第14章 ➂
第14章③ 冒険者ギルド
おばちゃんも頷いた。
私は少し考える。
冒険者ギルド。
身分証明になる。
薬草採りもいる。
荷運びもいる。
思っていたより普通だ。
もっとこう。
魔物。
討伐。
ドラゴン。
みたいな感じかと思っていた。
ラノベだった。
でも現実は薬草だ。
少し親近感が湧く。
私は頷く。
「登録してみようかな」
おばちゃんがこちらを見る。
「止めはしないよ」
少し気になる言い方だった。
「何かあるの?」
おばちゃんは笑う。
「ギルドなんて人が集まる場所だ」
私は頷く。
確かに。
「良い人もいるし、面倒なのもいる」
やっぱり。
私は頷く。
おばちゃんも頷いた。
私はギルドの建物を見る。
思ったより大きい。
出入りする人も多い。
剣を持っている人。
弓を背負っている人。
荷車を押している人。
色々いた。
私は少し考える。
エコバッグを見る。
買い物帰りだった。
どう見ても買い物帰りだ。
私は少し悩む。
帰ろうかな。
その時だ。
ギルドから男が出てきた。
見覚えがある。
屋台で汁を買った冒険者だ。
男も気付いたらしい。
こちらを見た。
そして笑った。
「魚汁の人」
魚汁の人だったらしい。
男は近付いてくる。
「今日は売ってないのか?」
私は首を振る。
「市場調査」
男は頷く。
「なるほど」
何がなるほどなのだろう。
男はギルドを指差す。
「登録か?」
私は頷く。
男は少し笑う。
私は建物を見る。
少しだけ緊張した。
異世界だ。
初ギルドだ。
ラノベっぽい。
男は頷いた。
「魚汁の人なら歓迎されるぞ」
魚汁の人だったらしい。
そのままギルドへ入る。
中は思ったより広い。
受付。
掲示板。
食堂。
人も多い。
私は少しだけ圧倒される。
その時だった。
「お前か」
奥から大きな男が出てきた。
周囲が少し道を空ける。
「魚汁の人」
私は頷く。
男も頷いた。
話が早かった。
「食堂で売らないか?」
私は食堂を見る。
椅子がある。
机もある。
鍋も見える。
食器もある。
私は少し考える。
かなり魅力的だ。
「売れる?」
男は笑った。
「売れる」
やっぱり。
私は頷く。
男は紙を出した。
契約書。
私は紙を見る。
文字は読めない。
困った。
でも。
うん?
紙を見る。
上を見る。
真ん中を見る。
下を見る。
1番下を見る。
うーん…なんだ?
嫌だった。
何となく。
私は紙を指差した。
「これヤダ」
男が止まる。
「どれだ」
私は1番下を指差した。
小さかった。
とても。
男は紙を見る。
少し黙る。
周囲も黙る。
受付嬢が目を逸らした。
私は少し嫌な予感がした。
男は咳払いする。
「……書き直すか」
数分後。
新しい紙だった。
私は見る。
上を見る。
真ん中を見る。
下を見る。
1番下を見る。
「これヤダ」
また止まる。
男が固まる。
私は固まらない。
嫌だった。
何となく。
とても。
男は天井を見る。
受付嬢は笑いを堪えていた。
3枚目だった。
私は見る。
「これもヤダ」
男が叫んだ。
「何で分かるんだ!!」
「…………」
分からない。
でも嫌だった。
受付嬢が吹き出した。
周囲の冒険者も笑い始める。
何故だろう。
その時だった。
私は思い出した。
「そう言えば」
男が固まる。
私は気付かない。
近くの冒険者を見る。
「魔法使えるの?」
周囲が静かになった。
男が頭を抱えた。
冒険者は少し笑う。
「使えるぞ」
「何魔法?」
「火だ」
火だった。
私は少し嬉しくなる。
「どれくらい燃えるの?」
「どれくらい?」
「薪いらない?」
周囲が笑い始めた。
冒険者は少し考える。
「料理くらいなら出来るな」
便利だった。
かなり。
次は別の男だった。
「俺は水だ」
「飲める?」
「飲める」
「お湯になる?」
「ならない」
残念だった。
次は身体強化だった。
「身体強化ってどれくらい飛べるの?」
男が首を傾げる。
「どれくらい?」
「2階?」
男は少し考える。
「そのくらいなら」
私は頷く。
なるほど。
「走るのも速い?」
「速い」
便利だった。
「重い物も持てる?」
男は胸を張る。
「持てるぞ」
「どれくらい?」
男は近くの樽を指差した。
「あれくらいだ」
私は樽を見る。
少し考える。
「切り株だと?」
男が止まる。
「切り株?」
私は頷く。
「持った」
周囲が静かになった。
私は樽を見る。
まな板にした切り株を思い出す。
頭の中で比べる。
多分切り株の方が重い。
男達が顔を見合わせる。
何故だろう。
私は少し不思議だった。
その時だった。
「おい」
大きな男が戻ってきた。
紙を持っていた。
4枚目。
私は見る。
上を見る。
真ん中を見る。
下を見る。
1番下を見る。
少し待つ。
大丈夫。
私は頷く。
「これならいいけど……」
男が深く息を吐いた。
「やっとか」
私は紙を見る。
読めない。
裏も見た。
でも大丈夫だった。
多分。
こうして私は。
冒険者ギルドの食堂で。
汁物を売る事になった。
男が聞いた。
「なあ」
私は顔を上げる。
「何?」
男は少し考えた。
そして聞いた。
「何で最初の3枚はダメだった?」
私は少し考える。
契約書を見る。
男を見る。
また考える。
よく分からなかった。
でも。
1つだけ分かった。
私は1番下を指差した。
「そこ」
男が見る。
「そこ見ると」
私は少し考える。
上手く言えなかった。
だからそのまま言った。
「顔が嫌だった」
ギルドが静かになった。
数秒後。
受付嬢が吹き出した。
冒険者達も笑い始める。
「顔だってよ!」
「ギルマス顔で断られたぞ!」
男は頭を抱えた。
私は少し首を傾げる。
何故だろう。
本当の事だった。
主人公は思った。
冬までに金貨十枚。
頑張ろう。
あ、ギルドの登録忘れてた。




