第16章 ①
第16章① 道
冬到来。
寒かった。
当たり前に寒かった。
私は火を見る。
兄を見る。
妹を見る。
犬を見る。
皆いた。
良かった。
妹の熱は下がっていた。
兄も元気だった。
本当に良かった。
私は朝食を食べる。
片付ける。
そして外を見る。
雪だ。
少し積もっている。
私は少し考える。
先日の事だ。
妹が熱を出した。
兄も熱を出した。
大変だった。
もしもっと酷くなっていたら。
町へ連れて行ったかもしれない。
でも。
この道だ。
私は洞窟の外を見る。
木の根。
石。
坂道。
歩くだけでも大変だ。
まして。
子供を運ぶとなると。
もっと大変だ。
私は少し考える。
そして洞窟の奥を見る。
そこにはカートがある。
転移した時に使っていた物だ。
今は放置されている。
兄も見る。
「それ使うの?」
私は頷く。
「使いたいな」
兄は道を見る。
そして頷いた。
「無理だと思う」
私も頷く。
「無理だよね」
木の根。
石。
雪。
今のままでは通れない。
私は少し考える。
どうしよう。
お金を払って人を雇う。
却下!
冬支度のお金だった。
減らしたくない。
絶対に。
私は洞窟へ戻る。
何か無いだろうか。
現物。
何か。
味噌。
駄目。
塩。
駄目。
干し肉。
駄目。
その時だった。
私は棚を見る。
茶色い箱だった。
主人公は思った。
カレー。
兄が聞く。
「どうしたの?」
私は答える。
「カレー」
兄が止まった。
「また?」
「作ったことないよ?」
兄は少しだけ嫌な顔をした。
何故だろう。
私は箱を見る。
まだ使ってない。
私は少し考える。
まず味見。
反応が良ければ使う。
駄目なら別の物を探す。
良い考えだ。
翌日。
私は鍋を持った。
ギルドへ向かう。
雪は少しだけ積もっていた。
寒かった。
私は歩く。
そして到着した。
受付嬢が手を振る。
「おはようございます」
私は頷く。
「味見」
受付嬢が止まった。
「味見?」
私は頷く。
「うん」
そのまま厨房へ向かう。
受付嬢も付いてきた。
何故だろう。
私は箱を取り出す。
茶色かった。
受付嬢が見る。
「それは?」
私は答える。
「カレー」
受付嬢は首を傾げた。
「カレー?」
私は頷く。
「カレー」
説明は終わりだった。
1キロの固形を削る。
少しだけ。
本当に少しだけだった。
再現不可。
高級品。
いや、いつか誰かが作るかも。
鍋へ入れる。
肉も入れる。
野菜も入れる。
煮る。
混ぜる。
しばらく待つ。
やがて良い匂いが広がった。
受付嬢が鼻を動かす。
「何か良い匂いですね」
私は頷く。
「カレー」
受付嬢は少し笑った。
何故だろう。
その時だった。
ギルマスが来た。
匂いにつられたらしい。
「何してる」
私は答える。
「味見」
ギルマスが止まった。
「嫌な予感しかしねぇ」
その後。
常連の冒険者も来た。
三人だった。
丁度良かった。
私は器を並べる。
少しだけ入れる。
本当に少しだけだった。
一口分くらいだった。
冒険者が止まる。
「少なくないか?」
私は頷く。
「味見だから」
当然だった。
受付嬢が器を見る。
「これだけですか?」
私は頷く。
「味見だから」
ギルマスが天井を見た。
「ケチ臭ぇな」
私は答える。
「高級品」
ギルマスが黙った。
その後。
三人は食べた。
ぱく。
止まる。
受付嬢も止まる。
冒険者も止まる。
私は少し不安になる。
失敗だろうか。
その時だった。
冒険者が言った。
「美味い」
受付嬢も頷く。
「美味しいです」
ギルマスは黙っていた。
私は少し安心する。
良かった。
その時だった。
ギルマスが器を見る。
そして聞いた。
「続きは?」
私は答える。
「無い」
ギルマスが止まった。
受付嬢も止まった。
冒険者も止まった。
「何でだ」
私は答える。
「味見だから」
三人が同時に黙った。
何故だろう。
私は続ける。
「美味しい?」
ギルマスは頷く。
「美味い」
受付嬢も頷く。
「美味しいです」
冒険者も頷く。
「売れるぞこれ」
私は少し考える。
そして聞いた。
「道」
ギルマスが嫌な顔をした。
「何だ」
私は答える。
「作りたい」
ギルマスは頭を押さえた。
「その顔やめろ」
私は首を傾げた。
何故だろう。
私はまだ何も言っていない。




