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二十一話 02 聖騎士二人

「なんの騒ぎですか!」

「大丈夫ですか聖司祭様!」


 俺がセイクスとザイーロフに捕らえられてすぐ聖司祭の寝室へ大勢の聖騎士や兵士が騒ぎを聞き付けて雪崩込んできた。

 かなりやばい状況だ。


「賊だ! そこの賊が私の命を狙い侵入して来たのだ!」

「何者だ! フードをぬがせろ!」

「さぁ!」


 入ってきた聖騎士の言葉にザイーロフが俺のフードをめくり上げる。


「こっ子供⁉」


 俺の顔を見て何人かの兵士は動揺した。

 俺みたいな子供が聖教会の総本山に単独で乗り込んでくるなんて普通はあり得ないだろうからな。


「見た目に惑わされるな。早くその暗殺者を殺してしまえ!」


 いや、でもこれはチャンスかもしれない!

 ここで聖司祭の本性を暴露すれば、まともな聖騎士や兵士が味方になる可能性がある!


「ふざけるな! お前がプリシナを暗殺しようとしたんだろ!」

「プリシナ? 聖女プリシナ様の事か?」

「どういう事だ?」


 何人かの兵士は狙い通り俺の言葉に反応した。

 いけるか?


「そこの聖司祭が聖女を暗殺しようとしたんだ! そこに倒れてるキャスダルが暗殺者で、口封じに聖司祭が殺したんだ!」


 ここに居る聖騎士や兵士の何人がまともな人間なんだろう。

 頼む! 俺の言葉を聞いてくれ!


「賊の戯言だ! 惑わされるな! 私と賊とどちらの言う事を信じるべきか、それくらい分かるだろう!」

「なるほど。確かに」

「たかが賊と聖司祭様の言い分。比べるまでもありませんね」

「くそっ!」


 駄目だ多くの兵士はまったく俺の言葉を取り合おうとしない。

 まあ、これが当然なのかもしれない。


「そうですね。普通ならですが」

「実はかねてより、この少年にとある容疑がかかっており。我々はずっと追っていたのです」

「……何?」


 セイクスが演技かかった口調で同意し。続けてザイーロフが何やら語りだした。

 俺の容疑? 何の事だ?


「東の辺境の地セラスール領を治めるハイルム男爵。その一家殺害の容疑がね」

「えっ?」


 ちょっと待て何の話だ?


「何だって! その少年はそんな重罪人だったのか!」

「嘘だっ! 俺はそんな事をしていない‼」

「まだ白を切るか! こんな悪人は裁判などせずに殺してしまえ‼」


 くそっ、俺を冤罪で嵌めようとしてるのか!

 俺を貶めるためそこまでするか!


「まあお待ち下さい。我々がその件を調べていくうちに面白い事が分かりました」

「どういう事かね?」

「調査するうちに男爵家の元メイド、マリエールなる女性から興味深い証言が得られたのです」


 マリエール? エナの元メイドだった人か。


「ハイルム男爵の兄である前ロベルム男爵には、エナ・ウェルカトルと言う娘がおり。その娘は触れた男性を疫病で呪い殺してしまうという、恐ろしい呪いをかけられていたのです」

「なんだって‼」

「その様な罪深き呪いを一体誰が⁉」


 何だか流れがおかしい。

 まさかその呪いの犯人まで俺になすり付けようとしているのか?


「そしてなんと、呪いをかけた真犯人はハイルム男爵とその娘のリベット・ウェルカトルだと言うのです!」

「なんだって……⁉」


 どっ、どういう事だ⁉ その事は俺とエナとシャロンしか知らない。

 マリエールもリベットが犯人だって事までは知らなかった筈だ‼


「男爵家と言えど許されんぞ!」

「聖教会の名の下今すぐそのエナ嬢とやらの呪いを何とかしなければ!」

「ご安心下さいエナ嬢の呪いはつい最近解呪されております」

「おお良かった。それは何よりだ」


 話を聞いていた聖騎士が興奮した様子でいきり立つ。

 別の聖騎士はエナの事を心配する。

 まともな聖騎士も少しは居るらしい。


「そしてエナ・ウェルカトル嬢の呪いを解いた者こそ────」


 セイクスが俺の前に一歩踏み出し周りの騎士と兵士を見渡す。


「ここに居るテルト・リバース少年だと言うのです!」

「⁉」


 そして俺に左手をかざし真実を告げる。


 えっ? 何でその事を⁉

 いや違う、そんな事じゃない。それ以前になんでそんな事を言うんだ?


「セイクス様どういう事ですか!」

「なんの事は無いハイルム男爵一家が全員亡くなったのは、呪いが跳ね返った結果の自業自得。少年は潔白だったのです!」

「なるほど。そういう事だったのですね」


 俺を貶めようとしてたんじゃ無かったのか?

 これじゃあまるで…………まるで俺を守る為の証言じゃないか‼


「そんなメイド1人の証言など何の証拠にもならん!」

「私もそう思いまして、さらに調査を続けました」


 聖司祭がセイクスの話の邪魔をすると今度はザイーロフが語りだす。


「続いてはアルセフォン領を治めるハーツゲッヘ伯爵の証言です」

「あの名君と評判の?」


 ハーツゲッヘ伯爵か懐かしいな。

 今どうしてるだろうか。


「はい。先ごろガレオロス盗賊団なる賊が伯爵家の宝物庫にある宝を狙い忍び込んだのですが……」

「その噂は私も聞いた事がある。確か謎の少年が解決したと聞いている」

「それなら私もあるぞ。しかもその後で伯爵の目の前で第1騎士団のアレクレスと決闘し、なんと勝ってしまったとか…………まさか!」


 ザイーロフの口上を遮って別の聖騎士が割って入った。


「そう。その少年こそ、このテルト・リバースだと言うのです!」

「なんですと!」

「やはりそうか!」


 間違いない……セイクスとザイーロフは俺の味方をしようとしている。


「それは本当ですかザイーロフ様!」

「……だが確かな証拠はあるのか? その少年だという」

「証明しましょう。さあ立て」


ガシッ……


「⁉」


モゾモゾ……


 ザイーロフは俺の腕を掴み立ち上がらせ俺の上着の内ポケットに手を入れて何かを探す。


 そして掴んで取り出した。

 俺がハーツゲッヘ伯爵から貰ったこの世界で最初の宝物である勲章を。


「この少年が持つこの勲章がその証拠です。少年はこの勲章を肌身離さず持つことを伯爵と約束したそうです」


 ザイーロフは勲章を高く掲げ周りに見せてまわった。


「おお、それは伯爵家の勲章!」

「間違いない本物だ!」


 セイクスとザイーロフはハイルム伯爵に雇われた暗殺者の筈だ。

 いやミッションでは確か《暗殺者》じゃなく《追跡者》だった。

 俺の早とちり……勘違いだったって事か……!


「我々の調べる限り少年は旅の行く先々で、賞賛に値する勇気ある行動を取って来ました」

「聖霊に選ばれし同士達よ! この様な功績ある少年が、意味もなく聖司祭様の命を狙う事などありうるだろうか‼」


 急に俺の目から涙が出てきた。

 俺はこの2人を殺した、殺そうとした。なのにそれなのに…………。


「確かに……、しかし、ならば…………まさか!」

「聖司祭様、何時の頃からでしょうね? 貴方が顔にその仮面を付けるようになったは」

「くっ……!」


 ザイーロフが俺を押さえ付けていた手を放して聖司祭に詰め寄る。


「ベルワール! もう傷は治ったはずだ。聖司祭の仮面を剥ぎ取りたまえ!」


 セイクスが聖司祭の側にいたベルワールに命ずる。


「まっ、待て……!」

「聖司祭様、後ろめたい事が無いのならばその仮面を外してもらいましょう!」

「やめっ……‼」


パカーーーーンッ!


 俺が刺した筈の傷が消えたベルワールの剣が聖司祭の付ける純白の仮面を両断すると、ゆっくりと左右に割れて弾け飛ぶ。


「なっ、その顔は!」

「やはり……堕ちていたようですね、魔道に!」


 俺は涙をばれない様に拭き取って聖司祭の顔見た。

 そこにはとても人に見えない悪魔の様な姿があった。これに似た姿をつい最近見た記憶がある。


 《魔人化(デモニック)》したアレクレスだ。


「くっ、くそぉおおおおおぉぉぉぉーーーーっ!」

「同士達よ! 聖司祭を、いや元聖司祭マクウェルを捕縛せよ!」


 《魔人》の姿の聖司祭が絶叫し暴れようとしたが何人もの聖騎士の前には多勢に無勢でそのまま取り押さえられた。

 《魔人》は相当強い筈だけど、ここに集まっていた聖騎士も皆並の腕では無かった。


 敵に回さなくてよかった。



【ミッション「聖女の命を狙う聖司祭を捕らえろ」達成】

【スキル「《失血耐性(しっけつたいせい)》」を取得しました】

【閉じる】



 聖司祭を捕らえたのは俺じゃないんだけな。

 まあ条件に俺が捕まえなきゃ駄目とは書いてなかったか。


 まあともかくミッションコンプリートだ。




◇◇◇




「よくやったな少年」

「素晴らしい勇気だ、将来聖騎士にならないか?」

「君の活躍は聞いていたよテルト・リバース君」


 聖司祭を取り押さえて事後処理が進む中。何人もの兵士や聖騎士が俺の肩を叩いてねぎらいの言葉を掛けてくれた。 


「久しぶりだね少年。何か私達に言う事はないかい?」


 そして軽い聴取を終えたセイクスが俺に声をかけてきた。


「えっと、ありがとうございます」

「君に刺された胸がまだ痛むんだがね」

「ごめんなさい、あの時は……」


 セイクスがわざとらしく胸を押さえて痛がるふりをした。

 そこ俺が刺した位置と違うんですけど。


「俺達の事をハイルム男爵が雇った暗殺者だと思ったか?」

「……はい」


 あの時はエナを守るのに必死で大事なものを見落としていた。


「まあいいさ。しかし無茶をする、私達が来なければどうなっていたか」

「はい」


 確かにセイクスとザイーロフが来なきゃ俺が悪者にされていた可能性が高かった。


「いや無茶は若いうちにしておくべきだ」


 後ろから聴取を終えたザイーロフが会話に加わった。


「こらこらザイーロフ説教するのが我々の役目だよ。助長してどうする」

「サイクスが言っても説得力が無いんだよ。大体お前があの時悪ふざけして悪役ぶらなければ、こんなややこしい事には…………」

「ぐっ! ぐわぁあああぁーーーーっ!」


 ザイーロフとセイクスが言い合いを始めそうになった時、聖司祭の絶叫が部屋に響き渡った。


「大変だ! 司祭様が!」

「死んでる……。いや蟲か、これに殺されたようだ」


 聖司祭は黒い血を流しながら倒れていた。


 近寄って見るとその胸には気色の悪い虫の幼虫の様な生き物が蠢いている。

 これも最近見た記憶がある。

 アレクレスを《魔人化(デモニック)》させた原因の蟲だった。



【《魔蟲》】

魔霊にとりつかれた特殊な昆虫。

動物鑑定(どうぶつかんてい)》では詳細は分からない。

【閉じる】



 《動物鑑定(どうぶつかんてい)》は無理か。



ブシャッ!


「……どうやら、この事件にはもっと裏がありそうだね」


 セイクスが蟲を剣で切り潰すと、そう小さな声で呟いた────

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[良い点] 聖女暗殺の依頼人、2人の追跡者との決着 残ってた2つの伏線が同時に回収されてしまったw これでモヤモヤほとんどなくなったな まあ司祭を魔人にした黒幕はまだいるみたいだけど
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