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四話 03 盗賊を追え

 俺はゴルトンの叫び声を聞いて2階に上がろか一瞬迷った。


 泥棒が入って来たのは絶対に2階だ。なら出るのも当然2階の窓。

 店の外に壊れた窓の破片が落ちるのが目に入る。

 つまり。


ドン!


 俺は店の入口のドアを叩いて外に出て上を見上げた。

 その後にシャロンとアミーネが続く。


 壊れた窓からゴルトンが見てる方角を見ると屋根の上を一瞬何かが動く!


「向こうだ! ちくしょう俺の宝石細工を盗んで行きやがった!」



【ミッション「宝石細工を奪い返せ」を開始しますか?】

条件、ゴルトン商会から盗まれた宝石細工を奪い返す。制限時間2日。

注釈、倒す必要なし。

報酬スキル、《衝撃耐性(しょうげきたいせい)

【はい/いいえ/詳細】



 久しぶりに発生したミッションだ。

 ショートカットキーに設定されている『はい』を高速タッチ!


「《跳鼬の飛脚(ストラート・サリア)》!」


タンッ! タンッ!


 俺はスキルと壁の突起を利用して一気に2階の屋根に駆け上って、すかさず泥棒を探す。


 もう日は落ちて薄暗かったけど街中を魔光灯が照らしていて視界は悪くない。

 屋根の上を駆ける2つの影を見つけるのに時間は掛からなかった。


「逃がすか!」


タンッ! タンッ! タンッ! タンッ!


 屋根の高さは疎らだけど区画整備がしっかりしているからパルクールには困らない。


 泥棒も移動スキルを持っているみたいでかなり早いな。

 でも俺の《跳鼬の飛脚(ストラート・サリア)》の方が少し上らしい。もう少しで追い付けそうだ。


 ふと俺は後ろに気配を感じてチラリと見るとシャロンも猫の姿の方で追いかけて来ていた。


 かわいい……そうだ!

 俺は1つのアイデアをひらめいてポケットに手を忍ばせる。

 よく来てくれたなシャロン!


「兄貴!」

「分かってる、俺が相手する、行け!」


 泥棒は2人組で、兄貴と呼ばれた方は30歳くらいの程よい長さの青髪の癖毛に鋭い眼つきの男だ。強そう。


 もう1人は、年は俺より少し上くらいで緑髪を真っ直ぐ顎くらいまで伸ばし頭にバンタナを巻いた男。弱そう。


 盗まれた小包は緑髪の男が持っている。


「レベル12か、それでその速さユニーク持ちか?」


 青髪の男が呟くのが聞こえた。


 確かに俺のレベルは12だけどレベルが見えるスキルを持ってるのか?

 俺は自分のレベルはカードの表示で分かるけど他人のレベルは分からない。


 青髪の男が振り向く。

 慣性で急には止まらないので速度を緩めながらゆっくり身構えた。


「シャロン!」

「ミュニャァ!」

「何っ!」


 シャロンの名前を呼びながら俺は横に逸れる。


 青髪の男の前に今まで死角で見えなかったシャロンが現れたはずだ。

 打ち合わせも何もしてないし阿吽の呼吸がある訳でもない。

 ただシャロンの名前を呼んだだけ。


 青髪の男は一瞬動きが固まった。

 それで十分。


「《跳鼬の飛脚(ストラート・サリア)》!」


タンッ!


 屋根を蹴り上げ青髪の男を一気にかわす!

 強い人は相手にしないこれ鉄則。


「なっ!?」


 鋭い目の男は驚く。今更遅い!


 そのままバンタナの男に迫る。

 用があるのは盗品の小包だけだ。


「えっ?」


 バンタナの男は異変に気付いて後ろを向くと俺を見て驚いた顔をした。


「《劈く雷迅(トルエノ・ローア)》!」


バチッ! ……ピンッ!


 俺は手を掲げてバンタナの男に雷撃を放つ。

 同時に『あるもの』も一緒にげ付けた。


 バンタナの男は動作に気付いて守りの体勢を取る。


 《劈く雷迅(トルエノ・ローア)》は低威力で最大出力でも人は殺せない。

 でも無力でも無い。痺れろ!


「うわっ!」


 バンタナの男が雷撃に弾かれて盗品の小包を落とした。


「《砂塵の掴手(アンモス・ケイル)》!」


 俺は壁に手を付いて《砂塵の掴手(アンモス・ケイル)》の力をコントロールしながら慣性を殺して少し滑りながら止まる。


カンッ! コンッ!


 小包が斜めの屋根に落ちて、転げる、転げる、そして3階から落下していく。


 俺は宝石細工を見て無いから材質や硬さを知らない。

 だけど落ちたら流石に壊れるよな?


タンッ!


 俺は壁を蹴って落下する小包を抱え込むようにキャッチした。


「《衝撃耐性(しょうげきたいせい)》!」


 本来ならこの高さから落ちたら死ぬかも知れない。

 詳細を見る暇が無くて知らないけどミッション報酬の試用スキルに賭けた。


 頼む!


ドサッ!


「ぐわっ!」


 俺は石畳に背中から叩き落ちる。


 痛い! 一瞬呼吸できない!

 でもなんとか骨は折れなかった様だ。

 今の高さが《衝撃耐性(しょうげきたいせい)》で防げる限界ギリギリくらいかな。


「……キャァ!!」

「なっ何だ!?」


 近くに居た人が驚きの悲鳴を上げた。

 通行人の上に落ちなかったのが幸いだ。


「おい! 上から人が落ちてきたぞ!」

「大丈夫か? 死んだか!」

「いや動いてる、おいしっかりしろ!」


 周囲に居た人が集まり騒ぎ出す。

 俺は立ち上がりたいけど体が動かない。


 屋根上を見ると泥棒2人が俺を見ていた。

 声を上げたいけど今直ぐは出ない。


「何の騒ぎだ!」


 近くの酒場から豪華な甲冑を身に付けた綺麗に切り揃えた金髪の美形の男が出て来た。

 少し酔っているのか頰を赤く染め目も据わっている。


 ややして同じ酒場から同じ格好の男が続いた。


 2人はいかにも騎士といった格好で俺の方に近寄って来る。

 野次馬達は2人に道を開けた。


「貴様か? 天下の往来で何を騒いでいる!」

「うっ……上に、屋根の上に泥棒が!」


 俺はやっと喋れるようになったので起き上がりながら上を指差す。

 促されて騎士達が屋根上を見上げたけどそこにはもう誰も居なかった。


「誰も居ないぞ!」


ゲシッ! ……トンッ!


「痛っ!」


 金髪の騎士が俺に手加減なしの蹴りを入れてきた。

 落下のダメージも残っていたし俺は踏ん張り切れずにまた倒れてしまう。


 えっ! 何で蹴るの!?


「ふんっ」

「アレクレス様、2人ほど屋根の上を走って逃げていきました」

「そんな事はどうでもいい、飲み直すぞ」

「はい」


 真面目そうな騎士の言葉にアレクレスと呼ばれた金髪の男は興味無さそうに答え、2人の騎士は立ち去って行った。


 俺はよろよろ立ち上がる。

 嘘なんて言ってなかったのになんで蹴らなきゃいけないんだよ!


「大丈夫かい?」

「はい」


 見ていた人が気の毒そうに声を掛けてくれた。


 それより小包だ。

 俺は蓋を開けて布をほどくと中には宝石が散りばめられた球体が入っていた。


「おーっ!」

「キレイな宝石細工ね」


 見ていた人が感嘆を漏らす。


 しまった。高価な物だからこんな所で開けちゃまずかったかも。

 まあ見てしまったのだから仕方ないか。


 丁寧に宝石細工を観察すると案の定ヒビが入っていた。


「テルト!」


 ゴルトンとアミーネ人集りを掻き分けて俺の所に走って来る。


「大丈夫?」

「ごめん……」


 俺は謝りながら宝石細工をゴルトンに見せる。


「それは俺の宝石細工! 取り返えしてくれたのか!」

「でも、宝石細工に少しヒビが」

「んなモンどうでもいい。それよりテルトお前なに者だ? 軽々と屋根に駆け上がったり」

「もしかしてテルトって本当に強かったの?」


 ゴルトンとアミーネは息を軽く切らしながら目を丸くした。


「いや、ちょっと走るのが得意なだけだよ」


 移動スキルってみんなが持ってる訳じゃ無いのか。


「ともかくありがとうテルト、何か礼をしないとな」

「少し見直しちゃった」

「テルト偉い!」


 俺の評価は見直されるほど今まで低かったんですか。



【ミッション「宝石細工を奪い返せ」達成】

【スキル「《衝撃耐性(しょうげきたいせい)》」を取得しました】

【閉じる】



【《衝撃耐性(しょうげきたいせい)》】

タイプ肉体強化、消費SP0

衝撃ダメージを50パーセントほどカットできる。

【閉じる】



 ヒビが入ったけど取り戻す事に成功した判定がされたようで良かった。

 《衝撃耐性(しょうげきたいせい)》はかなり有効なスキルだし嬉しい。


「そうだテルト。これからは宿泊代をタダにしてやるよ」

「やった!」


 帰り道にふとゴルトンが良い事を思い付いたって顔で提案してきた。


 これでもう1つのミッションもコンプリートだ!

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