表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/85

第14章 ④

第14章④ 文字


翌日。


私は洞窟の入口へ座っていた。


手には紙がある。


昨日の契約書だ。


私は紙を見る。


文字を見る。


もう1度見る。


読めない。


困ったな。


昨日は何とかなった。


でも。


何とかなっただけ。


私は契約書を見る。


表を見る。


裏も見る。


横からも見る。


やっぱり読めない。


文字を読めないのは致命的だ。


契約書。


値札。


看板。


依頼書。


異世界は思ったより文字だらけ。


私は少し考える。


昨日の事を思い出す。


「これヤダ」


3回言った。


本当に嫌だった。


結果的に正解だった。


多分。


でも。


毎回これでは困る。


私は契約書を見る。


読めない。


やっぱり困る。


文字を覚えよう。


私は立ち上がる。


町へ向かう。


今日は薬草ではない。


キノコでもない。


魚でもない。


勉強だ。


まさかこの歳で文字の勉強をするとは思わなかった。


私は空を見る。


そして歩く。


目的地は決まっていた。


冒険者ギルドだった。


受付嬢は私を見る。


そして首を傾げた。


「今日は販売ですか?」


私は首を振る。


「文字」


受付嬢も首を傾げる。


「文字?」


私は頷く。


「教えて欲しい」


受付嬢が固まった。


しばらく固まった。


「私がですか?」


私は頷く。


「契約書読みたい」


受付嬢は何か察した顔になった。


そして吹き出した。


その後。


勉強が始まった。


私は机へ座る。


紙が置かれる。


文字が書いてあった。


受付嬢が指差す。


日本語で言う50音だ。


私は見る。


受付嬢は1つ1つ指しながら教えてくれた。


思ったより楽しかった。


そして翌日。


受付嬢が聞いた。


「覚えてますか?」


私は紙を見る。


読む。


全部読めた。


受付嬢が固まった。


何故だろう。


私は町を歩いて看板を見る。


肉屋。


読めた。


パン屋。


読めた。


薬屋。


読めた。


主人公は思った。


便利だった。


夕方、ギルドに戻る。


受付嬢を見る。


「契約書」


受付嬢が笑う。


「やっぱり来ましたね」


どうやら予想されていたらしい。


少し悔しい。


かなり。


契約書を借りる。


私は読む。


ゆっくり。


少しずつ。


全部ではない。


でも前より読めた。


私は読む。


読む。


読む。


そして止まる。


「あ」


受付嬢が覗き込む。


「読めました?」


私は頷く。


「3ヶ月」


契約期間だった。


長いな……。


そのまま読む。


そして。


別の紙を見る。


1枚目。


専属。


私は止まる。


2枚目。


優先。


私は止まる。


3枚目。


独占。


…………。


やっぱり嫌だった。


私は立ち上がる。


受付嬢が聞いた。


「どちらへ?」


私は答えた。


「ギルマス」


受付嬢が笑い始めた。


何故だろう。


奥の部屋だった。


ギルマスは書類を見ている。


私を見る。


嫌そうだった。


少し。


「何だ」


私は契約書を置く。


「話がある」


ギルマスが頭を押さえた。


何故だろう。


私は紙を指差す。


「ここ」


ギルマスが見る。


「ここも」


また見る。


「あとここ」


ギルマスが天井を見る。


私は待つ。


「何でだ」


そして答えた。


「嫌」


ギルマスが頭を抱えた。


受付嬢が笑っていた。


私は続ける。


「あと、契約内容変更」


「何を」


「値段」


「書いてある」


「これじゃダメ」


ギルマスが止まる。


私は続ける。


「売れ残りがある時、それもきちんと決まってない」


「期間」


「書いてある」


「変更」


ギルマスは深く息を吐いた。


私は紙を見る。


契約は大事だった。


冬が来る。


兄がいる。


妹がいる。


犬もいる。


失敗出来なかった。


しばらくして。


新しい契約書が出来た。


私は読む。


ゆっくり。


読む。


読む。


裏も見た。


大丈夫だった。


私は頷く。


「これならいい」


「そこまでみるのか...」


ギルマスが椅子へ沈んだ。


かなり疲れていた。


「当たり前。信用してない」


………………。


「そう言えば」


ギルマスが顔を上げる。


少し警戒していた。


「まだあるのか」


私は頷く。


「登録」


部屋が静かになった。


受付嬢が吹き出した。


ギルマスは顔を覆った。


「お前」


私は待つ。


かなり。


「最初それだろうが!」


そうだった。


少し忘れていた。


こうして私は。


冒険者ギルドへ登録した。


名前を書く。


この世界の文字でフルネームは書けない。


(みー)でいいか……


少し悔しい。


年齢を書く。


受付嬢が止まる。


「四十代後半?」


私は頷く。


本当だった。


受付嬢が私を見る。


もう一度見る。


何故だろう。


冒険者証を受け取る。


私はそれを見る。


身分証明だった。


異世界で初めてだった。


少し嬉しい。


主人公は思った。


次は稼ぐ。


冬までに金貨十枚。


頑張ろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ