↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
102/158

三十四話 01 王の指し手

 王城の謁見の間にクレイセン国王と数人の側近達が集まっていた。


「クレイセン国王。例の《極昂の虹(きょっこうのにじ)》の物達が《陽炎の迷宮(ダンジョン)》の第10層を通過したとの事です」


 報告をしたのは名も無き冒険者。

 国王が冒険者組合を監視する為に送り込んだスパイだ。


「あのテルト・リバースと言う少年か」

「たかが子供、捨て置けばよいのではありまんか?」


 右側に居る側近には取るに足らない存在に思えていた。

 確かに勲章授与の際に数々の無礼な態度を取りはしたが、他にやるべき事は山積している小物に構ってる暇は無い。


「いや腐っても《S級(エスランク)》冒険者の実力を持つ者達だ。何れは国王に逆らう巨大な勢力になるやもしれん」

「厄介の芽は早いうちに摘み取ってしまうのが良いでしょう」

「うむ」


 しかし左側に居る2人の側近は真逆の考えだった。

 権威の失墜は王権の喪失に繋がる、早めに手を打たなければならない。


 そしてそれはクレイセン国王も同じ考えだ。


「だがしかし誰が? それなりの猛者ですぞ? 生半可な者では務まるまい」


 《S級(エスランク)》は1人当千とも言われる。

 言わば一軍に匹敵する戦力でありそう簡単には対処出来ない。


「ベルゼルムよ」

「お呼びでしょうか我らが王よ」

「お前は! 《サンザーラ》の《魔人》!」


 クレイセン国王の呼びかけに何もない無い空間に突如として1人の男が現れた。


 《魔人ベルゼルム》……人の姿をしているが強大な力を持った《魔人》である。


「テルト・リバースとその一味《極昂の虹(きょっこうのにじ)》を消すのだ」

「もちろんですテルト・リバースは我ら《サンザーラ》にとっても厄介な敵。ただその為に《サンザーラ》から《魔人》をいくらかお借りしたいと存じます」

「ふむ1人では不安か。何人必要だ?」


 《サンザーラ》でもテルト・リバースの名は知れ渡っていた。

 いまやプリシナにに次ぐ抹殺対象にまでなっている。


「私を含め8人ほど」

「何? 全ての魔人は《SS級(ダブルエスランク)》だぞ? 《SS級(ダブルエスランク)》が1人居れば《S級(エスランク)》のパーティに匹敵する! 2人も居れば十分であろう!」

「しかも《サンザーラ》の《魔人》は全部で17人だぞ! たかが一冒険者にその半数を割くと言うのか!」


 《魔人ベルゼルム》の要求に左側の側近達は非難の声を上げた。


 国王とその派閥の側近に敵意を持つ政敵や外敵は大勢いる。

 王城を守る《魔人》が半分になれば側近達の守りが真っ先に手薄になる。

 うろたえるのも当然だ。


「……いいえ、そのテルト・リバースは我が弟ネグザレムを倒しています。ただの冒険者ではありません」

「何だと!」


 《魔人ベルゼルム》は人の姿から《魔人》の姿に戻った。

 その姿は《魔人ネグザレム》と瓜2つ。

 2人は双子の魔人だ。


「なるほど、もしやワシらと《サンザーラ》の関係も勘付いているやもしれんな」

「まさか!」

「例えば……互角の力の者同士が1対1で戦えば勝率は5割でしょう。しかし2対1であれば2人の方が7割5分ではなく8、9割に迫り勝つようになるのです」

「ふむ」


 これは地球ではランチェスターの法則と呼ばれる。


 この世界には勿論この理論は存在しない。

 だが数が多い方が相乗効果で高い戦果を上げられる事は、この世界でも戦いに聡い者なら知っている事だ。


「中途半端な戦力を送り下手に損害を出すよりは、最初から圧倒的な戦力差で最小の被害で圧殺する。それが我々《サンザーラ》です」


 各個撃破されるような愚は《サンザーラ》は犯さない。

 そんな愚かな組織はどんなに力が強くてもいずれ敗北が重なり衰退する。

 圧倒的力で圧殺するそれが《サンザーラ》が数百年の長きに渡り裏社会を支配してきた強さの秘訣だ。


「分かった《サンザーラ》の中から残り7人を貸し出そう」

「賢明なる王よ提案を受け入れて下さり感謝します。必ずやテルト・リバースの首をお持ちしましょう」

「征くのだ」

「御意」


 クレイセン国王の言葉に《魔人ベルゼルム》は影になって消えて行った────




◇◇◇




 俺達が白壁の第10階層を抜け第11階層に来るとそこは黒色の岩に変わっていた。

 もちろん魔石の光はあるので真っ暗ではないけど。


「なんか……変だな」

「どうかしたんですか?」

「いや……気のせいかな」


 第11層に入って俺は何か違和感を感じた。

 でもそれが何なのか分からない。


「来ましたね」

「早かったね」

「ロイナード、アグニスも」

「なんだ? もう今日は終わりか?」


 第11階層の奥から《蒼炎の大掟(そうえんのたいてい)》が戻ってきた。

 みんな疲れた表情をしている。


「いやなかなか苦戦しててね」

「《蒼炎の大掟(そうえんのたいてい)》でも苦戦するなんて、この第11層の魔物はそんなに強いんですか?」


 近寄ってみると顔だけじゃなく鎧なんかにも激しい戦闘の跡も見える。

 珍しくアグニスも疲労を隠さない。


「《ギガントクラス》を超える、《神獣クラス》が出るんだ」

「《神獣クラス》?」

「ええっ、つい先程命名しました。まあ名前はどうでも良いのですが」


 《神獣クラス》かこれまた大仰な名前を付けたな。


「大きさこそ《ギガントクラス》より小さくなっているけど、強さはその比じゃねぇ」

「まあ戦ってみれば分かるじゃろ」


 《ギガントクラス》もそうだけど結構な種類がいる。

 ここで《神獣クラス》がどんな魔獣か聞いてもあまり役には立たないだろう。

 実際に戦うしか経験は得られない。


「……それだけでは無く途方もなく深いのです。そこでこの第11層を《奈落》と名付けました」

「むしろそっちがきつい」

「そんなにかよ」


 第9階層と10階層も相当長かったけど第11階層は更に長くなってるらしい。

 ビグザールは重い甲冑と武器を持ってる。

 一番疲れた顔をしてるのはそのためか。


 それにしても《奈落》ねぇロイナードは名前を付けるのが好きなのかな。


「ええ。ここから先は《奈落》の深さと《神獣クラス》との戦いになります」

「大変そうですね」


 これは俺達もあまり奥に行かない方がいいな。

 今回は近場の偵察に留めよう。


「おや? 新しいお仲間さんですか?」

「ええダークって言ってさっき《陽炎の迷宮(ダンジョン)》の中で見付けたんです」


 ロイナードがシャロンの抱えるダークの姿に気付いて近寄って顔を覗き込む。


「それは珍しい………………」

「どうかしましたか?」

「いえ。可愛らしいですね。シャロンも仲間ができて嬉しいでしょう」

「うん!」


 ロイナードが珍しく興味ありげにダークを見つめていた。


 いや確かに可愛いけどそれはシャロンも同じだろ。

 というかシャロンの方が可愛いだろ!

 プリシナといいロイナードといいなんて失礼な。


「では私達はキャンプに戻って休息します。頑張って下さい」

「もうクタクタじゃ」

「分かりました」


 ビグザールの言葉を最後に俺達は別れた。


「さあ行こうか。シャロン、また敵を出来るだけ避けて進んでもらえる?」

「うん! まかせて!」


 《神獣クラス》と戦ってみたい気もするけどまずは軽く広さを見て回ろう。

 壁の形のパターンが第10階層と変わっている。

 それに最初に感じた違和感が妙に引っかかる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。