第9章 ④
第9章 職人
木工職人は天を仰いだ。
私は少し待つ。
やがて職人は戻ってきた。
「何で切り株持てる?」
「まな板」
「切り株だ」
私は頷く。
まだ切り株だ。
未来のまな板だ。
職人は腕を組む。
切り株を見る。
私を見る。
もう一度切り株を見る。
「削るのか」
「うん」
「乾燥は」
「してる」
職人は黙った。
私は切り株を叩く。
軽い。
乾燥している。
多分。
「してない」
「軽い」
「してない」
「軽い」
職人は額を押さえた。
少し疲れているようだった。
私は切り株を見る。
やはり良い切り株だ。
「根っこ切れば使える」
職人は固まった。
「何でだ」
「平ら」
私は切り株の上を叩く。
良い感じだった。
職人はしばらく黙る。
そして言った。
「今何使ってる」
「鍋蓋」
職人は固まった。
今度は長かった。
かなり長かった。
主人公は理由が分からないようだ。
「鍋蓋」
「うん」
「魚を切るのか」
「うん」
職人は天を仰いだ。
私は切り株を見る。
やはり鍋蓋より良い。
未来のまな板だった。
「工房に持って行く」
「待て」
職人が慌てて言った。
私は首を傾げる。
「重いぞ」
少し考える。
切り株を見る。
持つ。
やはり持てる。
「うん、重い」
職人は切り株を見る。
私を見る。
そして切り株へ手を掛けた。
持ち上げる。
少し浮く。
止まる。
もう一度持ち上げる。
今度は持ち上がった。
職人は切り株を見る。
私を見る。
もう一度切り株を見る。
私は首を傾げる。
「?」
職人は何か言いたそうだった。
だが。
最後まで言わなかった。
「……気を付けて」
「うん」
私は頷く。
そして切り株を抱える。
良い切り株だ。
未来のまな板だ。
私は満足して帰る。
主人公は満足しているようだ。
なお。
木工職人は少し納得していなかった。




