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三十三話 03 白王タイティノス

「うっ、浮いてる⁉ ありゃ魚か?」

「空飛ぶお魚さんですか」


【ミッション「《白王(はくおう)タイティノス》を倒せ」を開始しますか?】

条件、《陽炎の迷宮(ダンジョン)》第10階層のボス《白王(はくおう)タイティノス》を倒す。制限時間2ヶ月。

報酬スキル、《剛風の壁翼(ウィンド・プテラ)

【はい/いいえ/詳細】



 おっ?

 《陽炎の迷宮(ダンジョン)》攻略中のミッションは珍しいな。



【《剛風の壁渦(ウィンド・プテラ)》】

タイプ移動、消費SP3

空中に小さいが強力な動かない空気の渦を数秒間作る事ができる。

殺傷能力は低いが、足場にしたり移動に使える。

【閉じる】



 《剛風の壁渦(ウィンド・プテラ)》はエナの《氷霧の階梯(グラチェス・ティエロ)》の風属性バージョンかな?


 空中で方向転換とかに使えるかもしれない。


「《白王(はくおう)タイティノス》か……」

「テルト知ってるんですか?」

「いや名前だけね。さあ行こう!」


 どこで知ったかって言うとミッション表示でだけど、それは言えない。

 あまり不用意にミッション表示の呼称を呼ぶのは良くないか。


 《白王(はくおう)タイティノス》はその名の通り全体的に白く細長い竜に似た魚だ。

 頭には3本の角に真紅の瞳。

 背中の部分がやや銀色掛かっていて結構カッコいい。


タンッ!


「なっ! なんだ⁉」


 俺は取り敢えず様子見で先制攻撃しようと《白王(はくおう)タイティノス》に飛びかかると奇妙な違和感が襲った。


 体が急にフワッと浮いた様な…………。


カキィーーーーンッ!


 バランスを崩した俺の剣は《白王(はくおう)タイティノス》の硬い鱗に弾かれた。


「シャギャアアアアァァァァーーーーッ!」

「《頑粘の薄衣ロバスト・ウェスティス》!」


ズガッン‼


「テルト!」


 《白王(はくおう)タイティノス》が素早く体を捻ってその大きな口の牙で俺に噛み付こうとしてきた。


 これだけ大型な魔物の噛む力はカバの何百倍あるかわからない。

 噛まれたら終わりだ。


 俺は《白王(はくおう)タイティノス》の長い胴体を蹴ってギリギリでかわした。


ドンッ!


「くっ……! 来るな! ここは重力が薄い!」


 壁に叩きつけられてやっと分かった。


 どういう訳かこのフロアの空間だけ重力がかなり薄い。

 巨大な魚みたいな《白王(はくおう)タイティノス》が浮いていられる理由だろう。


「何? ……うぉっ! なんだ! ……《奇術師の風(フール・ウィンド)》!」


ビユューン!


 俺の『重力』ってワードの警告の意味が伝わらず突っ込んできたクーベルだったけど、フロアの違和感に気付いて直ぐにスキルで撤退した。


「《跳鼬の飛脚(ストラート・サリア)》!」


タンッ! タンッ! タンッ!


 《白王(はくおう)タイティノス》が怖いくらいの速度で向かってくるので、俺も大急ぎでフロア外に一旦逃げる。


「はぁ……はぁ……」

「どうなってんだ? あのラインを超えると体が急に軽くなりやがった!」


 思った通りだ《白王(はくおう)タイティノス》は俺達を追って来ない。

 フロアの中心付近で俺達を警戒しながらうねうねと泳いでいた。


 重力が重いこちら側には来れないようだ。

 なら手の打ち様は色々とありそうだな。


「無重力とまでは行かないけど重力が軽いんだ」

「重力……?」


 やっぱり重力って言葉の意味が分かってないか。


 この世界ではニュートンさんの様な天才がまだ居なかったらしい。

 クーベルが知らないだけかも知れないけど。


コンッ!


「こんな風に全ての物は地面に向かって落ちる」


 俺は近くの小石を少し放り投げて地面に転がした。


「そんなん当たり前じゃねぇか?」

「その落ちる力を重力って言って。あっちの向こう側はそれが半分くらいに落ちてる」


 俺の説明の仕方が悪いのかクーベルはよく分かってない顔だ。

 まあ小難しい話は止めよう。

 向こうのエリアは何かが変だって認識で十分だ。


「どうするんですか?」

「アイツこっちには来れないみたいだな」

「相当硬かった。《ガードブレイク》しないと無理だな。プリシナ」


 当たり前といえば当たり前だけどボスだけあって硬かった。

 一応雷撃による《ガードブレイク》はしていたけど、直接手で触れる《ガードブレイク》と比べると全然削れない。


 かといって俺が直接手で触れて《ガードブレイク》しても、あの素早い動きだと再び同じ場所に攻撃を当てるのは至難の技だ。

 さてどうしたものか……。


「ふふふっ……任せて下さい」

「《聖光の浄槌アイギオス・スピューラ》!」


カッ! オォオオオオオオオォォォォォォーーーー!


ギュルルン!


「かわされた!」

「素早いぞコイツ!」


 プリシナの《聖光の浄槌アイギオス・スピューラ》は3メートルくらいの広範囲だけど、それでも《白王(はくおう)タイティノス》には当たらなかった。


「まだまだ! 《聖光の浄槌アイギオス・スピューラ》! 《聖光の浄槌アイギオス・スピューラ》!」


ギュルン! ギュルルルン!


「駄目だ! 早すぎる!」

「弱ったな……どうしようか」


 意地になったプリシナがその後も何発か《聖光の浄槌アイギオス・スピューラ》を放ったけど、少しかすった事があったかも知れないくらいだ。

 プリシナの魔力も無尽蔵じゃないだろうし、これは厳しいな。


「ミュニャ」

「……ダーク? そっちに何かあるのか?」


 どうしようか考えていると左からダークの鳴き声が聞こえた。


「ここは横穴か」

「俺は通れそうもねぇな」

「ちょっと俺が入ってみる」


 近寄ってみると人が1人通れそうな穴が上に向かって続いていた。

 クーベルでもギリギリ通れそうだけど武器の大剣が通らない。


「なるほど、ここに繋がっているのか」


 《砂塵の掴手(アンモス・ケイル)》を使って上り切ると途中から重力が軽くなり、ボスフロアの上部の横穴に出た。


「こっちに気付いてないし、今なら虚を付けるな」


 上から見下ろすと《白王(はくおう)タイティノス》はエナとプリシナを警戒していて、こっちを見る様子は無い。


(《跳鼬の飛脚(ストラート・サリア)》)


タンッ! タンッ!


「《砂塵の掴手(アンモス・ケイル)》!」


ピトッ!


 できる限り気付かれないように後ろ上の後方の天井から飛び降りて《白王(はくおう)タイティノス》の背中を掴んだ。


「シャギャアアアアァァァァーーーーッ!」

「今更逃げようとしてももう遅い! 《雷震の把手(トルエノ・アステール)》!」


バチンッ!


 触れられた瞬間《白王(はくおう)タイティノス》は激しく暴れた。

 俺は絶対に離さ無い様掴みながら全力で《ガードブレイク》する。


「《振裂刃シュヴィング・クリンゲ》!」


パリンッ ズシャ!


 そして右手の剣で思いっきり背中に突き刺した。

 少し重いけど鱗も問題なく貫通する。


「シャギャアアアアァァァァーーーーッ!」

「うわっ‼」


ドカッ! ドカッ‼


「くそっ、俺の剣だと致命傷にならない!」


 確かに深く刺したけど《白王(はくおう)タイティノス》は体がでかすぎる。

 致命傷には程遠い。


 大暴れされて俺はそこら中に体を打ち付けられた。

 《衝撃耐性(しょうげきたいせい)》が限界に近い。


「《聖光の浄槌アイギオス・スピューラ》!」


カッ! オォオオオオオオオォォォォォォーーーー!


「シャギャアアアアァァァァーーーーッ!」

「ぐわぁああああぁぁぁぁーーーーーッ‼」


 俺に構って動きが止まった《白王(はくおう)タイティノス》にプリシナが《聖光の浄槌アイギオス・スピューラ》を放った、俺ごと巻き添えにして!


「しゃぁこらぁ! 《風翼刃(フィーグ・クリンゲ)》!」


ズバアアアアァァァァーーーーッ‼


 クーベルが《白王(はくおう)タイティノス》の右横を大きく切り裂く。


「《空絶の氷槍スティーリア・ランケア》!」

「ちょっ! 今俺も《ガードブレイク》ちゅ……!」


ボオシュ‼ ズシャーン‼


 トドメにエナの巨大な氷の槍が俺ごと襲い掛かる。

 あの、今の俺は《レベル補正(ほせい)》が消えて一般人レベルの防御力しか無いんですけど!


「ギャアアアアァァァァーーーーッ!」

「ドッスゥウウウウウゥゥゥゥーーーーン!」


 間一髪俺を避けて《白王(はくおう)タイティノス》の喉元を氷の巨槍が貫いた。

 いやコントロールに自信があるんだろうけど危ないってエナ!


「やったー!」

「やりました!」

「見事な連携でしたね」

「チームワークの勝利だぜ!」

「ミュニャ!」


 いやいやいやいや。


「何がチームワークだ…………思いっきり俺巻き込んだだろ」


 俺は倒れた《白王(はくおう)タイティノス》の下から這い上がった。


 普段味方だから気付かなかったけど、プリシナが敵に回ったら相当ヤバいな。

 俺は無意識に自分の《レベル補正(ほせい)》の力に頼り切ってしまっていた。


「ごっ誤解です、私達はテルトを信頼してたんです」

「ものは言いようだな」

「さっ、先に行きましょう!」

「やれやれ……」


 プリシナは誤魔化すように巨大な胸を振り回して逃げて行く。


 いやまあ連携は確かに良かったけどさ。

 今後はもうちょい俺の安全にも気を使ってくれ。

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