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第11章 ⑫
第11章⑫ 油
私は少し考える。
もしかしたら、獣脂以外無いのだろうか。
分からなかった。
商人はもう一度聞く。
「何の油だ?」
私は答える。
「キャノーラ油」
商人は黙った。
おばちゃんも黙った。
やがて商人が言う。
「だから何だそれは」
私は答える。
「植物油」
商人は頭を抱えた。
何故だろう。
やはりこの世界には無いのだろうか。
商人は深呼吸する。
落ち着くらしい。
そして聞いた。
「何から作る」
私は少し考える。
そして答えた。
「菜の花」
商人は止まる。
「菜の花?」
私は頷く。
「種」
商人はさらに止まる。
「菜の花の種…?」
私はもう一度頷く。
「搾る」
「…搾…る…」
「うんうん」
商人は黙った。
主人公は知っていた。
菜の花の種から油が取れる事を。
もっとも。
どのように取るのかは知らない。
菜種油には複数の製法が存在する。焙煎してから搾る方法。焙煎せず搾る方法。
それぞれ風味も異なる。
また。油を搾るには圧搾が必要となる。
言葉にすれば簡単だが。
種から十分な量の油を取り出すのは容易ではない。
人の手だけでは特に難しい。
もちろん。
主人公は知らない。
知っているのは。
スーパーで売っていた事だけである。
商人はしばらく黙っていた。
やがて。
ゆっくり口を開く。
「本当か?」
私は頷く。
「勿論!」
商人は天を仰いだ。




