいだけどもうこの流れは変わらなそうだ。


「腕は私も保証します」

「王国最強の剣士と言われるアグニス様まで……」


ザワザワザワザワ…………


 ん? ロイナードはともかく何でアグニスまで?

 腕を保証も何も俺達が戦う所を見た事も無いはずだけど。


「ではパーティの確認をする。テルト・リバース、エナ。ウェルカトル」

「はい!」

「……はい」


 ギルド長が手に持った証書を見ながら名前よ呼ぶと俺より先にエナが返事をして少しバツが悪い。


「クーベル・ウィーカーク」

「えっ? 俺もなれんのか?」


 確かロイナードはクーベルが冒険者になる事に反対していたはずだけど、まあそうだとしても荷物持ちとして連れて行く事は出来るから意味はないか。


「それと……プリシナ・イエサーネル⁉」

「はい」

「⁉ プリシナ!」

「ええっ!」


 俺はまさかの名前が呼ばれて驚いてさらに後ろからプリシナの返事がして驚いて、驚きの二重奏だ!


「聖女様何故ここに?」


 ていうか名前を読み上げたギルド長まで驚いてるし! どういうこと⁉


「私も皆さんに付いて行く事にしました」

「いやいやいや、何勝手な事言ってんだおめぇ!」

「どうするんですか? テルト」

「そりゃプリシナが仲間なら心強いけど。でもプリシナは街中の怪我人を直すのが使命なんじゃないのか? 冒険者なんかになって良いのか?」


 正直俺達が良いって言っても世間が許すかどうか。

 それにプリシナに何かあった時の責任も重い。


「はい。《陽炎の迷宮(ダンジョン)》の中の魔物も《聖霊》が倒すべき敵ですので」

「いいのかな……」


 《聖霊》の目的が何なのか俺は知らないけど、俺は思わずロイナードの顔を見てしまう。


「おや? みなさん知らなかったのですか? まあその事は後で聖教会にでもお伺いしておきましょう」


 そういえばプリシナは聖教会の所属なんだっけ。ならそれが一番間違いないな。


「それではパーティ名はどうするかね?」

「パーティ名?」


 それってロイナードの《蒼炎の大掟(そうえんのたいてい)》みたいな奴か。

 どうしようかな、正直何でもいいけど。


「どうします?」

「…………虹」


 特に何か意識した訳じゃないけど、ふとエナの顔見てあの時の虹色の光が見えた事を思い出した。


 俺がこの世界に来て最も苦しかった時に見た虹の光。


「極昂……」


 そう言えばその後《極昂の心ペルグランデ・アニムス》ってスキルを手に入れたな。

 あれって何だったんだろう。説明を読んでもよく分からなかったんだよな。


「虹の極昂……《極昂の虹(きょっこうのにじ)》ですか?」

「なんだそりゃ?」

「良いと思います! 私も虹が好きだし!」

「ではそれで登録しておこう」

「あっ……いや……」


 いや長く使うかもしれない。

 もっと考えて格好いい名前を付けたい。

 うーん何がいいかな。……暗黒、漆黒……中二くさ過ぎるな。


「それと言い忘れていたが、1週間以内に《陽炎の迷宮(ダンジョン)》の一番低層のフロアを踏破する事。それが出来なければ即除名とする」

「……わかりました」


 後出しの条件か……それがどれくらい難しいのか知らないけど、どうせ断れないしどうでもいいや。


「うむ、では詳しいことはロイナード様から指導を受けたまえ」

「はい」


 ……と言うかパーティ名はもう決まったっぽい?

 え? 一晩じっくり考えたいんだけど? 後から変更できるよね?


「ではそうですね、何時もの所で話をしましょうか」


 それは助かる。こんな息苦しい場所にあまり長居したくない。


「マジかよあんなガキが? どうやってロイナード様に取り入ったんだ?」

「まあどうせ、1週間で低層フロアを踏破するなんて無理に決まってる」

「それどころか魔物の餌になるのが関の山さ」


 どうしても耳に入るやっかみ言葉を俺達は聞こえないふりをして外に出た。




◇◇◇




 テルト達が居なくなった冒険者組合の中はしばらく管を巻いていた冒険者達も疎らに解散していた。


 だが《A級(エーランク)》冒険者《荒砂の猟犬(こうさのりょうけん)》のマルキス達だけは青い顔をして最後まで残っていた。


「おいマルキス……あいつら冒険者になっちまったぞ……」


 マルキス達が《A級(エーランク)》冒険者になったのは《砂足蜘蛛(ガアラネア)》を倒した功績からだ。


 しかし実際に《砂足蜘蛛(ガアラネア)》を倒したのは先程のテルト達だ。

 テルト達はまだ18歳になっていないので冒険者になれるのは数年後。

 だからバレるのも数年後。何とでもなると思っていた。


「どうすんだよ、あの事がバレるんじゃ……」

「くっ……」


 だがそのテルト達がたった今マルキス達の目の前で冒険者になってしまった。

 このままではマルキス達の嘘がバレるかもしれない。


「マルキスちょっとこっちにこい」

「はい何ですか?」


 マルキスは受付の男に呼ばれて駆け寄る。


「お前達《荒砂の猟犬(こうさのりょうけん)》は《砂足蜘蛛(ガアラネア)》を一度倒したっきりで、その後一度も討伐の報告が無いぞ」

「いやっそれは《砂足蜘蛛(ガアラネア)》なんて強い魔獣たまたま倒しただけで……」


 当然だマルキス達に《砂足蜘蛛(ガアラネア)》を倒せる実力は無い。

 《陽炎の迷宮(ダンジョン)》でもずっと逃げ回っていた。


「たまたま? そりゃ困るな《A級(エーランク)》冒険者なら安定して倒せないと」

「そっそれは……」


 《A級(エーランク)》冒険者の条件は《砂足蜘蛛(ガアラネア)》を普通に倒せるレベルだ。


「一週間以内に一体以上の《砂足蜘蛛(ガアラネア)》を討伐しろ。もし出来なければ降級と減給のペナルティだ」

「えっ!」

「そんな!」


 別にテルト達が冒険者にならなくても何れバレる嘘だった。


「話は以上だ」

「くっ……」


 マルキス達はいよいよ追い詰められた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] う~ん、これは、 今まではマルキス達にはざまぁ展開がくるのかと思ってたけど、 逆にピンチになってるのを、主人公達が助けるフラグが立ってるな まさか今後も主人公が倒した功績を横取りして…
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